魔王国の魔法学院
魔王国の魔法学院
ロキシーは現在魔王国にある魔法学院の上級課程へ就学している、ここ1年で成績も上がり、いつの間にか主席になっていると言う。
「マーシャ様、もうお帰りに?」
「そのつもりじゃが?」
「魔法学院を見学してみませんか?」
「この時間にか?」
「ええ、見せたいものがあります」
「見せたいもの?」
「では行きましょう」
ロキシーはそう言うとマーシャの手を取り転移魔法を詠唱する。
「我が身を魔法学院聖堂の前へ 転移!」
「シュン」
やってきたのは魔法学院の奥に見える聖堂、夜の魔王国はひっそりしていたが、時折どこかで獣の遠吠えが聞こえる。
「こちらです」
別に魔王国だからと言って悪魔を祭ってあるわけではない、ここは聖女を祭ってある聖堂なのだ。
魔王国に聖女とは?この世界全体にある昔話に何度となく記されている聖女。
王国では教会そのものには女神を祀っているのだが、聖女を信奉する宗教は魔王国で始まったと記されている。
それまでは王国の宗教は聖女ではなく通常の神を祀っていたそうだ、だが数百年前に当時の教皇が神からのお告げを受け女神を祭ることにしたらしい。
女神(神)→聖女(使徒)
マーシャにとっては面倒であり複雑な話ではあるが、神や天使には一度接触しているので一概に女神や宗教を否定することもできない。
「キー」
聖堂の大扉を開けて中に入ると、古い建物の匂いと一緒に香の薫りが漂ってくる。
先ほどまで誰かが祈りをささげていたのか、祭壇の前にはろうそくが幾つか燈っている。
他の教会と違うのはその祭壇のさらに奥、そこには聖女の彫刻が有り手前には一振りの剣が台座に刺さっている。
「これは?」
「魔王の選剣と言います」
「選剣?」
「この国の魔王になるための一つの証、それがこの剣を抜く事です」
話には聞いていた、だが特に気にはしていない、いずれこの場所には来ようと思っていたのだが、興味本位で試してもし剣が抜けでもしたら面倒なことに巻き込まれてしまう。
だがそう思っていたとして、手を出さないでいられるかどうかは別の話だ。
【やっとキター】天使
【なんじゃ?】
【一年ぶりってないですよー】
【その声は残念天使か?】
【ざ 残念じゃないですー】
【何の用じゃ、話すことなど無いぞ!】
【そっちには無くてもこっちにはあるんですよ!】
【また仕事か?】
【仕事と言うか…晴乃香様は使徒になったんですよね】
【使徒…確かに女神には会ったが】
【また力を授かったのですよね】
【そうみたいだな】
【ならば仕事ではなくて使徒としての義務です】
久しぶりの天使とのやり取り、マーシャにとってはこの天使は残念な奴と言うレッテルを張っており、あまり良い思い出は無いと言って良い。
それに、一度女神とは話している為、下位の部下クラスの言う事など聞いてやるつもりなども無いと思っている。
【義務だと!断っても構わないと言う事か?】
【なんで義務を断るんですか!無茶苦茶な!】
【何の代償も無しに勝手に仕事をぶち込むやつの言う事を聞くわけがねーだろが!】
【え~】
【まあ一応話は聞いてやる】
【晴乃香様~】
【そんで?】
一応天使や女神と話をしている間は周りの時間はストップする、直接テレパシーでやり取りするので声などは聞こえないと言うのだが。
目の前には先ほどまで話をしていたロキシーがその腕を剣に向けて静止している。




