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転生した王女はとんでもなかった(天使の過ちは丸投げです)  作者: 夢未太士
第4章 武術&魔術大会
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王都セリアの食街道

王都セリアの食街道


学院の正門近くには乗り合い馬車の停留所がある、乗るには当然お金がかかるがマーシャから見れば運賃など大した出費では無い。

勿論、食街道まで自分の足で走ったり、空を飛んだりすれば簡単に行けるのだが、それをやると今度は一般市民に何を噂されるか分かった物ではない。

それにフランとリリアナはそこまで俊足の魔法で早く移動できたりはしないし、王女や淑女が自分の足で走って行くと言う行為自体がはしたない事だと思われてしまう。

そんなわけで、あえて馬車を使用することになる、もちろんレストラン街までの道程はせいぜい20分にも満たないが、その周りには宿屋街や用品街などもあり終日にぎわっている。


「姫様、着きましたよ」御者

「有難う」


王都セリアの町は放射線状に作られている、王城と王宮から1kまっすぐに並木道が続き。

1k進んだ場所に大きなロータリー風の分岐路がある、左へ行くと学問街 こちらに進めばアカデミーや宿舎が見えて来る。

真ん中へ進めば用品街で洋服や武具・防具を扱う商店が並ぶ、右へ進めば工作街、こちらは馬具や農機具そして日用家具などの店が並ぶ。

食街道は用品街と工作街の真ん中を通る道になっている、高級食材を売りにしているレストランから大衆食堂、さらに食材を売る店もこの道筋に多数出店しており、毎日のようににぎやかな声が絶えない。


「いらっさーい 安いよー」

「そこのお嬢様、どうですかー」

「ここへ来るのは久しぶりじゃな」

「いつも寮の食堂ばかりですからね」

「さてどこがファームデコラゾンかな…」

「有りましたよ」


街道を50メートルほど進んだあたりにおしゃれな作りの目新しい店が1軒。

問題なのは予約をしていないので入れるのかどうかという所、既に店の外には数人のお客が順番を待っている。

時刻は6時を回る頃、まさか入れないなどと言う事は避けたいところ。


「何名様でしょうか?」

「4人じゃ」

「お名前をどうぞ」

「マーシャ マーシャオースティンアルフレアじゃ」

「マ マーシャ様、これはご無礼を」


どうやらこの世界の予約方式ではなく生前の入店案内の方式を取り入れている様子、この世界にはまだ電話などと言う物は無く、予約と言えばメイドや召使に言ってその日の来店予約の有無を確かめて来させると言う形になる。


「気にするな、今回はお忍びじゃ」

「さようでございますか、それではすぐにご用意いたします」

「いやいや、ちゃんと待つぞ、先に並んでおる者達に申し訳が立たぬじゃろう」

「かしこまりました、それでは待ち時間だけお伝えいたします、現在20分の待ち時間となりますが宜しいでしょうか?」

「うむ、そのぐらいならば大丈夫じゃ」


店の外にもいくつか椅子が置かれており。昼間はカフェのような形で運営しているのだろう。

夜は店の中だけにするのは、街灯の灯りだけでは外が暗いため足元がおぼつかなくなるためだ。

当然のことながらお酒も飲むことができる店の為、道に邪魔なパラソルや椅子が出ていればつまずいて転がる可能性が出て来る。

マーシャ達の前に7人ぐらいの客が並んで待っていたのだが、そこへ煌びやかな馬車で店の前に横付けする一団が。


「ここね」

「あーら店構えだけはいいわね」

「うちの店よりしょぼいわよ」

「さ 入りましょう」

「ご予約は?」

「予約?そんなもの無いざます、私バッハランド伯爵夫人ルルリーラバッハランドざます」

「それでは列にお並びください、現在の待ち時間は30分です」

「なんですって!私に並んで待てと言うのざますか!」

「本日は王女様もお見えです」

「どこの?」

「あちらに…」

「ただの子供じゃないの?」

(面倒くさいが言ってくるか…)

「私が行きます」リリアナ


そう言うと店員の元まで小走りで近寄ろうとするが、その前に向こう側からどこかで見た事があるような人物が現れる。


「何か問題でも?」ジョリーン将軍(空撃隊)

「あ こちらの方がご予約も無いのに待てないと…」

「どちらのご婦人かわかりませんが、こちらのお店は第一王女のアマンダ様が運営しているお店です、ご予約が無い場合並んで待つのがマナーですよ」


ジョリーン将軍がそう言うとさらに後ろから将軍が2人現れた。


「うぬ うまい飯を食べられるのならわしも待つのが苦にはならぬがな」グラムス将軍(雷鳴隊)

「食道楽のおぬしからそのような言葉が出るとは思わなかったぞ」ブラウン将軍(火炎隊)


まさか将軍職が3名、爵位持ちならば必ず見た事が有る人物、特にグラムスは既に将軍職に就いてから20年近くが経つ、自身も公爵家の当主なのだから知らぬ者はいないと言って良い。


「しょ 将軍様!」

「さて並ぶとするか」


そう言われては横入りするわけにもいかない、伯爵家を盾にしたご婦人たち数名は罰が悪くなったのか、その場を立ち去ってしまった。


「余計なお世話になりましたね」リリアナ

「そうでもなさそうじゃ」

「おー審査委員長様ではないですか!」

(面倒な)

「マーシャ様もこの店で?」ジョリーン

「姉上が運営しておると聞いてな」


まさか、いや逆にそこまで考えていなかったのが災いしたのか、今王都には将軍職が全員集まっている。

それだけではない、この地には本日続々と各地の腕自慢が集まっているのだから。

よく見ると王城警備兵も数人が治安維持部隊として参加している。

多分王様からの命を受けて、警備を増やしたのだろう。

いくら冒険者組合に登録している名だたる強者達だとしても、浮かれて酒を飲み暴れる者がいないとは限らない。


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