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舞踏会後半

舞踏会後半


いつの間にかフロウラもダーラも舞踏会に参加しどこかの爵位持ちと踊っていたりする。

遠目から見ると竜人系魔族の身長に合う男子は少ないと言える。

ロキシーやカチュアならばマーシャより少し高いぐらいの身長なので普通の男子でも相手するのに問題はないが。

背の低い男子はダーラを見上げるような形になり片手は腰ではなく足やお尻に回すようだ。


「姫様も疲れましたか?」リリアナ

「いや疲れはしないがさすがに飽きて来たのじゃ」


水分補給のために用意されたテーブルカウンターに設置してあるグラスを手にしている。

そこには数人が一休みしに来ているが、会場では皆 慣れて来たらしく初めて参加する8歳児達も、今では相手を変えながら楽しそうに踊っている。


「ここにいましたのね」

「姉上!」

「ところで相談があるのですが…」

「なんでしょうか?」

「バトルドレスの製作を頼めないかしら?」


ようやくアマンダが接近してきた意図が見えて来た。

舞踏会が終われば月曜日から学院の訓練場や試合場を使用した武術大会の予選が始まる。

予選ぐらいではたいして問題はないが、本戦ともなればいつもの装備で勝てるのかという話。

既に王様からはペアで防具と武具の製作依頼が来ていたりする。

今回の武術大会ではマーシャの元に製作依頼が何件か来ていたりするので、自らが製作を行う武具や防具は限定させてもらう事にしている。

それはこれから多くの依頼が見込まれるからに他ならない、そういう事で一般貴族の武具製作依頼はリリアナやフロウラに回してある。

オープンしたてのブティックマルシャ―ルは開店してから1か月しか経っておらず、現在の受注は通常のドレスや女性物の下着がメインだ、武具の製作販売はまだまだこれからという所。


「かまいませんが…」

「できればマーシャ、貴方に直接作成してもらいたいの」

「期限は?」

「すぐにと言いたいところですが、本戦までにできれば有難いわ」

「10日間以内ですね、お姉さまのドレスだけで大丈夫ですか?」

「…フォルダンは多分私の進言を素直に受け取るとは思いません、多分お断りになるでしょう」

「それは何故です?」

「あの人は自分の力のみで勝ちたいと思うでしょう」


アマンダの眼がキラキラと輝く、彼女は男性がりりしく戦い、その結果生まれる勝利にある種の興奮を得ているのではと思われる。

確かにそういう嗜好性がある人はいくらでもいる。

マーシャの場合は自分が戦い勝利することに意義を感じているが、基本的には戦いその物には割と冷めた目で見ていたりする。


「それではお姉さまのドレスを一式ですね?」

「一式?」

「はい、ドレスと言ってもいくつかございます、まずはワンピースタイプと2ピースタイプに分かれます、さらにジャケットやガードコルセット、それに腰当や肩当などです、最後に靴もしくはブーツとなり…」

「待って、そんなに?」

「はい、一応全てオートクチュールになります」

「そうなのね、分かったわそれでも安い物よね」

「アマンダ様 武具はいかがいたします?」リリアナ

「私は杖もしくはオーブを使用しますが…」

「姉上、私が所有している武具でよろしければ少しお安くお譲りできますが?」

「そうね分かったわ、本日舞踏会が終わったらあなたの部屋へ行って相談させてもらうわ、いいかしら?」

「かまいませんが…」

「一応人払いをしてもらえれば問題ないから」

「かしこまりました、その時に採寸もしてしまいましょう」

「あなた本当にドレスメイカーになったのね」

「別にそれだけをするわけではございません、より美しく戦えるならその方が良いと思いましたので」

「ギュッ!」

「な 何を…」


いきなりアマンダはマーシャを抱きしめた、今まで少し懐疑的だったマーシャの立ち振る舞い大きすぎる魔力や物言い。

話していくうちにどうやら自分とさほど離れていない方向性を目指していることが分り、何故かその思いに感銘を受けてしまった。

勿論マーシャの持つスキルの力が少し影響しているのだが、マーシャもアマンダが抱き着いてくるとは思ってもみなかった。

(やっぱ第一王妃の遺伝子だわ…)


「いいわ、金額はマーシャに決めてもらう、それでいい?」

「は え! よろしいですが、後で高いとか申すのでしたら範囲を決めて頂いた方が…」

「足りない場合、次のダンジョン攻略にお供させていただきます」

「それは本当ですか?」

「本当よ」

「え~」リリアナ


どうしてそうなるのか、いやそもそもあれほどお互いを危険視していた二人。

各々の能力は人伝えで分かったとしても、お互いの本心までは見抜けはしなかった。

勿論この時点でお互いを転生者ではないか?と言う事はうすうす感じてはいても、それが本当だったとして自分の邪魔をする人間か、それとも味方になりうる人間かなど分かるはずがない。

特にマーシャは先日のダンジョン攻略で女神から敵となる転生者の存在も告げられていた。

敵の人数も人であるか魔族であるか、はたまた男か女かなど全く分からないのだから。


「アマンダここにいたのか?」フォルダン

「あ ごめんなさい、マーシャと少し話が有りましたので」

「少し踊ろう」

「はい 喜んで、それじゃマーシャまた後でね」

「はいお姉さま」


背の高い優男フォルダンと、大人の雰囲気をまき散らすまだ15歳のアマンダ。

何処から見てもお似合いなのは分かっている事。

だが婚約が白紙になったことでフォルダンもアタックをかける令嬢が増えてきている、それをようやく振り切りカウンターまで逃げて来たと言う所だ。

会場を見るとリカルドも次々と令嬢達のお誘いを受けている、しかも今はマーシャとは対角線場の場所に、なにやら令嬢たちのグループが彼を逃げ出さないように、まるで波状攻撃を掛けるがごとく、次々と手を取り自分の腰へと引き付けていた。


「あ~ 助けてやるか…」


そろそろリカルドを姦しい令嬢達から助けてあげようかと思った所で、またもやシロナがうまい具合にリカルドの手を取り、くるくると回りながら会場の中ほどへと移動する。


「あの娘は?」

「シロナちゃんですよね、あの行動力は見習わないと、ですね」

「そうじゃな」


まるでマーシャの先読みをしているような行動、もちろんそれがうまく行っているのならば問題はない。

但し、相手が危険のない者であればよいが、もし悪い奴らに対して彼女が立ち向かうようなことが有ればそれは別な話だ。


「あの者とも一度話さねばならんかも な」

「シロナちゃんも仲間にしちゃいます?」

「多分そうしなくともいずれそうなるじゃろうが、危険が迫る前に一度話はしておかないとな」


いつもならば試合やアクシデントを利用して仲間を増やすところだが、すでにマーシャ自体が有名になっているので。

わざわざ何か問題を投げかけ気を引くような事など既に無用となっている。


「姫様お手を」どこかの貴族

「お手柔らかに」


いつの間にか手を差し出され踊りながら、広い会場を縫うように移動して行く。

煌びやかな魔法の灯りと、カラフルなドレスが舞い踊る。

時折歓声が上がったりするが、それはフォルダンとアマンダが抱き合い顔を寄せる度に起こっているようだ。

さすがに彼ら2人は息がぴったり合っており、見つめる目と目がお互いの気持ちを現している。


「マーシャ様、お相手はまだお決まりになっておられないのですか?」

「私はまだ決めておりませぬ、ですが最低でも私と互角に戦える相手でなければお返事するのは難しいと思いますわ」

「戦い?」

「はい、私 剣術と魔術はマスタークラスを取得しておりますので」

「マスター‼」

「現在取得済なのは15個くらいでしたでしょうか?」

「15!」

「お 御見それしました、それではこれで…」


どうやら相手の貴族はまだ13歳ぐらいと言った所か、順当に進学していれば中等科の2年ぐらい。

もしかしたら編入組なのかもしれない、途中から学院に編入した場合マーシャの事をあまり知らない者が多く。

マーシャがきれいなお嬢様ぐらいにしか見えていない男の子もいたりする。


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