使役する動物
使役する動物
動物使いという職業は昔からあるが、彼の使役しているのは契約動物。
魔法を使い自由に操れるようにした動物であり、その場合生きている為、今回の試合で使用するには申請が必要だったりする。
それは人間は積算魔法で点数を計算できるが動物を使う場合その動物にも点数を積算するための魔法具が必要となるから。
その申請をせずに試合会場に参加させた場合は、もちろん反則であり無効となる場合もある。
しかもその動物がリリアナに直接物理攻撃を加えている場合は減点になる。
これが魔法で作られた動物(命が無い)であれば問題ない。
「な 何を…」
カメレオンバット、その姿を見た者は稀だ。
5センチほどの小さなコウモリであり、擬態能力も持つ。
数日前に行商人から手に入れた希少動物、その使い道は敵をしびれさせ動きを止める事。
大きな動物でも数分で動けなくすることができる、人間なら数秒だ。
何故彼は使役動物の使用を申請しなかったのか?それは単純にばれてしまえばすぐ対処されてしまうし。
魔術の試合では通常物理攻撃しかできない使役動物は原則使用禁止だからだ。
「まだ抗うのか、なるほど持ってきて正解だな」
ベテラン冒険者となるといくつもの隠し玉や魔法具を持っていても不思議ではない。
そういう駆け引きには慣れていると言って良い。
リリアナの体をまさぐりながら、手に持っていた魔導書を取り上げ魔法で火トカゲ、サラマンダーを呼び出した。
「なんだ、それほど高価な魔導書では無いな、フン!」
「…」
「それじゃこっちはどうかな?小娘にしては顔はまあまあだな、他は どうかな~」ニヤッ
「ブーブー」会場のブーイング
「うるさい! 仕方ない、もう少し遊んでやろうと思ったが終わらせるか…」
(そろそろかな)
「これで終わりだ!」
「フ フフフアハハ」
「な 何がおかしい!」
「あ~ おかしい、姫様の言った通りだったわ」
「は?」
「くたばれ ごみむし!」
相手が油断するのを待っていた、そしてマーシャが常に言っていたことを思い出し、彼女はそれを実行に移した。
吸われたのは魔力、そして体の動きを奪われたのだが、リリアナは冷静に分析していた。
何が首筋にいるのか、それが何を欲していて、どうすれば解除できるのか。
魔力は確かに阻害された、だがしびれた体は回復魔法とガード魔法で冷静に対処した、相手が近寄って来た時にはすでに問題なく動けるようになっていたが、相手に一番インパクトを与えられる時を待っていた。
「魔法が使えなくなったとき、その身に体術を身に着けておけばいざという時に使えるじゃろう、特に女子は体術を覚えておけば暴漢から身を守るのもたやすい、チームマーシャでは全ての武術と魔術を勉強するのが当たり前じゃ」
剣術は今までもそれほど身に着けてはいないが、魔法が使えなくなった時の事を考えて体術は2つ、フィジカルマイスターとバトルマイスターを取得している。
防御魔法で強化した拳を目の前の男に叩き込む。
「ズガン!」
この場合の点数は半減するのだが、それまでの攻撃点数と、そして正拳突きがもろに入り男は隔壁にたたきつけられ、そのまま地面に崩れ落ちた。
「勝者79番 リリアナシュナイダー!」
魔法の試合だと言うのに正拳1発、はたから見ると反則のように見えるが。
その前にゼトルがリリアナの体を良いように触った時点で、試合を見ていた女性陣から反則ではないかとの声が上がり。
ゼトルからの物言いも不発におわった、さらに希少動物を使った反則がゼドルの方にあったことが分り、リリアナの勝利は確実となった。




