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夜は長そうだ

夜は長そうだ


アリシアの対応が終わり、少し疲れ気味のマーシャ。


「アリシア様いつもよりおとなしかったですね」フラン

「アマンダお姉さまの手前あまり強くは言えなかったのじゃろう」

「姉妹でもかなり違うようじゃな」ダーラ

「ああ アリシア姉様もアマンダ姉さまも腹違いじゃからな」

「そうなのか、なるほどのう」

「さて このぐらいで今日は終わりとするか…」

「はいマーシャ様」


既に夜9時近くになり、寮の門も閉まる時間。

作業道具を次々にストレージへと収納し、メイド従者4名は学生寮からメイド館へと帰って行く。


「それでは私も」リリアナ

「本日はご苦労様であったな」

「いえいえ、中々楽しめました」

「楽しいことなど有ったか?」

「ええアマンダ様の色んな表情やマーシャ様との関係が分かりましたので」

「そうか?」

「私もあのような姉がいたらもっと幸せになれるかもと思いましたので」

「ほー だがアマンダとリリアナは同じ歳だったはずじゃな」

「あの方は多分 歳以外は私より上なのでしょう」


リリアナはその知識や経験でアマンダが自分より上なのではと言う事は感じている。

同じ魔法を学びその力を研鑽する同年代の王女、マーシャもそうだがその王女を調べないわけがない。

今回武術魔術大会では部門が違うので試合で相対することは無いのだが、もし魔術部門の方へ二人が出場していたならば、かなり面白い試合を見ることができただろう。


「それでは失礼いたします、明日は朝7時にお迎えに伺います」

「有難う おやすみ」

「お休みなさいませ」


マーシャの部屋にはフランが同室しておりリリアナは別のルームメイトと同室している。

マーシャとフランがベッドをストレージから出すとシーツを整え、これから就寝しようとしていた所でマーシャの元へ魔法の通信が入った。


【助けて!】

「これは カチュアか?」

「姫様どうしました?」

「カチュアから通信が入った、少し出かけて来る」

「え~」

「騒ぐな いつもの事じゃ、すぐもどる このことは内緒じゃ」

「分かりました、あまり危ないことはしないでくださいよ~、後で私まで怒られてしまうのは勘弁してください~」


マーシャが強いのは分かっているがだからと言って、アクシデントでマーシャが怪我をしようものなら従者として責任を問われるのは当然の事。

まあそれでもマーシャを止められないのだから、見て見ぬふりをするしかない。

後は無事マーシャが帰って来るのを祈るばかりだ。

先ほど着替えたばかりのネグリジェを脱ぎ自作のバトルドレスを身に着ける。

既に辺りは真っ暗になっており、空には雲が時折 月を遮って行く。


「参る!」

「バサッ!」


2階の部屋から飛び降りるとあっという間に塀を飛び越し夜の街道を走って行く。

カチュアに預けた髪飾りには強く願うとマーシャに通信が入る魔法がかけられている。

皇子や皇女ならばさほど問題は起こらないと判っているが、カチュアにはマーシャも初めて会った、しかも彼女は奴隷階級。

それにロキシーやマリオス達が彼女の事をあまり知らないのが気になった。

ハンクル・ジョーバリン魔公爵が何をたくらんでいるのかは分からないが、奴隷階級の少女をよこしたのには理由があるはず。


「確か迎賓館の宿泊施設に泊る予定だったな…」


魔王国から来た来客は迎賓館の横にある宿泊施設に泊まることになっている、既に2泊しているので問題など無いと思っていたのだが、それは時期尚早だった。


通信が入った宿泊施設に着くと、カチュアだけでなくロキシーやマリオス達もそこにいた。


「ゴアー」

「なんだ、気が狂ったか!」

「ロキ、近寄るな 危ない!」

「ですがこれは なんで?」

「コロス!」


魔王国から来た4人は魔法でようやくカチュアを捕縛している状態だが、その力は強く今にも魔法が解けてしまいそうだ。


「なんだ、こいつ!」

「衛兵は!」

「おかしい、王城警備隊も来ないぞ」

「グラビティロック!」

「だれ?」

「後は妾にまかせよ!」

「マーシャ様!」

「グアー」

「マジカルフリーズ」


目の前で苦しみもがくカチュア、そこにマーシャの魔法が次々に襲い掛かる。

まずは動きを止めそして確実に動かなくする。

さらに彼女の体に巣くう契約魔法と、呪いともいえる魔法の数々を解除する。


【だれだ!邪魔をする奴は!】

「あ~その前にお前の方こそ名乗れ!」

【くそ!】

「サーチング ルーツ」

【何をするやめろ!】

「ほう そうかハンクルの兄弟か」

【どうしてそれを!】

「魔法って言うのはな 使った奴の気が残るんだよ」

【まさか】

「そのまさかだ」

【お前が第三王女か!】

「そうだと言ったらどうする?」

【こロス!】

「どうやって?もうその体では無理だぞ!」

【う 動かん】

「そろそろ解除するか、後でお前はお仕置きしてやる覚悟して置けよ!」

【くそー】

「汝の契約を我が力を持って解除する、キャンセル ア コントラクトオブオール」


カチュアの体を乗っ取り操っていたのはハンクルの兄弟、兄弟と言っても彼らには生まれと言う概念が少し違うようだ。

カチュア自体はハンクルの遠い孫で間違いないが、彼女を操っていたのはグラッダ・ヴェノム・ジョーバリン、そしてハンクルが血を分けた兄弟、いわゆる血縁と言う立場。

今回は直接ハンクルが命令したわけでは無く、グラッダの独断による計画の様だ。

昨年マーシャはハンクルと剣を交えた、彼はいわゆる脳筋に近い。

自分の力がまだ魔王に及ばないことを知り、現王妃の策略を利用し魔王の座に就く計画を立てた。

それには魔王の子供らも邪魔になる。

まずは邪魔者を排除しようとする王妃の策略に加担することで、魔王の力を配下からそぎ落とす。

その後は王妃もその子供も排除できれば後は魔王一人、配下や王妃を失った魔王の隙を伺い勝負を持ちかけると言う算段。

だがマーシャと戦い彼の力では単独で立ち向かうのはよほどうまく立ち回らなければ無理だと言う事が分かったはず。

多分彼は今A級ダンジョンへと挑戦している頃だろう、吸血鬼の長として力を付けるためにマーシャの言った事を実践しているに違いない。

確かに不死者は肉体的な成長は無いと言って良い、だが精神的な成長や戦いにおいて身に着けられる経験は彼ら不死者であっても積む事は可能だ。

自らがそれを実践しているのに小さな小細工を誰かに命令するなどとは思えない。

従ってこの策略はグラッダが単独、もしくはグラッダと同じようにこざかしい策を要することを思いついた魔族が背後にいる事は間違いない。


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