王都セリア
王都セリア
田舎出の衛士や獣人冒険者達が夢にまで見る王都、魔法を使用して得られる王都の情報は2千k離れた田舎町にも大きな変化をもたらす。
農業や工業、そして漁業と言った産業にも王都で開発した魔法器具などの情報はやって来る。
一部の情報を除くと爵位を持つ者達による税の収得を上げられるような技術のほとんどが、転生者の持つ情報からと言って良い。
但し、どの貴族が転生者なのかはそう簡単にわかる事ではない、たまにマーシャやアマンダのような転生者がいたとしても、貴族や王族のすることなど難しすぎて一般市民に分かることでは無いからだ。
だが、王都にはそう言った技術があふれていることで、地方から出て来る若者にとって王都は憧れの地でもある。
「着きましたね」
「あーしんどい、乗合馬車に2日乗ると尻が青くなるってホントだね」
「鍛え方次第では?」
「あんた よく平気だね」
「気合です」
2日かけて30組の大会挑戦者が王国北部からはるばるやって来た、一つの馬車に10人ずつ。
合計4台の馬車に分乗した冒険者達だが、このキャラバンを襲う者達は全て粛清された。
途中の町ではそういう輩(山賊)を地方の衛士隊へと差し出し、少なからず小遣いを頂くことも有ったが。
Bクラス以上の冒険者が20人以上いるキャラバンにとって、山賊などは魔狼やゴブリン以下と言って良い。
「それでは大会参加の冒険者は付いて来てくれ、契約している宿屋を教える」マット・ゴーエン
30組40名の参加者、王都の参加者以外は4つの地区で契約している宿屋が決められている。
北部の地区はポブルート侯爵とコールマン公爵が運営する宿屋に滞在するよう仰せつかっている。
宿屋を2つに分けるのは男女別々にするためだ、参加者の男女比率は男子の方が多い。
ペアは10名ずつだが武術の部も魔術の部も7割が男性だった。
「男どもは俺についてこい、こっちだ」マット
「女子はこっちよ」ニキ・ファルコン
他の地区から来る挑戦者たちもそれぞれの宿屋へと宿泊しており。
女子の泊まる宿屋は今回西地区の冒険者達と同じ宿に泊まると言う話だ、その人数は30人以上。
まあ男子の泊まる宿よりは少しグレードが高かったりする、要するに荒くれ男どもにはあまり高い宿はあてがわれないようにしている。
酒を飲み暴れる奴らを高級な宿へと泊らせてしまうと後で修理費をいくら請求されるか分かった物ではない。
「俺達はこっちだ」
そこは大衆的な宿屋であり、1階は食堂と飲み屋を兼ねている。
1階の奥へと行く通路からさらに先へ行くと他にも2棟、長屋作りの宿が見える。
「大会に参加中 俺たちはここを使用する、くれぐれも宿を壊したりするなよ!」
「もしかして宿泊は無料か?」ジャング・コーラ
「ああ侯爵様から支援金が出ている、だが飯代はちゃんと払えよ!」
「分かっている」シン・ルドナー
殆どが武術専攻の男子だ、魔術の部に出場する男子は6人武術の部は8人そしてペアの部の男子が10人。
この割合は他の地区でもさほど変わらない、冒険者の男女比もおのずと比率は男子の方が多いことになる。
「私たちはこっちよ」
男子とは違い少しグレードの高い宿へと連れられてきた16人の女子。
中にはすでに女子とは言えない妙齢の女性もいるが、あえてひとまとめに女子というくくりにしておこう。
当然のことながらペアで出場している者の半分は既婚者であったりする。
中には子供を実家の家族に託し出場を決めたカップルもいるので、殆どの者が一攫千金をもくろんでいるのは間違いない。
「あんた今日はこれからどうするの?」
「宿が分かれば今日は姫様に会いに行くわ」
「姫様?」
「マーシャ様よ」
「マーシャ様って第三王女?伝説の剣姫様?」
「…伝説ではないわ、まだ姫様は8歳です、健在ですよ」
「なんで貴方が?」
「私は姫様に助けられたのよ」
「へ~」
「そういう事だからまたね」
「えっ…」
部屋にはマールン一人が残された、一応各地方で割り当てられた部屋。
食事は別料金と言う事で、宿には寝に帰るかもしくは水浴びで体を清潔にすると言うのが宿を使う理由だ。
一応この宿はコールマン公爵家が大会中の選手の宿舎として利用できるようにしたらしい。




