アマンダの予定
アマンダの予定
あれだけたくさんの友人たちの前では年下のマーシャに頼み事など言えるわけがない、但しマーシャを味方にしておかないと自分の計画も思った通りには進まない、なにせ王様とお后様までが大会に参加すると小耳にはさんだのだ。
当然のことながらアマンダにもマーシャのお店の事は耳に入っている。
「マーシャに頼むしか勝つことなど出来ないのは分かっているのだけれど…」
「どうかしましたか?」
踊りながらも武術大会の事を考えてしまい、いつの間にか口を滑らせてしまう。
「いいえなんでもないわ。ごめんあそばせ」
婚約の相手はフォルダン以外にはいないのだが、昨年の魔族との戦闘でフォルダンは婚約者としての立場を白紙に戻されてしまった。
まだアマンダは15歳と言う事もあり、今年も舞踏会へ参加しないといけなくなった。
今では相手が誰であろうと勝手に踊れるぐらい足も体も動くのだから慣れとは恐ろしい。
一応王族の中では若くそして美しくさらに魔法の腕も、自慢ではないが他の令嬢などほぼ格下にしか見えないぐらいの美貌を持つ。
中にはアマンダ目当ての爵位持ちも数人いるのだから本人にとって、うっとうしいとしか感じていないのだが。
次々と目の前に現れてはその手を取り腰を引き寄せて来る。
王族と言う地位が有る手前、むやみに拒否することもできやしない、それに比べればマーシャは今季初めてだと言うのに言い寄る男子よりマーシャの方から進んで選んでいる様子。
同じ転生者でこうも違う物なのだろうか?
「何か悪寒が…」
「マーシャ様どうなされました?」
「いいえ大丈夫です、私とでは退屈ですか?」
作り笑いを浮かべ返事を返すのだが、何故か相手にはその笑顔が引きつって見えるらしい。
寮に帰ったら鏡の前で表情の作り方を練習しようと思うマーシャだった。
「有難うございます」
一礼して離れるとそこには午前中魔族の従者をいたぶろうとした枢機卿の子息の顔が。
一礼してその手を取ると…
「マーシャ様本日は麗しゅうございます」
「あなたは?」
「私 シリウス・コロンバン・マーキュリスと申します 以後良しなに」
「ああそなたが枢機卿のご子息なのですね」
「はい、先ほどは失礼いたしました、魔族と踊っていた所を見られてしまい、お見苦しいところを」
「!魔族は別に見苦しくはございませんよ」
「ロマール聖教会では魔族は悪魔の象徴であるとの教えです、私は魔族を排除しようと思い行動を起こしたまでです」
「あなたは教えを愚弄していますわよ、この世に生まれた生命に貴賤はございません、それは魔族の方も同じです」
「‼な!」
「あなたも経典を最初から読み直した方がよさそうですわね」
「…」
「それでは」
(くそ午前中の女と言い王女と言い、なんだよ!)
どうやら午前中シロナの説教も彼には届かなかったようだ、今後彼がまた問題を起こすとは思いたくはないが。
彼が要注意人物になりマーシャの行動の邪魔になると言う事までは確認できた。
だが問題を起こさない限り彼を強制的に叩き直すこともできないのは確かだ。
仲間に引き入れて教育しなおすこともできなくはないが、そうするとマーシャが使徒であることがばれてしまい。
彼の口からマーシャが聖女だと言う噂まで流されてしまいかねない。
(なかなか面倒な事案が増えたようじゃな)
「妹よ、また来たぞ!」
「兄上 又ですか?」
「仕方ないだろう、もうほとんど相手し終わったのだ、同じ相手と踊ってはいけないルールなど無いのではないのか?」
「それはそうですが…」
「私はこの時を待っていたのだ、昨年も一昨年もマーシャのいない舞踏会など、砂糖の入っていない紅茶の様だ、いやお菓子の無いお茶会のような物なんだ」
「それはおほめに預かり光栄でございます」
「そんなかしこまらなくてもいつもの物言いで構わないのだぞ」
「それは?正気ですか?」
「かまわないぞ」
「は~ 兄上今度ご一緒にダンジョン攻略へ参りましょう、そうしないと兄上には本当の事が分からないと思います」
「本当か?行くぞ!地の果てまでも」
「は~なんでこうなった…」
どうやらマーシャの持つ魅惑スキルがリカルドにはかなり強力に影響しているようだ。
確かに、そういうスキルが有るし、その手のスキルがマーシャには10個ほどあったりする。
本来ならば魔法具でそれらの効果が半減するはずなのだが、彼にはかなり強力に作用している可能性がある。
(魅了を防ぐ魔法具をプレゼントしておいた方が良さそうじゃ…)




