ここはアマンダの部屋
ここはアマンダの部屋
明日から本戦トーナメントが始まる、既に準備は整いつつあるのだがアマンダは最後のピースであるバトルドレス完成の一報を待っていた。
「姫様落ち着いて下さいよ~」
「お 落ち着いていますよ」
部屋の中を行ったり来たり、本日は早めにフォルダンとの練習を切り上げ、お付きのメイドを伴い自室に戻って来ていた。
待っているのはバトルドレス、既に5日が経ち本日仕上がると言う話を受けている。
結局マーシャが請け負ったのは王族からの3着のみ、他は価格のことも有り爵位持ちからの受注は殆ど受けることが無かった。
但し、将軍職からの受注は2件ほど入っている、もちろん大金貨50枚以上というオートクチュールの製作費用に変更はない。
「でも予選からなんて王様も融通が利かないですね」
「これ!口を慎んだ方がよろしいですわよ、そう思っていたとしても言ってはならないこともございます」
「す すみません」
「いいのよ、ここだけの話ならば私も大目に見ます、でも他では絶対悪口は言わないようにね」
本来ならば結婚を考えているアマンダとフォルダンの2名、できればトーナメント後半から出場したいところだが、今回は黙って従わなければフォルダンとの話は破談にされてしまう可能性が高くなる。
出来るだけ努力して勝ち上がってきたと言う形を見せる、万が一負けたとしても2人がどれほど愛し合い結婚を望んでいるのかをこの国の皆に見せる事。
その行為すべてが2人にとって必要な事なのだから。
「コンコン」
「マーシャ?」
「お姉さま お届けに上がりました」
「はいって」
午後4時が過ぎチームマーシャの訓練を昼過ぎに切り上げ自室でアマンダのバトルドレスを仕上げていたマーシャと仲間の使徒達。
前日には第二王妃のバトルドレスを届けたばかりだが、既にお針子としても腕を上げた彼女らにとって2着ぐらいの同時進行くらいは分けのない事だった。
「い いいわ、素晴らしい出来よ」
「お褒め頂きありがとうございます」
試着が終わるとその体をくるりと回し少女のようにはしゃぐアマンダ、全体にフリルを大目に仕上げ所々に伸縮素材を取り入れたフィッティングは完璧だった。
足元までは大きくスリットが入るがレースのフリルやインナーとのかみ合わせでそれほどいやらしく見えず、かといって胸元が大きく膨らんだアマンダには女らしさが前面に出てもあまりエロくならないように作成した。
肩と腰にはそれぞれガードパットが装着される、インナー2ピース・アウターは6ピースという魔法職に限定しなくても使用できるバトルドレスに仕上がった。
純愛のバトルドレス:2+6ピース、DEF+400・AT+200・MAT+400、聖魔法アシスト1、6倍、闇魔法耐性2倍、全魔法防御1,4倍、自動修復、オートヒール、攻撃魔法アシスト等々。
8点を身に着けるだけで自分の能力が2倍近くまで増加する、虹色鋼や各種の魔石を散りばめた豪華な作りだ。
「有難うマーシャ」
そう言ってドレスを着たままマーシャを抱きしめる。
「うっ お姉さま苦しいです」
「ご ごめんなさい」
「腕力にもアシストが付きますから、抱きしめる時は少し力を緩めて…」
「そうなのね、分かったわ」
先週貸し出した杖との相性もバッチリ、実は第2王妃のドレスとほぼ同じ性能と言って良い。
あまり差を付けたりすると後で文句を言われ、マーシャのせいで負けたと言われてしまう可能性もあるので、ドレスの能力自体にはそれほど差が無い作りにしてある。
「それでお値段の方ですけど少し待っていただけるかしら…」
「全部ですか?」
「いいえ半分は今支払うわ、アリタ」アリタはアマンダ付きのメイド
「はいただいま!」
目の前には大金貨35枚、アマンダは70枚支払うつもりでいる。
50枚以上と言われて50枚しか支払わないとか、姉としてそれは恥ずかしい。
今期は自分が管理する農場は豊作が分かっており、最低自分の懐には大金貨500枚以上の収益が入って来ると見込まれる。
勿論だからと言って無駄に使うと今後の活動費が無くなり、自由に買い物も出来なくなってしまうが、そこに目をつぶってでもマーシャには恩を売っておかないとフォルダンとのこともあり、ここは大判を振るう場面である。
「残りの半分は来月になりますけど宜しいかしら」
「大金貨35枚!」
「合計70枚、少ないかしら…」
「いいえとんでもございませんお姉さま、多いぐらいです」
「良いのよ、本当はもっと取りたいのでしょう、お金はいくらあっても多いに越したことはないですもの」
「確かに その通りです」
(やられた、もう少し取ろうと思ったけどほぼ予想通りの額で手を打たれてしまった)
「足りない分は今後ダンジョン攻略で埋め合わせいたします」
「やはり参加しますか?」
「フォルダンと一緒にね」
アマンダはこの大会で婚約確定を取り戻すことが出来なければさらにもう一段、ダンジョンにて活躍することで御手柄を立てる算段を、マーシャのダンジョン攻略に求める腹つもりなのだろう。
確かに戦争が無なくなった今、手柄を立てられるのはそこしかないと言えなくもない。
現在クラールダンジョンは最下層がどうなっているのかマーシャには分かっているので、今後はクラールダンジョン以外にも攻略の手を伸ばしていくようになるだろう。
そうなるとチームを二手に分けることも考えておかなければいけなくなる。
クラールダンジョンの30階層前後でレベリングをするチームと他のダンジョンへ新たな挑戦をするチーム。
人が多くなって来れば攻略の仕方も変化する、マーシャの計画では次はCクラスか又はBクラスのダンジョンへ攻略の手を進めようと思っていたりする。




