第4回戦第二試合
第4回戦第二試合
武術の部4回戦第2試合はロッドアダムスとアーノルドシュナイザー。
ロッドの相手は男爵
冒険者組合に登録している赤き盾のリーダーでもある、その姿は赤い獅子とも言われている結構有名な人物だったりする。
「ロックアダムス様とアーノルドシュナイザー様でよろしいですか?」
「ああ私だ」
「おれです」
「それでは開始線までさがって下さい」
「はじめ!」
その鎧は皮に金属の板で補強してあるのだろう、色は少し濃い赤色であり所属しているクランの名前の由来にもなっている。
手に持つのはやや長めの剣と大きめの盾、攻守に威力を発すると思われる剣はやや長い長剣の分類。
1メートル50センチ、大剣よりは細身ではあるが盾を使用するのならばバランスとしてはそのぐらいが限界だろう、もちろん重量軽減のアシスト魔法がかけられていると思われる。
盾は割と大きめの1メートル以上あるベースタイプ、その盾に施された模様は彼の家に代々伝わる獅子の図柄。
色付けも朱色が基本であり、彼の好みでもあるのだろう。
頭には鉢金を付け籠手やグリーブ(脛当て)も装着している、どう見ても彼はタンクとみられるのだが。
そうなるとロッドとは真っ向勝負という戦いになることは必至だ。
ロッドも本来の戦い方は同じようなタンク職である、但しアーノルドが長剣を使うのに対しロッドは槍をインベントリーから取り出した。
その長さは1メートル70センチ、材質は魔鉄でできたダンジョン取得品であり攻撃力に付与魔法がついている。
「ギャイン!」
お互いの武器とそして盾が大きな音を立ててぶつかり合う。
「学生なのにやるな」
「そちらこそ」
貴族の冒険者は基本的に財力が無い場合が多い、広い土地を所有していても見返りとなる作物や特産品の少ない地方の貧乏貴族。
国に治める税金も足りないため、あてがわれた土地を放棄したり開墾することをあきらめたりする場合が多い、その中でも彼は成功している方だと聞く。
王都から南東へ200kほど行った鉱山を含む領地を持ち、畑も少し所有していると聞いている。
男爵になれたのはその地区の山賊討伐を引き受け無事ケガ人を出さずに討伐を完了し、人質や奴隷を多数解放した業績により男爵となった。
元々彼は廃爵された貴族の血筋だと聞いている。
「ギャイン ガン!バギン!」
「硬いな」
「驚いた、学生にこんな戦い方をする奴がいるとは…」
「俺の家系は先祖代々騎士だ」
ロッドの父は現役の騎士だ、西南部の温暖な農村部に昔から王国に騎士を輩出している地区がある。
いわゆる騎士の虎の穴、その名をブレイブ・ザ・ナイトと呼びロッドはその才能を買われ学院に通う事を許された一人だ。
彼の生まれた地区は昔から王に仕える騎士を数多く輩出しているちなみに侍従長だったシャルルと婚姻した近衛騎士団長ロドリゲスバイロンもこの地区の出身。
「ギャリン ガン バン!」
「粘るな」
「そっちこそ!」
既に10分以上が経ちお互いに決め手がないまま試合はとうとう残り数分と言う所まで迫っていた。
「仕方がない奥の手だ!」
「何をするつもりだ」
「こうするんだ!」
それは魔法だ、アーノルドが持つその盾が有している性質なのかもしれない、赤い盾から強烈な熱がロッドに向かって解き放たれる。
「ブワー」
「アツッ!」
その熱は一瞬ではあるが、ロッドの持つ盾を高温にまで熱してしまう。
うかつだった相手が普通に剣と盾でずっと攻撃していたので、イレギュラーな攻撃などしてこないと高をくくっていた。
ここまで勝ち抜いてきた戦士に常識では通用しないと判っていたはずなのに、終盤近くになって奥の手を出してくるとは思わなかった。
ロッドの持つ盾は高温により燃え出しながら金属部分は溶けだしてしまう。
「止めだ!」
「させるか!換装!」
「ガイン!」
ロッドは溶けだした盾をあきらめインベントリーから新たな盾を取り出す。
「便利な魔法だな」
「学院で仕込まれたからな」
「だが、終わりだ!」
アーノルドの攻撃を一度防ぐことができたが、さらに近距離で熱波攻撃を出されては新たな盾を出す余裕も無くなってしまった。
「グアー」
観客席からは燃えているような情景などは見えなかった、最初の熱波は確かに盾に掛けられた魔法によるが、2回目の魔法はなんと精神魔法だった。
その魔法は相手に幻覚を見せる、盾の有する炎魔法とのコンボ。
一度目でアーノルドの持つ盾が熱を発する事を目の当たりにしているので、次の魔法も盾が燃えてしまうと思い込んでいる所へ精神魔法による攻撃。
幻覚魔法による追い打ちによって自分の体が燃えてしまう幻覚に捕らわれて、彼は武器を落とし地に膝を付いた。
「勝者アーノルドシュナイザー」
「わー」
「ま 負けたのか…」
「奥の手を使わされたのは久しぶりだ、冒険者になるならいつでも声をかけてくれ」
冒険者組合に自分のクランを持つA級冒険者、さすがにそのリーダーとなる人物は強かった。




