ダーラは手加減した
ダーラは手加減した
本命と言うかズルとでもいうか、その本来の姿は今では伝説になった暗黒竜。
現在の外見は美しい黒髪の美女、一応メイド服姿なのがミスマッチかもしれないが。
それと判るのは外見ではなく独特な言葉使いだけ、だがそれが相手に通じるのかと言うと、人はすべからく外見だけで判断する。
知らないと言う事はある意味幸せであり、そして恐ろしいものだと気が付くのは試合が終わってから数分後の事だ。
だから相手の冒険者はダーラに対して恐れ多くも言いたいことを口走る。
「次は8番と82番」
「うっほー、なんだよその胸は、下半身がうずいてくるぜ~」
「これは又ごみのような男じゃな」
「なんだと糞アマ!」
「しゃべるゴミとは初めて見たぞ」
「くそ! けちょんけちょんにしてやる」
「それでは始め!」
「ウィンドカッター」
「もう始まりか?」
「パシパシ」
「この程度か…」
勿論点数制なので相手の風魔法を受けると防御魔法を使用していないと得点になるのだが、ダーラはそんな事お構いなし。
「少し遊んでやるか」
「ビュシュン!」
何をしたかと言うと、こちらも風魔法に近いかもしれない。
指で円を作りデコピンのように指を撥ねた、その風がまるで暴風のようになり敵を巻き込む。
「ビュゴー」
「な なんだこれー」
「ブフォー」
はっきり言うと魔法では無いのだが、風を起こして攻撃したことには間違いはないので。
もちろんこの方法でも点数に加算されることになる。
しかも竜巻に巻き込まれた人間がどうなるのかなど、全員が初めて目の前で見たことだろう。
観客の目と口が大きくあんぐりと開いたまま数秒。
「勝者81番ダーラ」
「もう終わりか?」
魔法を半減しても基礎能力はそのままなので通常の攻撃力は下がっておらず。
点数制と言うかその対応策自体が要らぬお世話だったかもしれない、但しこの後さらにマーシャから制約を課されてしまう。
「通常攻撃力も半減せぬといかんな…」
「そんな…主は鬼じゃ…」
マーシャもまさかこういう結果になることまでは予測できなかったが、もちろん物理攻撃半減の魔法具はすぐにダーラへと渡されることに。
それでもダーラが負けるとは思えないが、それはやってみなければ分からない。




