魔法学院 カマキリ女史
魔法学院 カマキリ女史
やや細身の長身魔族、長い事魔法の教師としてこの学院に努めているが親族は彼女が婚姻することをあきらめている。
だが当の本人はそうは思っておらず、最近はどうやったら男を虜にできるのかという研究に没頭していたりする、媚薬の開発や魅了の魔法に対する研究は彼女のライフワークでもある。
彼女はプライドが高いためにその研究を隠している、表立ってその研究を実践しようとまでは考えていないのだ。
「全く、皇女も何を考えているのかしら…」
「コンコン」
「だれ?」
「私です」
「あらジョーキじゃない、こんな遅くにどうしたの?」
ジョーキ・スライベン魔道爵、彼はまだ若い教師の一人だが10年前 彼の指導教諭になったのがラプトルだった、要するに上下関係にあるのだ、表向きは。
「実は相談がございまして」
「良いわよ」
魔法学院にある教員用の建物、ラプトル女史に与えられた研究室。
そこには魔法の研究道具や素材が壁一面に置かれており、本棚の隙間はまともに歩くこともできないぐらいだ。
入って来た後輩教師は挨拶を交わすとすぐに魔法の言葉を唱える。
「盟約の時来たり、我が下僕にこの指令を下賜する」
そう言うとラプトルの目が赤色に変化する、眷属化魔法の発動だ。
彼がラプトルに掛けた魔法はいくつかある、魅了の魔法もあるがそれだけではなく眷属にするためのいくつかの魔法。
ジョーキは吸血族のハーフでありグラッダの部下でもあった。
先ほど新しく宰相になったラルダルから連絡があった、今宵皇女が訪れたと言う知らせ。
新しく配属された宰相のラルダルジブルトルとグラッダはやはり通じていたと言う事。
そしてグラッダの部下であるジョーキに指令が下った、今宵第二皇女のロキシーを鹵獲せよと。
彼がこの学院に配属され10年以上が経っている、ジョーキは吸血族の繁栄に尽くしてきた。
グラッダよりも吸血族の血を濃く持っていたが、吸血族は血の濃さの次に年齢がそのまま順位となっていたりするいわゆる年功序列制度を取っている。
ハンクルが175歳、グラッダは103歳 ジョーキはまだ35歳と言った所。
いくら爵位を持ち血はグラッダよりやや濃くともその順位は変わらず、しかもジョーキはグラッダの親族でもあったので、彼の命令は絶対という事になる。
この学院で教員になると共に魔法を使用し吸血族の部下を増やす事、それが彼に下されている任務。
配属されてから10数年、いつかこのような指令を全うできるよう、道具として使える教員や生徒を得意な魔法を使用して眷属化しておいた。
今ではこの学院の1割の教員と生徒を眷属魔法により命令できるようにしてある、もちろん他の教員の中には同じように吸血族の出身者がいるので、彼らとの連携によるところも大きい。
魔族の中には吸血族の魔法が効かない者もいるので魔法を掛けて操れる魔族のみに限定されてはいるが、今までひっそりとさりげなく眷属化を実行して来たおかげで他の魔族にはばれていない。
そうやって眷属化した教員の一人がラプトル女史だった、普段は眷属になった事さえ本人にも分からないように魔法をかけてある。
「先ほどロキシー第二皇女が来たが?」
「彼女は聖堂に敵国の王女を連れ込んだため注意いたしました」
「すると反省文の刑か?」
「はい、後程この部屋に来るはずです」
グラッダがジョーキに渡した指令書の中身は、学院に通う皇族を捕えて連れて来いと言うもの。
別にどの皇子でも構わないと言う指令だったが、運命は皇族の中では一番弱い立場にいるロキシー第二皇女をターゲットと定めたようだ。




