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転生した王女はとんでもなかった(天使の過ちは丸投げです)  作者: 夢未太士
第1章 王立アカデミー編
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兎人族の村

兎人族の村


前には魔熊まゆう、後ろからは魔狼。

その言葉に従うしか道はなかった。

しばらくついて行くと崖がありそこからはツタや木の根を足掛かりに崖を登っていく。

かなりの高低差があったがさらに上へと昇ると、そこは周りを崖に囲まれた高台のような場所。


「ここまでくれば安全だ、俺はジョズ・グラビーよろしくな」

「助けてくれたのはありがたいが、俺は追われている」

「みたいだな」

「みたいだなって…」

「俺はサクロ村の猟師だ、俺の村では困っているものがいれば人種に関係なく助ける」

「攻撃してくれば別だがな」

(グオ~~)

「下で魔熊と魔狼がかち合ったみたいだぜ」


魔熊の親子は餌を得るだけでなく親熊は小熊を守るために戦うだろう、1頭だけならたやすいが子を守る母熊は厄介だ。

魔熊は普通の熊の倍以上の大きさがある子熊でさえ通常の熊と同じくらいの大きさがあり。

いくら魔狼といえども狩るには相当面倒な相手といいえる。

ハンター(狩人)ならば毒矢や仕掛けを使いしとめるが、魔狼の捜索隊はそんな装備は用意していないだろう。


(ひけーー)


少しすると魔熊の攻撃を受け魔狼が何頭も傷ついていく。

どうやら魔熊に軍配が上がったようだ。


「運がいいなあんた」

「だといいがな」

「とりあえずここにいてもしょうがない、俺の村にくるか?」

「安全は保障してくれるのだろうな?」

「あんたを食えるなら別だが、俺は魔族を食う趣味はねえよ」

「笑えない冗談だ」

「うちの村というか、俺の種族はベジタリアンだ」


よく見ると帽子から出ている長い皮のようなものは耳だった、兎人族の猟師。

彼は猟師、兎人族はベジタリアンなため動物を捕食してもほぼお金に換えるか道具として加工する。

彼らの場合猟師は害獣駆除が専門、では彼が何のために森に入っていたのか?

害獣駆除とその生態の確認、さらにこの季節にしか取れない薬草類の採取。


「よしこっちだ」


高台になっている場所は思ったより複雑でしかも階段状になっており、奥の方は地形もはっきりとはわからなかった。

そこからは崖を登ったり下りたりを繰り返しながら、彼の後をついて行く。


「飲むか?」


革袋を渡された、何かの動物の皮で作った水筒のようなもの。


「グビッグビッ…は~~」

「もう少しだがんばれ」

「まだ行くのか」

「当然だ」


ここまで来て帰るといっても自分一人では森をさまよい餓死するしかない。

さらにジョズの後を追い、時折休みながらも森を抜けることができた。


「どうだ?ついただろ」


そこには人の高さより高い植物が数キロにわたって生えていた、すべて彼らの食料だという。


「こいつはキビトーという植物だ、そのまま食べてもいいが加工すると甘味の材料にもなるし煮ても焼いても食える」


要するにそこは広いキビトー畑だった、約1k進むと家並みが見えてくる。


「とりあえず俺のうちによってけ」

「いやそうするとお前も捕まる可能性があるぞ、俺は追われている」

「ああそれは構わない」

「この村は魔王国タイロス公爵傘下だからな」


タイロス公爵、魔王家に近く何代も続く魔王家御用達の食料や武器弾薬はもとより兵士もこの地区から数多く拠出されている。

魔王家が戦いを起こす際は一番に旗を掲げ突撃していく一番槍の部隊もタイロス公爵家の部隊だ。


単純に前王妃の実家の畑といえば早いだろう、現王妃には政治的な敵対関係という図式がある。

促されるままにジョズの住む家に寄っていくことになった。


「ただいま~親父は?」

「ああ、お帰り、早いじゃないか?どうしたんだい?」

「森で人を拾ったから連れてきた」

「そうかい、まだダーリンは帰ってないよ」


家の奥の方から長い耳をゆらゆらとさせながら、きれいな女性が現れた。


「あら、いい男じゃないか」

「母ちゃんやめてくれよもういい歳なのに、父ちゃんが泣くぜ」

「別になんかしようってわけじゃないんだしいいじゃないか!」

「こう見えてもう50歳近いんだぜ」


獣人は外見の割に若く見える、目の前の女性はどう見ても30前後にしか見えずスタイルは抜群だったが。


「まあゆっくりしていきな」

「そこいらに座って待っててな」


そういうと2人共に奥の方へ行ってしまった。

家の中は質素ではあったが風通しもよく住みやすそうな家だった。


「どうぞ~食べな」


運ばれてきたのは御団子のような食べ物と飲み物。


「じゃ遠慮なく」


すでに日は暮れて風がひんやりとしてくる、母親といった兎人は魔法で部屋の壁に取り付けられた道具に明かりをともす。


「あんた飛竜使いだねもしかして伝令部隊かい?」

「どうしてそれを?」

「あたしの旦那は元軍人さ姫様付きのね」


姫様付き、魔王軍宮廷近衛隊に王子や王女の護衛専門の部隊がある。

魔族は何年もお家騒動が絶えず、今でも油断していればアッという間に王位継承権が変わってしまう、暗殺、謀略は日常茶飯事だったころ。

魔王はわが子の安全を考え子供たちに50人からなる直属近衛隊を設立した。

今の子は5人、それぞれに防御専門の部下10人ずつ、多いようだが少ないといつどこで狙われるかわからない。


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