夕食の後
夕食の後
約1時間、すでに午後7時を廻り空には月がその姿を現している。
将軍3人と別れるとその足で馬車に乗り学院の寮へと戻ることに、ラランカには頼まれていた魔道具を渡し別れることに、彼女には明日のトーナメントでも頑張ってもらわなければ。
ラランカはマーシャ達と別れ今回ジンジャー領から参加している仲間の元へ。
「帰って来たわね、どうだった」
「何もないわよ、食事を一緒にしてきただけよ」
「え~、もしかしておごり?」
「そうかも…」
「いいな~」
「大黒猪の肉よ、貴方菜食じゃなかった?」
「え!うーん羊の肉と牛の肉は勘弁かな…」
一応羊系の獣人は菜食に近いが肉を食べられないわけでは無い、だがほとんどの羊獣人はあまり肉を食べなかったりする。
「野菜も美味しかったわよ」
「ほんと!どこの店?」
「ファームデコラゾン、並んでいる人もいたから有名なのかも…」
「分かった、試合で勝ったら私も行くわ」
「そうね、その前に勝てるかどうか…」
「それどういう意味?」
「特に他意はないけど、今回はダーラ様も出るらしいから気を付けてね」
「ダーラ?」
「マーシャ様の仲間で魔法のスペシャリストの一人」
「ふーん」
そう言われてもピンとこないが、明日になればおのずとわかるはず。
ダーラだけでなくリリアナやフランもかなり腕を上げているので、対戦することになれば下手をすると1回戦で負けてしまう事もあり得る。
「そういえば西の領からも大会参加者来ていたわよ」
大会参加者はどの地区も40人、ようやく西地区からの参加者が到着したと言う話。
既に夜の8時近く、ラランカ達も本日昼過ぎに到着し、殆どの者が長旅の疲れを癒したり酒を飲んだり、知り合いに会いに行ったり。
それぞれに王都での初日を終えたのだが、西からの参加者は宿へ入ると同時にそのまま部屋にこもっていた。
「この宿で泊れば明日は試合へ出るのだな」魔族
「朝9時アカデミーのコロシアムへ行く…そこで参加登録…」操られた参加者
「それから?」
「3種の…トーナメント…同時に3か所で…グウウ」
「これ以上は聞きだすのが難しそうだな」
「明日はアカデミーのコロシアム、そこに9時までにいけばいい」
「俺達も普通に戦えばいいのか?」
「魔伯爵は戦って王国の強さを見てこいと言っていた、俺達は次の命令が来るまでトーナメントに出て戦う、それまでは人質も生かして置かないと怪しまれるからな」
「面倒だから今から町に出て王国人を殺しに行かないか?」
「それでどうする?普通の民間人を殺して事件を起こしたその先は?」
「少しぐらい楽しんでも分かりはしないだろう?」
「お前何もわかっていないな」
「あ!なんだと?」
「昨年この国の王族に将軍2人が太刀打ちできずに負けたって事、知らない訳じゃないだろう」
「あれは魔王様がでっち上げた話じゃないのか?」
「はー まさかそれをうのみにしているんじゃないだろうな?」
「違うのか?」
「あれは魔王様が傘下の貴族を押さえつける為の作戦だ、じゃあ将軍2人が勝ったとでも言うのか?」
「いやそれは無いが負けたと言うより話し合いの末そういう事にしたって聞いたが…」
「話合いだけで終わる訳がないだろう、あそこまで攻めて行ってあと少しと言う所まで行ったのに、負けてダンジョン攻略という切り札まで王国に許可する事になったんだぞ。俺が仕入れた話だと、魔王様もこの国の王族に頭が上がらないと言う話だ、そのぐらい強いやつが居るってな」
「うそだろ!」
「そうでもない限りすべてのダンジョン攻略を魔王様が王国に許すわけがないだろう!」
「た 確かに…」
「だから王国の大会に潜入してその強さを確かめない限り、この国に攻め入るのはサザラード将軍でさえ待ったをかけたって言う話だ、だから伯爵にそういう命令を出したんだろ、王国も地方の爵位持ちは俺たち魔族の爵位持ちと大して変わらないと言う話だ、だけどな 王族 しかも第三王女のマー何とかというやつは別格だって聞いたぞ」
「この国の王女か?」
「あのハンクルヴェノムジョーバリン公爵(将軍)に勝ったと言う話は嘘じゃないぞ、俺の従弟がその目で見たって聞いたぞ」
「俺はそれも嘘だと聞いていたが…」
「負けたって言うと公爵の地位が下がるから、部下には話し合いにしたと言う事だよ、その後に口外禁止にしたって聞いたからな」
「おいおい、お前だって話してんじゃないか、それじゃ口外禁止の意味ないだろう」
「お前な、全員の口に戸は立てられねえだろう、それにこの王国じゃすでにそういう事で広まっているんだ」
そう王国の方では第三王女の話は盛られてるわけでは無く、普通にマーシャが解決したと言う話で通っている。
隠したいのは魔王国側であり、マーシャとしてはそこに異を唱えるようなことはしていない。
だから魔王国側の将軍はその真意を測るべく動いていると言って良い。




