ロディトルグラディサザラード魔公爵
ロディトルグラディサザラード魔公爵
ここは魔王国西方にあるサザラード領、さらに西へ行くとドワーフ族の国である山岳都市がある。
この地区は工業都市と言って良い、ドワーフ族が10%住んでおり武具や家具などの工業製品を作成する工場が幾つもある。
「まだ王国の情報は入らぬか?」
「まだでございます」
命令を下した魔伯爵からの定期連絡が入ってこない、この時連絡係でもある魔族も全員マーシャによってマーキングされたため、各将軍の部隊によって捕えられてしまっていた。
末端の諜報部員には転移魔法を使える者は少ない、殆どは魔道具での転移もしくは魔方陣を構築して移動するのが通例だ。
その連絡係からの情報が入って来なければ王国で何があったのかもわからない。
作戦が失敗に終われば偽装工作をしておかなければならないし、今後の事を考えると早く手を打たなければ魔王から何を言われるか、公爵家の一つとしてはこの作戦の事は漏らさないようしなければ。
「カルファスを呼べ」
「はい かしこまりました」執事
ロディトル魔公爵は魔王と同じ竜人族だが、現在は魔将軍の地位にとどまっている。
一応魔王とは遠い親戚ではあるのだが、彼はあまり魔王と言う地位を良い物だとは感じていない。
では何故ジャベリン魔伯爵を使い王国に攻撃を仕掛けているのか?それは現王妃が彼の思い人だったから。
彼の元へ現王妃スルベリア・コーパス・ウェザラードから王国へ調査と称して攻撃してほしいと言われたからだ。
王妃からの頼みを断ることができなかった彼は、自分で動くよりまずは部下を使って王国の兵士がどの程度かを探ってみることにした。
計画自体は無謀なものだが、うまいことに王国で大会があると言う話を聞き、潜入捜査する計画を立てたのだ。
だが、その結果がこれでは王妃に事の結果を報告することもためらわれる。
「公爵様、カルファスが参りました」
「通せ!」
「は!」
ここはウェザラード家代々の当主が住む城、魔王城より若干小さめだが、それでも建坪は千坪はあり、各所に物見台や隠し通路があったりする。
昔はこの城が魔王城だった時もあるのだ、今から2千年前には彼の祖先が魔王だった時期もある。
その城の中にある執務室に異様な成り立ちの人物が訪れる。
「公爵様、お呼びですか?」
「ああ 今すぐアルフレア王国へ行きジャベリン伯爵から事の顛末を聞いてこい!」
「かしこまりました…」
そう言うとカルファスと言う男は目の前からフッと姿を消した。
魔族の中でも闇精霊族と言う種族、実態はよく知らないが、古くから精神魔法や闇魔法に特化した種族だ。
ダークピクシーとも言われている、その姿を見た者はいないと言われており。
いつも大きめのコートやガウンで姿を隠していることが多い。
「コンコン!」
「ミストルです」
「おおー来たか?どうだダンジョン攻略は?」
「はいクドウザダンジョンの30階層まで攻略完了いたしました」
「おーそこまで攻略できたか」
「おかげさまで剣術師範からも手ほどきの許可を頂きました」
「そうかそうか…」
「父上何か問題でも?」
「ああ、大した事は無い、お前は心配せず学院で良い成績をあげてこのサザラード家を盛り上げてくれ」
「はいお父様」
マーシャと時を同じくして転生した、ミストルグラディサザラード。
勿論彼女はアルフレア王国の第三王女マーシャが因縁の相手だと言うことなど知らない。
だが数日後彼女の元に思いがけない相手がやって来る。
運命の糸は予期せぬ時に予期せぬ場所で事件を引き寄せる、それが必然なのかそれとも抗えぬ定めなのかはまだ分からない。




