久々の登場
久々の登場
7時半を廻り寮に併設された食堂へとマーシャはメイドと使徒を引き連れてやって来る。
既にアマンダが席に着き、お付きのメイドと食事を摂っていたのだが、その隣には第2王女のアリシアが座っていたりする。
いつもなら第一王女やマーシャを避けて食事には時間をずらして来ていたりするのだが、今日は少し様子が違っていた。
アリシアには他の王女が食堂へ来ている時間帯に、食堂へ来なければいけない理由が有ったのかもしれない。
「来たわね、マーシャ」
「お姉さまもいらしたのですね」
「ええ、貴方にお話が有ります」
「何でしょうか?」
「アマンダお姉さまにバトルドレスを作るって言う話、既に私の耳にも入りましてよ」
そう言われてアマンダを見ると、済まなさそうな顔をして目を泳がせる。
(だって~しつこくてしかもうるさいんだもの~)
それは確かに耐えられないかもしれない…
「その事でしたか…」
「もちろん私にもそのドレス作っていただけるのでしょうね?」
「かまいませんが作るとしたらお姉さまのドレスは7日以降に完成となりますが、よろしいでしょうか?」
「7日後?」
「そうです現在第二王妃様のバトルドレスを製作中ですので」
「そんなにかかるの?」
「時間がかかるのがいやなのでしたら別に他を当たっていただいて構いませんが」
「くっ!」
「アマンダお姉さまからお聞きになったのでしたら、知っておられるかと思いますが…」
マーシャはそう言いながら?(はてな)と言うような仕草をする、別にアリシアのドレスを作りたくないわけでは無い。
だがあまり無理難題を言われても良い物が作れないのは確か、それにアマンダには製作費は言い値でもいいと言われているが、果たしてアリシアは製作費をいくらまで出せるのだろうか?
まさか無料で作れとは言わないと思うが、彼女の懐がそれほど潤っているとは思えない。
「オートクチュールは最低大金貨50枚以上いたしますが、お姉さまそれでも構いませんか?」
「大金貨50枚!それでも勝てるのよね!」
「それをアマンダお姉さまの前でおっしゃいますか?」
「あ そ それは…」
「かまわないわよ、勝負は時の運ですもの、ですがアリシアは私に勝つ気でいるのですね」
アマンダに勝つ、そして王妃様にも勝つ、その意気込みは悪くはないが。
アリシアの魔法バトル戦績は127戦69勝29分け、魔法学の順位は戦闘と学問を合わせると106位。
アカデミーの高等科に在籍している学生は1127人、そのうち魔法のみ専攻しているのは422人、そして魔術と剣術両方を専攻しているのは87人。
要するに509人中106位、それは決して悪くない数値なのだが、アマンダはもちろん一桁、シングルホルダーの5位。
そしてその数字は半年前に発表された物だ、マーシャは言わずと知れた不動の1位。
「ぐ~」
「少しお安くなりますが試作品もございますよお姉さま」
「それはいかほど?」
「一日大金貨1枚でのレンタルです」
「それでも大金貨1枚…」
「それと武具の方はどうします?」
「武具は…」
アリシアには一応廃爵された子爵家の娘の子と言う事で、亡き祖父が爵位を授かった時王様から頂いた杖と指輪が手元に有ったりする。
マーシャが作成した武具からはかなり性能が落ちるが、彼女はそれを使用するだろう。
「わたくしには母から頂いた命光の杖が有ります、ドレスだけで十分ですわ」
「では食事が終わりましたら私のお部屋でセッティングいたしましょう」
「分かったわ、後程行きます」
そう言うとツンと鼻を上に向けてお付きのメイドと取り巻き数名を連れ食堂から立ち去って行く。
「ごめんなさいね、マーシャ」
「いいえかまいません」
「まさか強引にマーシャの事を聞いてくるとは思っていなくて…」
「いいえお姉さま、これはいずれそうなると判っていたことです」
「そうなのね…」
「それより、これで王族5組は確実になりましたね」
「まだお兄様からは注文されていないのよね」
「まだカイルお兄様からは何も…」
「そうなるとお相手の女性はマーキュリス伯爵家のブレンダ・マーキュリスかしら」
「マーキュリス伯爵…枢機卿のカーマイン・コロンバン・マーキュリスの姪?」リリアナ
「そうよ今日魔族の子にチョッカイ出していた男の子の従妹になるわ」
「その方は?」
「アリシアはまだましな方よ、マーシャ気を付けて兄上はここだけの話だけど、彼女に垂らし込まれたのです」
第一王子である将来国王の后となる地位にいる3人の妻、その中でも一番上位にいるのがブレンダ・マーキュリス(27)。
長男を生んだことで次期国王の子の母親と言う地位にいる、他にも2名の妻がいるのだが。
一人は女の子を生み、もう一人は次男を生んだ。
爵位も一番上であるため、カイルとペアで試合に出て来る可能性が高いのはその女性だと言う事になる。
しかもブレンダは魔法、特に精神魔法の使い手だと言う事もアマンダが教えてくれた。




