終わったのは午後6時過ぎ
終わったのは午後6時過ぎ
結果として途中で休むなどと言う事は無く、事前審査は粛々と行われた。途中耐え切れなくなって雄叫びを上げる者も何人かいたが。
マーシャが最初に対応したことで次からは将軍職がすぐに動くことになり。
約14名の不名誉な退場者が出た以外は、危惧するような問題は起こらなかった。
そして最後に近づくと王族7名が審査に現れた。
「おお もう終わりそうだな」王様
「父上わざわざお越しいただき恐縮です」リカルド
先に事前審査を終えたリカルド、父が来ると判っていて会場に残らないわけには行かない。
それに、時折しゃしゃり出てはいるがマーシャも黙って事前審査を見ているのだ。
「うむ 王でも同じ場所から始めなければ参加するにも気が引けるというものだ」
「いえいえ、王様そのようなことはございません」グラムス将軍
「そろそろ出番の様だ、私から受けよう」
「はっ!こちらです」カッツオ副官
王様に続き王妃様、そして第一王子のカイルそしてペアを組んだブレンダ。
続いて第二王子のトラムとリンダが次いで審査を受ける。
「フン!」
「ドバン!」
「おみごとです」ジョリーン将軍
王様の使用しているのは王家に代々伝わる大剣エルグラムSクラスSタイプ、刃渡り1メートル20センチ刃身の幅は22センチ重量70k。
身長190センチの王様だから振るう事ができるのだが、それでも扱うには重量軽減の魔法具が必要となる、但しそうすると威力が小さくなるため土人形が爆裂するような砕け方はしない。
土人形の壊れ方を見ればその膂力がすさまじい事がすぐわかる。
魔力審査の方では第2王妃が手に持った杖から電撃魔法を土人形に向かって解き放っていた。
「汝の敵を打ち払え、サンダーランス!」
「バリバリバリ!」
勿論こちらも見事に土人形が砕け散った、雷撃の魔法は一応複合魔法なので風魔法と土魔法を使えないと使用できない。
簡単に使用するのなら魔法石に電撃魔法を貯めておくようなシステムを利用する形になる。
多分手にもった杖には雷撃を放つのに有利な仕掛けがあるのかもしれない。
「あら、このぐらいで壊れるのね」第二王妃
「すばらしい」シュローダー将軍
「あまり褒めないでくださいまし、照れますわ」
一応マーシャの母親は普段、第一王妃の手前口数も少なく、ほんわかしているように見える。
だが、やはりこの母にしてこの子在りと言う所か、後ろでは第一王妃が第四王子のミシェル(1歳)を抱いている。
「ベロベロバー、お母さまチュゴイですね~」
「ウアアウバ…」
「王妃様お久しぶりです」アーリョワ将軍
「ほんと、久しぶりね」
「今回王妃様は出場なさらないので?」
「ペアですもの、妹の方が適役ですし、私は負けず嫌いですから~」
「そ そうでしたね…」
第一王妃は元シュバリオール公爵家の長女であり50年前10傑を率いて魔族と戦ったリーダー、ダリル・シュバリオールの娘だ。
現在公爵家は長男のバリル・シュバリオールが後を継いでおり、王都から500k西のシュバリオール領を運営している。
「次は私か」カイル
カイルも王様と同じく大剣を使用している。
大剣バルザス:2AクラスBタイプ、魔力で切れ味アップ、刃渡り119センチ幅25センチ重量77k。
南方ザンキアナ共和国原産の青魔鉄鋼から作られた大剣、刃の部分以外は青く焼き入れたように光を反射する。
魔鉄で作られた刃物は振るう者の魔力により切れ味が増すと言われている。
王様の剣より1センチほど短いがAクラスの大剣であり、刃の幅はこちらの剣の方がやや広いが破壊力はどちらも同じぐらい。
「フー ズシャ! バシュン!」
「ズドン!」
土人形を前にして正面に構えると、一度大きく円を描き頭上へと剣を突きあげ、そして足を踏み込むと同時に体重を一気に大剣へ込める。
カイルの振るった大剣は土人形の頭だけでなく胴体をも破壊した。
「オー」
隣ではカイルの正妻となったブレンダが土人形に対して土魔法を放つ。
「汝の力を集約し、目の前に現れたる敵を粉砕せよ、キガントロック!」
頭上に上げた両掌の上に魔法で土や石を集め、圧縮した後に土人形めがけて放出する。
だが彼女が作り出した石、いや 岩の大きさはかなり大きい物だった。
「ズズズン!」
「ブレンダ・マーキュリス様、審査通過です」
「まあ当然ですわね」
剣術の方は次にトラムがクラールダンジョン攻略で手に入れた剣を使い、土人形を真っ二つに切り裂いた。
この剣はダンジョン攻略の時いつの間にかドロップしていた剣だ。
マーシャが250層から帰還した後、全員にそれまで保存していたレアドロップの数々を配った時に渡したお宝、その中の一つである。
Aクラスの剣ではあるが、その後マーシャはトラムに頼まれてこの剣に付与魔法を追加した。
現在はAクラスSSタイプの剣に仕上がっている、切れ味と修復に+40の付与アシストがついており、使うごとに自身の剣術熟成度に1.5倍のアシストも付く。
「私で最後ね」
魔術の部では順番が最後になったリンダが土人形から10メートルほど離れて構えていた。
ダンジョン攻略の時は見せなかった、いわゆる放出系の気弾。
前の世界でならアニメでよく見たカ○○○波とかいう種類の攻撃だ。
「我が拳に全身全霊の力を込め、目前に現われたる障害を打ち砕かん、バーストナックル!」
その手はよく見る両手のひらを前に出すのとは違い片手は握りこぶしのまま。
リンダがそう唱えると拳の部分が輝きだし、次の瞬間その光が土人形に向かって飛び出した。
「バガン! パラパラパラ…」
「おー」
「リンダ・タム・ローラン様、審査通過です」
これで全員の事前審査が終わった、武術審査で167人魔術審査は212人、その中からペアに出場するのは75組なので剣術の部は91人になり、魔術の部は137人と言う事になった。
翌日からはさらにこの人数を10組ずつ3種目合計30組にまで減らすトーナメントを行うが、王族は残った出場者が半分になってから試合に出場する形になる。
要するにメインイベントにするわけだ、それに市井の冒険者とでは実力に差が付き過ぎており。
このまま王族もトーナメントに一般参加と同じように試合を組むと、その試合は秒で終わる事は間違いない。
但し、通常の剣術の部や魔術の部は今回王族が不参加となった為、こちらは貴族の独壇場となる可能性が出て来た。




