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転生した王女はとんでもなかった(天使の過ちは丸投げです)  作者: 夢未太士
第4章 武術&魔術大会
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北部地区予選会場

北部地区予選会場


まずは予選会場となるホブルート侯爵領アルバ町を目指す2人。

予選トーナメントでは合計30組の本戦出場権を決める、予選では各クラスの出場権をかけ熾烈な争いが繰り広げられるだろう。

田舎の事だ、お宝目当てに出場するのだから足の引っ張り合いなどがあるのは当たり前。

予選会場へ向かう道中でさえ何があるかは分からない。

ジンジャー子爵から道中で使ってくれと一人頭金貨1枚を受け取り、2名はアルバ町を目指し旅に出る。


「ララちゃんは馬車より自前の足で走った方が良かったんじゃない?」

「そうしたいのは、やまやまですが、2名で行くと言った以上勝手に別行動という分けにはいきません」

「そうなのね、もしかしてあなたは頭が硬い方?」

「防御はかなり硬いですね」

「そういう意味じゃないんだけど…」


ボロウロアの町から乗り合い馬車に乗り約2日、途中経由する町は4か所から5か所。

夜は当然のことながら運行しておらず、午後6時の時点でその町に宿泊する形になる。

宿泊は大抵銀貨1枚から3枚で食事と水浴びがついている、中には宿代のみと言う場合もあるがその場合は安い飯屋を紹介してくれたりする。

そうやって二日が経ち、北部領の予選会場であるアルバ町までやってきた二人。

道中では今のところ何の問題も無かったが、この町からは足の引っ張り合いは覚悟しておかなければならないだろう。


「やっと着いた~」

「まずは冒険者組合です」


定期運航の乗り合い馬車の停留所から町の中心街へと歩いて行く、中央広場に面した数軒の建物の中に冒険者組合(別名:仕事斡旋互助会)がある。

かの10傑が作った相互助け合いのシステム、今回の大会情報はこの組合を仲介して各地に交付されており、出場の手続きもここで行う。

看板を見る限り、ここが冒険者組合で間違いなさそうだ、中へ入ると受付が見える。

右側のボードには数枚の紙が貼られていた。

そこには仕事の内容が書かれた紙が有り、冒険者の等級により受注可能な仕事を請け負う。

大会出場の枠は既に決められており、到着順ではあるが組合にもそのデータは記録される。

ちなみに王都以外の地方出場者は全員が冒険者組合登録者だ、そうしないとどこの誰だか出自をいちいち確かめねばならず、魔王国のゲリラや他の国の間者が交っているかもしれないからだ。


「組合登録証を拝見します」

「どうぞ」


会員証=タグだ、形状は丸くチェーンが付けられている、ポケットにしまっておくのも首から下げるのも自由だが。

紛失すると金貨5枚の再発行料がかかる、初期発行料は銀貨1枚なので再発行は40倍の出費と言う事。

タグには魔法がかけられており、個人データと組合を経由した物品売買の入出金の記録ができたりする。

大きさは3センチほどの円形で中央に魔石が取り付けてあり不壊の魔法がかけられている。


「それではここにご記入ください」


受付の人間がそう告げる、既に北地区の予選トーナメントはほぼ埋まっておりサインすると自動的に予選トーナメント表に自分の名前が加わった。


「あたしが先か…」マールン


どうやら10組を選出するのに必ず2試合行う事になるらしい、10人でトーナメント次は5人となりさらに3人になる。

2回目の試合が無かった者は他のトーナメントの端数を待って試合をする。

そうやって10組を算出すると言う、既に予選は始まっていた。


「魔術のD ブロックです、本日の23試合目なので後数分で始まります」

「すぐ試合ジャン」

「会場は何処です?」

「こちらを奥へ進むと組合の訓練場が有ります、そこへ行けばわかりますので」

「行きましょう」


組合事務所の廊下を奥へと入って行くと解放されている扉の向こうから歓声が聞こえて来る。


「オー」

「イケー」

「そこだ!」


怒声や歓声が会場を埋め尽くす、ここはアルバ町冒険者組合の訓練場、広さは50メートル四方。

一応観客席のようなものまであり、40人近い冒険者が観客席を埋めている。

会場の隅から入って行くとどうやら今は武術の試合を行っている様子。

壁に掛けられたトーナメント表を見ると、現在の試合は武術のCブロック第4試合と言う事になる。

試合から次の試合までの間隔は10分程度らしい、しかも3種ある試合の順番は組合登録している挑戦者の到着順なため、運が悪いとすぐ試合になる、まだ相手が決まらない場合は結構待つことになる。


「わー」

「勝者バグ・オージー」

「オー」

「次は魔術Dブロック第3試合サージュ・コリンVSマールン・キュラーソ」


試合会場の広さは100メートル四方の踏み固められた土のグラウンドだ。

周りの観客席もグラウンドも壊れないように魔法がかけられている、もしそれでも壊れるのなら相当な力の持ち主と言う事。


「よし いったろか!」

「ほどほどにね」ラランカ


相手の魔法師はどうやらどこかのお抱え魔法師と言ったところ、年齢は40歳を超えているのではないだろうか?だがマールンは獣人族、それも魔法を得意としている羊獣人ようじゅうじん

獣人の持つ特性は元の動物に由来する、虎や熊はちからが強くウサギやネズミは足が速い。

そして羊や牛の獣人は動きは遅いが魔力を体に溜め込みやすい。

全てがその法則とは言えないが、概ねそう考えて間違いがない、ほぼ血液型に似た考えだが。

そして獣人族も2種類いる、一つは人族の因子を持つ獣人 もう一つはエルフ族の因子を持つ。

彼女はエルフ系の因子を持つ獣人だった。


「はじめ!」


実は地方予選には積算魔法などと言うハイテクルールは導入しておらず、ほぼ肉弾戦になる。

勝つためには、相手を気絶させるか又は致命傷を浴びせる事、もちろん負けを宣言するもしくは宣言させるのもありだ。


「行くぞ、汝の力を顕現せよウィンドカッター」

「ピュルウルリー(高速詠唱)いけ!」


マールンが高速詠唱で解き放ったのは水魔法、もちろんマーシャと同じようにストレージ魔法を使用した攻撃魔法、ストレージから3百リットル近い水を一気に圧縮し風魔法を押し切る勢いで相手のサージュめがけて解き放つ。


「ウオー」

「バッシャーン!」

「ドン!」


勿論グラウンドは水浸しになり、相手のサージュはもろに3百リットルの水を受けて真後ろに吹き飛ばされた。


「ポトポト…」水が滴る

「勝者マールン・キュラーソ」

「どんなもんじゃい!」


どうやら言葉使いはあれだが、彼女はかなりの使い手らしい、もちろんこの先ラランカも負け知らずで、2名共に予選を勝ち抜き無事北部地区から出場する30組の中へと勝ちすすんだ。


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