学院の訓練施設
学院の訓練施設
ここは学院の高等部が利用している武術訓練施設、翌日の大会へ向けてチームマーシャと大会参加者が最後の調整に来ていた。
「どうだ?」
「やっぱ盾と剣で行く方が良いのか?」
「剣術と槍術では甲乙つけがたいな」
「ポイント制と言うのが、やはり問題だな」
「だが能力差が有れば殆ど関係ないと思うぞ」
「確かに予選では一撃で相手が気絶してしまえば勝利が決まっていたからな」
たった1発の攻撃で相手が気絶、そういう試合が確かにいくつかあったのは事実。
だがそれは予選だからであって本線は各地のベテラン、腕自慢が挑戦してくるはず。
まあこの大会が初なので、急遽決まった参加者達、全員が各地で最高の武術使いと言う所までいかないかもしれないが。
だからと言って各地の腕自慢がどのぐらい強いかと言うと、現段階では全く分からないと言って良い。
この大会でどの地区にどのような強さの腕自慢がいるのかがようやく少しは分かるだろうと言うぐらい今は未知な状態なのだ。
そう言った意味合いで言えば初めての試みであり得られる情報は大きいのかもしれない。
大会が終わればおのずと各地の領主は自分達の領の強さが分かり、負けが多かった地方はそれぞれ武芸の訓練を強化するようになるだろう。
「やっておるな」マーシャ
「姫様」
「そのまま続けておって良いぞ」
練習場ではカバネルとロッド、そしてテンマルらが作戦を練っている。
そしてもうひと塊は女子が数人。
「だーかーらー違うって」
「こう?」
「避けてもすぐ攻撃できるように、相手から目を離さないようにしないと」カユーラ
「こうか…」
ミミーは槍術を主に使用する、この大会では槍と盾をうまく使用して勝ち抜くことができた。
基本盾で防いだ攻撃は相手のポイントにはならず、どの試合も武術の場合 盾を使用した組が勝ち抜けている試合が多かった。
「カユちゃんの、瞬歩でしたっけ」チャッピー
「そうです、足に掛ける強化魔法の一つ」カユーラ
隠密暗殺術では瞬歩は絶対必須なスキルであり強化魔法の一つでもある、それが無ければ暗部になどは入れない。
相手からの攻撃は全ていなし、そのスピードを生かし複数の攻撃を短時間で敵に叩き込む。
いくら相手が盾で防御しようとも背後に回って攻撃されればひとたまりもない。
そのスピードを生かし攻撃する、武器は小刀と苦無
今回カユーラは籠手とインナー、そしてマスクと鉢巻をマーシャに頼んで作成してもらった。
しかもインナーは例の斑蜘蛛の糸で編んだ特注品、網タイツのような網目が有り、その上から水着のような上下のアウターを纏う。
どう見てもその恰好は前世で見た忍者の姿そのもの、しかも彼女は兎人族なので 見方によっては懐かしいプレイ〇ーイのうさぎのような格好になる、違いは首のリボンぐらいだろう。
「皆さんここにいたんですね」マリオス
魔王国から来た3人と急遽ペアを組んだシロナとリカルドもやって来た。
「おはようございます姫様」ロキシー
「おはようございます皆さま」シロナ
「おはようございます」クロイス
「探したぞ、マーシャ」リカルド
「別に、探さなくても宜しいのですが?」
「そういえば王妃様のドレスは?」
「それならば先日審査委員長として王室にご報告の際届けてまいりました」
「そうか…」
「何か心配でも?」
「いや何でもない」
「父上相手でも手は抜かぬように」
「そ それは当然だが」
「お兄様は少し甘いところがございます、もし私が敵に回っても臆せず戦う事が出来ないとこれから大変ですよ」
「なんでマーシャと、それはできない相談だ」
「仮の話です、あり得ない話ではございますが、相手が変身の魔法を使用して近寄って来る可能性もございます、兄上はそう言った状況に直ぐ反応できるか難しい様な気がしましたので」
「うむむ、反論できない…」
「出来ましたらお兄様も鑑定の魔法ぐらいは覚えておくことをお勧めします」
「鑑定魔法か…」
「確かにそれは必要かもですね」ロキシー
「皆も、できれば覚えておくように」
「当然ですね」チャッピー
鑑定魔法、初級ならばそう難しくはない 敵の情報、特に出自を探るには必要となる。
中級になれば魔物や薬草の鑑定もできるようになってくる。
覚えれば隠し事がある相手であってもすぐにわかる、まあ相手が魔法職の上位ならば粉飾魔法で隠すことも可能なのだが。
殆どの場合、そこまでの粉飾魔法を操ることはないだろう、下手に魔法で隠すと中途半端な粉飾になるので分かる人にならば逆に怪しい者ですとばれてしまう。
勿論上級の鑑定魔法の絶対看破まで覚えれば相手の情報は全て見ることが可能だ。
それには自分のMPが相手より上回るのが条件で有り、そういうスキルをいくつか持つことも条件になる。
「あの~」シロナ
「どうした?」
「私は…」
「そういえばまだ渡していないものがあったな」
ペアの試合、予選トーナメントではシロナにバトルドレスと武具の妖精の杖を貸し出した。
貸すと言っても後でお金を取るのかと言えば、シロナの場合それは難しい事だ。
チームマーシャの場合、後日ダンジョン攻略の際手に入れられるお宝で相殺する形になるだろう、そうでなければ借りるなどと言う事は出来ない。
勿論皆もそう考えているし、最初にそう言った条件も告げてあったりする。
カバネルやロッド、テンマルやミミーはせいぜい1点だけで後は全て手持ちの魔法具をバージョンアップしてもらう事で済んでいるが。
シロナはダンジョン攻略にはまだ参加しておらず今回は急遽マーシャの言う通りに従った形だ。
今後マーシャと行動を共にすることにはなるだろうが、現在の懐具合はと言うと残念ながらゼロに近い、あまりポンポンと貸してもらうのは彼女も気が引けていることだろう。
「これは?」
「インナースーツと言う奴じゃ」
「こんなものまで・・・」
「レンタル料は次回のダンジョン攻略で相殺するから心配は無用じゃ」
「そういう形ですか、なるほど それならば遠慮なくお借りいたします」
「それよりもどうじゃ?勝てそうか?」
「えーそれをここで私に聞きますか?」
チームマーシャの全員がいるこの場所で、臆することなく勝てますとは言いづらい。
特にペア出場の2組は同じように魔王国からの出場者。
負けたくはないが勝つ見込みなどこの時点で分かるはずもない、それでもはなから負けを考えての出場などありえない。
「なに 意気込みだけでも聞きたいだけじゃ」
「それならば もちろん勝ちに行かせていただきます」
「うむ」
各ペアは数点の魔法具をマーシャから借り受け後日の試合へと準備を進める、練習場ではそれぞれが借り受けた魔法具を使用してどこまで威力を上げられるか試しに使ってみる。
誰が勝つか、そして誰が負けるのかそれは明日になってからのお楽しみだ。




