海王ポセイダス
海王ポセイダス
海底を進むと言うのは中々面倒なものだ、マーシャの足には別にヒレが付いているわけでもスクリューが付いているわけでもない。
だが魔法を使えば水中の移動もさほど難しくは無いのだから不思議だ、水魔法と重力魔法を使えば足や手を使い泳ぐ必要もないのだから。
《よく来たな》
《おぬしが海王か?》
《その通りわが名はポセイダス、海洋都市アビスピアの王である》
《はじめてお目にかかる妾はアルフレア王国第三王女マーシャオースティンアルフレアじゃ》
《その方が噂の剣鬼姫か、なるほど人族にしては不思議なオーラをしておる》
《そうか、別に自分では分からぬがな》
《とりあえず客人、宴の前にその体を休まれよ、楽しい会話はその後でも良かろう》
《済まぬ、そうゆっくりとはできぬのじゃが》
《それは困ったな、おぬしには話さねばならぬことがあるのじゃがな…》
《何か問題があるのか?》
《なんだ、ダーラスから何も聞いておらぬのか?》
《聞いておらぬぞ》
《サザールダンジョンはこの都市の中にある、岬の祠はこの都市に来るまでの一つの通過点にすぎぬ》
《そういう事か、なるほど、ではダンジョンへ早速挑戦しないとならぬ》
《本当にセッカチじゃな》
《最低でも本日中に戻らねばならない理由があるのじゃ》
《そうか、ならば仕方がない、だがこのダンジョンを攻略すれば時戻りの真珠が手に入り時をさかのぼることが可能となるが、それでも急ぐか?》
《時戻りの真珠?》
《元々この世界(魔法で隔離した区域)は時間と言う観念を超越した区域じゃ、おぬしがこの区域に入った段階で外との時間の流れは止まる》
《それは本当か?》
《本当じゃ、じゃがな 元の時間に戻るにはダンジョンの攻略が必須になる、時戻しの真珠はおぬし達が元の世界に戻る時に使用するアイテムという分けじゃ》
《攻略できないとどうなる》
《失敗すれば記憶を失い現世へと戻る、その時は時間軸に捕らわれ最低でも数十年後の世界に戻ることになる》
《無事に戻ることが無かったと言うのはそういう事か》
《今までやって来た挑戦者は全員祠の洞窟で終わっておった様じゃ、ここまで来たのはおぬしが初めてじゃ》
《ふむ…》
《という分けじゃから急いでもゆっくりしても同じじゃ、まずは我らの用意した宴を楽しんでもらおう》
どうやらここでの時間は現世の数百分の1にも数百倍にもなるらしい、確かに魔王国でも海洋王国の話は聞いておらず王国の書物にもここの状況を記した書物などは無かった。
王国や魔王国から見ると未開の場所であり現世からも隔絶された場所ともいえる。
《それでは用意が出来るまで別室で休まれよ》
「ポンポン」
《ご案内いたします》
海王が手を叩くとマーメイドが2人近寄ってきて案内を始める、マーメイドに連れられ宮殿の奥へと踏み込んで行く。
「ゴボゴボ」
宮殿の奥は洞窟のようになっていて、その奥にはいくつかの部屋のような場所があった。
《こちらです》
「ゴゴゴ」
《ごゆっくり》
2名のマーメイドがそう言って頭を下げる、姿かたちはマーマンの様であり人のようでもある。
海洋獣人と言った所だ、別に鱗などはないが体表はぬるっとしていそうだ。
体に纏う物は何一つないが、姿の半分はほぼ人と同じだと言える、この容姿だとどこかの阿呆が捕まえて見世物にしようなどと考える輩がいないとは言えない。
この国の形はそういう差別から彼らを守るための物なのかもしれない。




