海竜族
海竜族
その種族は太古の昔他の星からやって来たと伝承には記されている。
今ではこの星の一つの種族として繁栄しているが、一つだけ他の種族とは違う所があった。
この種族はある時から一切他の種族との交流を絶ったのだ。
『海王様、ダンジョン魔方陣になにやら魔力の痕跡がございます』
『そうか…』
『もしかしたら久方ぶりの訪問者かと』
『いずれにせよこの場へ訪れたならばそれなりの歓迎をしてやろう』
『かしこまりました、国民総出でお出迎えする準備を整えておきます』
『頼んだぞ』
魔王国から北へ1000kと少し、魔王国の約半分の大きさである北海竜群島。
一番大きな島は横に細長く、数十の小島がその島を囲む形で存在している。
そこに住む住人、いや海人もしくは魚人とも言われているが正式には海洋獣人族と言う。
海に適した生態系を持ち手や足には鱗やヒレがあるのが特徴だ、特殊な肺を持つ為一呼吸で5時間以上は海の中で生活できる。
海洋獣人は大きく2種族に分かれているが、一番多いのが魚人系の獣人でありこちらは海の中でずっと生活できるように変化した。
知能はやや低いが彼らの生態系は陸上の蟻に近く女王制を取っている。
もう一つが海性獣人、こちらの生態系は魚人族の上位に位置する、要するに海洋獣人族の上位種と言う位置付けだ。
この2種族が現在でも持ちつ持たれつで生活しているのだが、問題はそこではなく何故魔王国がこの海洋性獣人族を傘下に付ける為侵略しないのか?という所だろう。
その理由は海洋に張られた結界だった、その結界はダンジョンとも関係している。
実はサザールダンジョンは陸上のダンジョンとは違い、この地区全体を含んだ広大な海の中にある。
最初のダンジョンに在った入口はこの地域へ入るための魔法陣の一つであり、ダンジョンの入口は別な場所にある。
「ここじゃな」
「岬の先に入口が見えます」水龍剣・アクア
「入口は問題なさそうじゃな」
「中からわずかに邪な魔力を感じます」アクア
「分かった、注意は怠らずに進むぞ」
「かしこまりました」
小型の水龍に変身したアクアを肩に乗せごつごつした岩場を、ヒョイヒョイと跳ぶように移動するマーシャ。
サザールダンジョンの入口はポッカリと開いた洞窟の様になっている、下はごつごつの岩場。
天井には鍾乳洞のように石灰のツララが垂れ下がり突起のような物が幾つか見えている、予想通り洞窟の中は真っ暗であり普通の人族ならば先へ進むのも一苦労だろう。
だが、マーシャは暗視スキルを使いダンジョンの中へと入って行く。
「このくらいならば光魔法で灯りをともさなくてもよいじゃろう」
「先は階段状になっているようです」
「分かった、進むぞ」
「はい」
少し進むと洞窟が狭まり、天井が下がって行くとともに傾斜が下方向へと伸びて行く。
そして今度は2メートル四方の通路がわずかな傾斜を形成し下の方へと伸びて行くのが分かる、階段とは言うがそのおおきさも配置もランダムなため、バランスを崩し足元を外せば転んで岩に体を打ち付けてしまいそうだ。
「よっ ほっ」
ようやく身長が157センチになり体付きに女性としての外観が現れだしたマーシャ。
だがこの洞窟の階段は通常の足さばきで降りるより、跳んでしまった方が楽と言える。
但しうまく体重移動をしないと苔の生えた岩場は滑りやすく、普通ならすぐに滑って転んでしまうだろう。
約40メートルは下りただろうか、そこには少し開けた踊り場のような場所があり、そこだけ魔石を使用した灯りが灯っていた。
「ロキシー!」
「マーシャ様来ないで!」
「ようやく来たか、ここで待つのも結構疲れたぞ」グラッダ
「卑怯な奴」
「どうとでも言えばいい、お前もこいつももう終わりだ」
「それはどういう意味だ?」
「俺が檻から離れているのは近寄ると転移魔法が発動するからだ」
「助けたければサザールダンジョンに挑戦しなければならないって事か?」
「それもあるが、もう一つお前を殺すために用意して置いたぞ」
よく見ると檻の奥の方、暗闇にまみれて隠れていたグラッダ、彼の手には禍々しいオーラを纏っている遺物のようなものが載せられている。




