偽物の剣
偽物の剣
台座に近寄ってそこに刺さっている剣をまじまじと見る、どう考えても剣と言う感じではない。
刺さっている剣自体は全体が灰色であり、どう見ても石でできているようにしか見えないが。
鑑定魔法を使用すると、そこには魔法で擬態しているという判定がでた。
《擬態・名もない剣 引き抜いた者によって姿を変える、タイプUR 使用条件 勇者・聖女・神の御子・天使・聖者・魔王・王、所有条件AT1万MP1万》
見た目は特に装飾や模様などが無い、だから手持ちの剣をいくつか出してちょうど良い大きさの物を見つけ加工する。
【これが一番近いな…】
【なるほど偽物と交換して置くのですね】
【そうしないと魔王をやれって事になるだろーが】
【晴乃香様なら魔王もお似合いなのでは?】
【殺すゾ】
【ヒー】
【これで良いか…】
手持ちの剣しかも普通の鉄の剣であり長さも幅もほぼ同じ、その剣に魔法で外見を灰色に粉飾。
さらに重量を10t約1万kと言う重さを魔法で与える、どう考えてもこれを引き抜くことは素人いや魔族がアシストを纏っても無理だろう。
だが掛けられた魔法を見抜き解除したならば引き抜くことが可能になるので、マーシャはさらにこの場所に魔法無効の結界を貼っておく。
【こうしておけばバレる事もねーはず】
【さすがです】
【全く誰のせいだよ!】
【えへへ】
【じゃあ抜くぜ!】
「グッ」
台座からなんの変哲もないはずの灰色の剣をゆっくりと引き抜いて行く。
そこまではごく普通、確かにその重さはマーシャのようなアシストが付いていなければ引き抜くことなど出来そうもない重量だ。
【確かにこいつは重いな】
「ピカッ」
【うわ】
引き抜いてから約10数秒、掌の中で蠢くように持ち手が変化していく。
灰色の剣が光り出す、その光が収まるまで30秒近くが経つと、徐々に光は収まり真の姿が露になって行く。
【かっけー】
【綺麗ですね】
そこには魔獣に限らずどんな怪獣もぶった切れると思えるような美しい剣が一振り姿を現した。
《聖剣フェルニクス:持つ者の力が全て100倍になる、※その他色々》
【ず ずいぶん簡単な内容だな、端折ってあんのか?※印って鑑定でも全部わかんないとか、舐めてんのか?】
【た 確かに】
通常ならば色んなバフや固有スキルが付くと鑑定した時に表示されるのだが、確かに単純に付帯するバフが100倍と言うのは人の持って良い武器とは思えない。
外見は鑑定魔法の内容とは違い鏡のような刃先と鍔はまるで宝石で作られているかのようにキラキラと輝いて見える。
持ち手はまるで自分の手に吸い付くようだ、そこにはまるで磁石でも付いているかの様に掌を広げても吸い付いたように剣が落ちることもない。
【おっと見とれている場合じゃない、今のうちに偽装工作…】
先ほど作成した偽物の剣を台座に差し入れさらに粉飾魔法で仕上げをしておく。
勿論、この場所に掛けられた各種魔法はマーシャのみしか解除できないようにしておくのも忘れない。
そして聖剣の方はすぐインベントリーへとしまい込んだ。
【それではこれで…】
【あ コラ!】
用が済んだのかこの時点でさっさと退散するダメ天使、名前すら聞いたこともないがすでに3回も会っているのでそろそろ自分の名称ぐらい名乗っても良いと思うのだが。
マーシャは面倒なのでわざと天使に名前を聞かないでいたりする。




