リカルド・ロキシーペア
リカルド・ロキシーペア
一応王族の第三王子なのだが、相手のロキシーとは婚約しているわけでは無いと言う事で最初からトーナメントに出場しなくてはならなくなった2人。
まあアリシアとカールも同じなのだから特に気にしてはいない。
「いよいよですね」
「ああ俺達の力、見せつけてやろう」
「85番リカルド様86番ロキシー様、対するは237番ジンロ様238番サラサ様」
「はい」
「おう」
「用意はよろしいですか?」
「いつでも行ける」
「こちらも同じだ」
「では試合 始め!」
相手はどうやら冒険者組合所属の中堅所と言った様子、身なりも他の冒険者より良い物を身に着けている。
2人共にBクラス以上の冒険者とみられるのだが、リカルドは練習試合以外の対人戦はこれが初めてだった。
しかも相手の前衛は一回り大きな筋肉隆々の若い戦士。
身に纏う雰囲気も他の選手より大きいのが遠目からでも分かった。
「ドンッ!」
「ギャリン」
「グ」
「俺の一撃を耐えるとは…」
「なんだ こいつ…」
「お子様の割にはできそうだな」
「クソッ!」
「おっと」
相手を振り払い攻撃しようとすると素早く身をかわし後退する、どうやらかなり戦い慣れているようだ。
「ジン、遊んでないでとっととやっちまいな!」
「うるせ~な~、挨拶ぐらいいいだろー」
「なんだと」
「ほれ かかってきな」
【リカルド様一度退いて】
【ロキ?】
【何かおかしいわ】
【分かった】
伝達魔法を使用して作戦を伝達する、ペアになる以上細かい作戦を決めて置いた二人。
その一つが以心伝心の指輪、この指輪は魔王城の宝物庫から拝借して来たりする。
テレパシーのような意思疎通が簡単にできるうえ、魔力の使用は殆ど無いと言う、但し距離は500メートル以内、あまり遠くなると殆ど使えなくなるので今回の試合にはピッタリだ。
リカルドはロキからの知らせを受けてすぐに前線から離れ、距離を取る。
手に持っている武器は中クラスの魔法剣ではあるが、これは王城の宝物庫から借りて来たもので、マーシャから借りたものでは無い。
そのため大したアシストは付いておらず、あのまま戦っていると敵の戦略に嵌って取り返しのつかない状況になる。
それに敵である後衛の魔法職がなにやら自陣に魔方陣を展開している。
【あれは召喚魔法】
【召喚魔法?】
何をしようとしているのかは分からない、だが単純に召喚魔法だとすると敵が3体に増えこちらが不利になることはすぐにわかる。
「フィジカルアップ、ディフェンスアップ、シェル、オートリペア、メガバリア」
「ここからよ」ロキシー
身に着けた魔法具は相手と比べればかなりこちらの方が上なのだが、それを鑑定魔法で知った所であまり意味が無い。
相手もそうだがそういう魔法に対してはガードスペルを使用して肝心の能力値を分からなくしていたりする。
「汝の力をここに顕現せよ、ファイヤードラゴン」
相手の魔術師、いや召喚術師なのだろう、呼び出されたのは小型の火竜の精。
使役する魔物の大きさはそれほどでもないが、火竜の精を呼び出すことができるだけでもかなりの魔力量と言える。
「これで終わりじゃないのよ、ジンロ!いくわよ」
「おう!」
「汝の力をその身に纏え、精人一体 フュージョン」
「ゴウー」
召喚した小型の竜が前衛の戦士と並んだとたん爆発のような状態が生まれ戦士の周りに炎の鎧が出来上がった。
「あんなの有りなのか?」
「あれはサラマンドール」
「なんだそれ?」
「火の精霊を纏う魔法よ、でもあまりいい方法だと思えないけど」
「そう?」
「とりあえず火魔法の耐性を上げておくわ、ファイヤーディフェンスアップ」
「有難う」
「対応策は考えておくから」
「分かった」
そう言うとリカルドはストレージから別な剣とそして盾も取り出す
一応マーシャから言われてストレージ魔法は習得しているリカルド、まあその容量はマーシャほどではないが。
一応身の回りの品や武器などは収納して置けるぐらいの容量はある、その中から守りにシフトした時の武器を取り出す。
剣はやや短めのAクラスの物だが、一応スピードと重さにアシストが付いており相手の攻撃に対して倍の手数が見込まれる。
そして盾はもちろん熱や火魔法に耐性のある小型のものだ。
「おら!耐えて見せろ!」
「ギャリン!」
「ボウ」
「あ 熱い」
全身に精霊を憑依させ突っ込んでくるジンロ、その武器は同じく火や熱に耐性のある大型の剣。
そうでなければ溶けてしまう。
「粘るな…」
「これならどうだ」
「うわっ!」
このままだとリカルドが火だるまになる、だがそれをロキが黙って見ているわけがない、少し時間がかかったが、彼女は水魔法と同時に風魔法を使い自分の周りに大きな魔法陣を作り上げた。
「汝の敵を氷の大地に封印せよ、グランドフリーズ、さらにウォーターランド」
ロキシーのストレージには数トンの水が用意されている、このやり方もマーシャから教わったことだ。
ダンジョン攻略だけでなく水や食料はストレージに沢山用意して置けば、その身一つで何年も暮らすことができる。
昨年までの弱い皇女ではなく今は冒険者も舌を巻くほどの強さを手に入れている。
「な なんだ!」
「ピキピキ」
「ジュワー」
「ザー」
「シュー」
辺りを水蒸気が大量に覆い、目の前が一時見えなくなってしまう。
リカルドはジンロが纏う火の鎧が今の氷と水の攻撃で霧散したところで一気に勝負をかけた。
「ドンッ」
「ギャリン!」
「バシュバシュ!」
「ぐあ~」
「あなたもここまでよ」
「何時の間に…」
水蒸気が発生したと同時にロキシーは敵の後衛サラサのいる場所へと瞬間移動。
あっという間に腕をひねると体術を使い地面へと押し付け、反撃魔法など使用できないように両腕を極めてしまった。
「イターイ」
「まだやる?」
「痛いー無理、降参する―」
「勝者リカルド様ロキシー様ペア」
「オー―」
観客席から歓声が上がった、観客には序盤の劣勢からの大逆転と思われたのだろう。
実は相手が火の精霊を呼び出したところでロキシーは(やったね)と思っていた。
水魔法は彼女の得意とする魔法の一つ、しかも火は水に弱い事などすぐにわかる。
ロキシーの使用できる魔法が土魔法と闇魔法だけならばかなり手こずっただろうが、初戦と言う事もあり相手が何の魔法を使い何の魔法を得意としているのかは、熟練の冒険者ならば少し様子を見る所なのだが。
相手はこちらのペアを子供とみなして最初に自分たちの得意な魔法を使ってビビらせ、よしんば自分たちの有利に試合を運ぼうとでも考えたのかもしれない。




