ブレンダ・マーキュリス
ブレンダ・マーキュリス
月曜の朝、試合に出場する者も出場しない者も、いつもの朝を迎え朝食を取りに寮の食堂へとやって来る。
朝食の時間は王族であっても時間はまちまちであり、決められた時間などはない。
「マーシャ様、本日は8時半に武術会場である第一試合場へとお越しください」
そう伝えに来たのは城小父であるミッキー・コートウィル、ロウィナの遠縁だったりする。
「何だ?妾だけか?」
「何でも大会の運営を任されたアンドルトン伯爵様からマーシャ様には審査員をしていただきたいとのことです、もちろん王様からも審査員についてはマーシャ様に頼むようにと許可も出ております」
「何じゃと!」
「マーシャ様声が大きいです!」フラン
まあ昨日の内にマーシャは試合へ出る事は辞退しており、仲間の試合の応援をしようと思っていた所だ。
だが審査員では話がかなり違ってくる。
これではチームマーシャの試合を全部見ることなど出来なくなってくる。
「断れないのか?」
「王様からの指令書なので、多分無理ではと…」
「分かった8時半だな」
「有難うございます、それでは私はこれで」
「あらら、しょうがないですね」カユーラ
「そうなるだろうと思っていたぞ」ダーラ
「でもこれで誰にも贔屓できなくなりますね」フロウラ
「もとよりそのつもりはないが、相手がチームマーシャと王族でなければ、応援ぐらい自由じゃろうに…」
朝食を取りながら雑談をしているとそこに、見慣れない服を着た女性が現れた。
「おはようございますマーシャ様、私 ブレンダ・マーキュリスと申します」
その姿はすぐに王国の東の領であるマーキュリス伯爵領の服装だと判った。
「先日私の使いの者がお手紙を差し上げましたが、お読みいただけましたでしょうか?」
「うぬ読ませていただいたが、既にオートクチュールのバトルドレスは数着注文が入っておる、今から採寸して着手しても出来上がりは10日後になる予定じゃ」
「かまいませんわ」
「それと製作費は最低大金貨50枚以上じゃが、それで構わぬか?」
「大金貨50枚以上!」
「我が姉のアマンダ第一王女はそれ以上払ってでも作成したいと申された、そうなるとそれ以下はあり得ぬ話になる、それでもかまわぬか?」
「く~」
(ぼったくりかよこのガキが、どうにかして安くできないものか、しかたがない魔法で虜にするしかない!)
「チャーム!」
「無駄じゃ!」
「え?なんで?」
「おぬし妾にそのような低級魔法が通じると思うとったのか?」
「なんで?」
「マーシャ様は武術も魔術も学院一位です、そんな最下級の魔法にかかることなどありえませんよ」リリアナ
「まあ、それでもカイル兄さまの妻となった女性じゃ、ドレスを作るのは難しいとしても今まで作り溜めたバトルドレスでよければ貸さぬこともないが、どうする?」
「も 申し訳ございません、お許しください」
「分かれば良い、別に兄上を嫌っておるわけでは無い、おぬしの考えも分からなくもないがこすいやり方は妾も好かぬ、王族全員にドレスを貸し与えておる手前おぬしにだけ貸さぬ訳には行かぬからな」
急遽食堂から出るとマーシャの部屋へと行き、作り溜めておいたドレスから試着をさせることになった。
まさか相手がマーシャだと言うのに低級魔法で魅了させてしまおうとか、相手の事を知らなさ過ぎだ、考えが浅はかすぎる。
「うむこのドレスで良いようじゃな」
「あ 有難うございます」
「礼は良い、レンタル料は一日大金貨1枚じゃ」
「え?」
「当然じゃ、王族全員支払ってもらっておる、王様も王妃様も然りじゃ」
そう言われてしまえば自分だけ無料などという話など出来はしない、まさか自分の魅了魔法が効かないとは思っていなかったブレンダ。
当然のことながら手持ちの資金はレンタル料だけで底を着く、結果としてバトルドレスだけでインナーも武器も買うどころか借りることなど出来なくなった。
「そ それでは失礼いたします」
(懐が…)
「バタン」
「全く図々しいにも程があるな」
「そうですよ、追い返しても良かったのでは?」
「そうすると兄上から文句が来てしまうのじゃろう」
「たしかに…」
「おっと、もう8時過ぎたな」
「そういえば私達も事前審査に行かないと…」
「まあおぬし達は事前審査で落ちることなど無いと思うが、油断は禁物じゃ」
「はい姫様」
「はい マーシャ様」
リリアナとフラン、そしてダーラは魔術大会の部へ、いつの間にかカユーラが武術大会の部へ申請していた、マーシャは従者全員を伴い事前審査会場へと向かって行った。
そしてこの後マーシャは何時の間にか審査委員長となってしまう。
(なんじゃとこれでは全く見て回れぬではないか…)




