海洋都市アビスピア
海洋都市アビスピア
マーマンたちが気絶し伸びている間に転移してしまおうと思ったマーシャ、だがこの場所全体に掛けられた魔法はマーシャの転移魔法でも王国へ移動することも、魔王国の学院へ移動することもできなかった。
《どういう事じゃ!》
《一応ダンジョンと言う事なので攻略しないと出られないのではないかと思われます》
《はあ?》
《それよりご友人の姿はまずいと思われます》
そう言えばロキシーは裸のままマーシャに抱きかかえられ気を失っていたりする。
急遽インベントリーの中から無難な服を取り出しロキシーに着せて洞窟の中を移動する、マーマンたちがやって来た方向へと進めば出口が見えてくるはず。
一応生体反応サーチでマーマンたちが死んでいないか確認してみるが、どうやら心配しなくてもよさそうだマーマン達は全員生きている様子。
それよりもここから何処へ行けばよいのか、やや広い海の中の洞窟を北方向へと移動する、どうやら洞窟の途中には他のマーマンたちはいないようだ。
《中々外へ出られぬな》
《水の流れはあちらから来ておりますのでもう少しです》
洞窟の中は少し曲がりくねっている為、出口からの光は全く入らず魔法が無ければどこに何があるのかもわからない。
時折通常の魚が横切ったりするのだが、こちらには各種の隠匿魔法がかけてある為。
サメ類(魔鬼シャークと言うらしい)などがこちらに気付くことは無い。
《見えてきました》
そう言われてまっすぐその方向を見てみると、わずかな灯りが海底を照らしている場所があるのが見えた。
その光に向かって移動するとようやく光が降り注ぐ海洋へと出る事が出来たのだが。
《ようやく来おったったか!》
《だれだ!》
《わが名はポセイダス》
《海王です》
《おぬしはどこに居る?》
《今回の冒険者はせっかちな奴じゃな》
《姿が見えぬのじゃから当然じゃろう》
《そうかおぬしがダーラスの…》
《?ダーラスの事を知っておるのか?》
《そりゃ知っておる、元同僚みたいなものじゃ》
水の中だと言うのに相手の言葉が聞こえてくる、まるで超音波の様だが彼らの能力の一つだろう、海洋獣人族の言葉はかなり離れた場所にいても聞こえるようだ。
まさか海王がダーラスの知る竜族の一人とは思ってもみなかった。
《その近くに海流がある、身を任せればここまで数分じゃ、待っておるぞ ガハハ》
水上に出るとまばゆいばかりの日差しがマーシャを待ち受けていた、そして海王が言う所の海流はすぐにわかった。
幅は数キロはあるだろうか、その流れが他の海面と違う色なのですぐにわかる。
殆どの魚はその流れに逆らうように泳いでおり、休もうとするとあっという間に流される。
その体がどんなに大きくとも流れには逆らえないようだ。
だから食べ物を捕食する時はその海流にとどまるよりも海流の外へ移動した方が体力を削られないが、他の場所に移動するには便利かもしれない。
流れに身を任せる事数分、目の前に陸地が見えて来る。
岩場の海岸線は少なくとも数キロ以上、その向こう側には高い山が見えるがどうやら活火山のようだ、白い煙がとめどなく湧き上がっている。
《この島か?》
《島の下だ》
そう言われて海の中を覗き込むと、既に出迎えのマーマン達が沢山待ち構えていた。
《なるほど水面の下に町がある》
《ようやく来たな》
《部下の後を付いてこい、話はそれからだ》
海面の中には数体のマーマンがこちらへと浮上して来る。
《こっちだついてこい》
「ザバン!」
水龍剣の魔法で水中でも呼吸が可能、その魔法はマーシャだけでなく気絶したままのロキシーも含まれる。
マーマン達について行くと、海底へ約100メートル潜った辺りに神殿のような建物があることが分かる。
《通せ、客人を連れて行く》
《ハッ》
衛兵なのだろう甲冑を纏ったマーマン4名がこちらに向かって槍を交差し通せんぼするが、出迎えのマーマンが衛兵に話すと槍の持ち手を変え海中にある城の中へ招き入れる。
海の中の城、どうやって作ったのだろう、大きさはさることながら広さも地上の王城より大きく見える。




