クロイス&シロナ
クロイス&シロナ
クロイスは魔王国の現王妃の一人息子、マーシャの事は現王妃も口を噤んでいるらしい。
確かに本来ならば敵国の第三王女、しかも7歳のマーシャにやられたなどと言ってしまうと自身の威厳も保てやしない。
そのお陰で第三皇子はマーシャに敵対心を出すことなくダンジョン攻略の時も素直に言う事を聞いてくれた。
現王妃も裏で姑息な手を使うより今は息子の成長を待つことを選んだようだ、現王妃のスルべリア・コーパス・ウェザラードの胸にはまだマーシャの聖印が残っている。
マーシャの聖印は魔王も了承の上であり、そのおかげで現体制の転覆をもくろむ魔族も王妃の殺害などできない状態だ。
聖印の効果で半ば不死属性を得たと言って良い王妃、だが彼女はいつかマーシャを亡き者にしようとチャンスを伺っている事だろう、負けたとはいえプライドの高い現王妃の事だ、いずれ手段を選ばず反撃に出て来ることもあり得る。
「それでクロイス様は魔法の方は?」
「一応神聖魔法以外は全て使用可能だが、今は闇魔法が一番レベルが高い、他はレベル5ぐらいか…」
「それならば私と組んでも足りない部分は補え合えますね」
「シロナ殿はダンジョン攻略の時はいませんでしたよね」
「はい 私がマーシャ様を勝手にお慕いしているだけなので、直接お会いしたのはこの舞踏会が初めてです」
「そうなのか?それなのに、何故マーシャ様はこんな命令を?」
「私を試すためではと思います、まだ知り合って2日ですので、私がどのような考えを持っているのかもマーシャ様にはわかりませんし、魔法もそうですが私の戦い方もご存じないと思います」
「と言う事は君にとってはこのペアを組んでマーシャ様に自分の存在を見せつける良い機会だという分けか…」
「はい そう考えて差し支えないかと…」
「まあ私も似たようなものだ、ダンジョン攻略で助けてもらってまだひと月と少し、あれから少し神聖魔法も勉強することにしたが、闇魔法を専攻していた私には勝手が違い過ぎる」
「そのようですね闇魔法はマナ(気の力)を暗黒側に振らないと集めることが難しい、その反面神聖魔法はできるだけ喜びや慈悲のマナを集めることに集中します、真逆なマナを自分の中に集めるのは至難の業です」
「君は、闇魔法の訓練は?」
「一応しておりますよ、でも闇魔法のマナを集める訓練は少し魔族の方とは違うような気がします」
「それはどういう風に?」
「私は闇魔法のマナを集める時に怒気を使用します」
怒りのマナ、暗黒系の魔法は邪気や恨気総じて暗気(闇気)と言う、を集める事で使用可能にする場合が多い、だが怒りのマナもそれに近いため神聖魔法の使い手が闇魔法を使用する時はそちらを優先することが多い。
魔族でも常に邪気のマナを持っているわけでは無く、肉体的精神的に聖気や生気よりも邪気の方が集めやすいと言うだけだ。
但し、あまり暗黒系に精神の集気を特化してしまうと自分自身の行動もそちらへと浸蝕されてしまう。
だから暗黒系の魔法を会得する場合、他のマナを使用する魔法も習得しないと精神を邪悪な者に乗っとられてしまう事がある。
怒気と言うのは一番融通の利くマナだ、怒りは何物にも代えることができ、全てのマナ(気の力)の源でもある。
魔法力をただ取り出すだけでは威力はさほど増すことはないが、怒気を混ぜることで数倍にも魔法力を上げることができたりする。
喜怒哀楽はそれぞれマナを練る時にブースターの役割を担ったりもする、魔法を使う時に何を込めるのかは魔法師のメンタルにもよるが、魔族の場合は手っ取り早く邪気を使い魔法を練る事が多いようだ。
「怒気か…確かにそれならば邪気よりデメリットが少ない、分かったこれからは怒気も少し込めて訓練してみよう」
「はい」
「ところで君は人族にしては発育が良いようだね」
「な なんですか いきなり!」
「ん?まずかったか?」
「そういう事はレディの前で言ったり聞いたりしては、いけません!」
どうやらクロイスは少し天然の様だ、今回はドルチェが側付きとして同行していないので、そういうことを逐一チェックしてくれる異性がいない。
まあ少しクロイスはマザコンの因子も持っていたりするので、女子に話してはいけない禁句の類は教えてもらっていないのだろう。
なにせ現王妃はクロイスを次期魔王として育てようとしていたのだ、そんな下々が気に掛けるようなことなど教える必要は無かったはずなのだから。
話し合い、そしてお互いの能力を知りペアとしての意気込みを高め合う。
3組は急遽そういう事になったのだが、確かにこの組み合わせはバランスが取れているので、試合に出れば中々面白い戦いを見せてくれるのは間違いないだろう。
勝つか負けるかは結果を見ない事には今この時点で測ることなど出来ないが。
本戦が始まれば白熱した戦いが繰り広げられるのは間違いない。




