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恐れ多い友人達

恐れ多い友人達


遠目から見ているだけでも良かったのだが、マーシャはこちらに気付きあっという間に近寄って来る。

花壇の垣根から、頭を少し出し覗いていた二人の後ろへ。


「ごきげんよう」


いつの間にか真後ろから声を掛けられ中腰のまま振り向く二人。


「え!」

「ひ 姫様、ご機嫌麗しゅうございます」

「う 麗しゅうございます」

「かしこまらなくてもよいぞ、どうせならおぬしらも加わらぬか?」

「え?そ それは~…」

「いい男ならいくらでも選り取り見取りなのじゃがな…」

「い 行きます」


いい男と聞いては断れないシロナ、まさかそれが誘い文句でありマーシャが気になった質問をするきっかけ作りだとは思ってもみなかった。

そしてみんなの前までくると、マーシャが先立ってその理由を告げる。


「こちらのご令嬢も仲間に入りたいとこちらを見ておったので連れて来たぞ」

「姫様急にいなくなるからびっくりしたぜ」カバネル

「マーシャ様にも困ったものです」

「あ 先ほどはどうも有難うご座います」カチュア

「いえいえとんでもない、たいしたことはしていませんよ~」

「そんなことはないぞ、妾より先にアホの行動を制し ましてや問題ごとを防ぐ力を持っておる、普通の者にはできぬことじゃ」

「そ それはほめ過ぎですよ~」真っ赤

「こちらは?」クロイス

「はっ ご挨拶がまだでしたね 私伯爵家の次男であるミドルシーランドの長女シロナ・シーランドと申します、皆さまよろしくお願い申し上げます」

「私はブラウン・コートウィル男爵の長女ロウィナ・コートウィルと申しますう」


2人は皆の前でしっかり挨拶をするとスカートのすそをつまみお辞儀をする。

そこからは聖教会の事を少し話すことになった。


「まさかそんないじわるを…」

「お兄様、あまり目くじらを立てますと、怖がられてしまいますよ」

「あ そ そうか…」

「王子もマーシャ様の前じゃ型無しですね」チャッピー

「あまりからかわないで欲しいのだが…」

「それじゃシロナはシャルルの姪なのか、世の中は狭い物じゃな」

「そういえば聞いていたような」フラン

「なんじゃ同い年なのに今まで知らなかったのか?」

「姫様付になってからと言うもの、毎日忙しくて他にお友達を作る暇なんてありませんよ~」

「あはは 確かに 勉強に試合にダンジョン攻略だもんな~」

「そうですよ~」


メイド繋がりだがその親族が学院に入学したことまではあまり知らなかった。

クラスも一緒になったことなど無く、マーシャの側付き学友の為。

飛び級して高等学部までたった2年で登って来たフラン。

同じ歳でも2年間で5年以上の差がついていた、だがそれはマーシャが特別だからと言う事まではチームマーシャの友人達以外は知らない。


「そうなんだ~じゃあお友達になりましょう」シロナ

「よかった~これで同年代の情報が手にはいるわ」

「何じゃ、妾じゃ不足か?」

「そんなことはないですよ~それにシロナちゃんももうお友達でしょう」

「マーシャ様もよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくじゃ、早速じゃから午後の部は我が兄上と踊ってもらうとしよう、その後はこちらのマリオス皇子とクロイス皇子の順にな」

「私もですか?」

「何じゃ何か問題でもあるのか?」

「いえ、特には」

「ひえ~」

「今回魔王国からは交流を深めるために来城しておるのじゃ、その目的は仲良くなるためのはずじゃが?」

「お兄様覚悟を決められた方がよろしいですわよ」ロキシー

「決まりじゃな」


舞踏会初日、午後は4時で終了する、明日は朝10時から立食形式のパーティーとなり。

会場は同じくこの場所で行われる、意中の人ができたならばそこで相手に告げ。

後に手紙でのやり取りになるが、もちろん複数人から声を掛けられる人もいるので、すぐに相手が決まると言う物でもない。


「じゃが正教会の教えを少し捻じ曲げておるのは気になるな」

「そうなのですか?」

「神は差別せよなどと教えておらぬぞ」

「確かに、本来の経典には命は尊く皆同じだと書かれております」

「命に貴賤は無い、そう書かれておるのに魔族と自分たちに差があるなどと教えては教義に反するじゃろう」

「マーシャ様は教会の信者だったのですか?」ロウィナ

「妾は信者ではないが、一応神聖魔法を覚えるに辺り教会の事も勉強するからな」

「使徒と信者?」

「使徒とは神自らが認めた神の下僕の事じゃ、信者は神の下僕が始めた教会の信者じゃな」

「厳密にいえば差など作る必要などないのでしょうけどね」

「その通りじゃ、じゃがその信者である教会の教えがいつの間にか偏って伝えられておっては使徒でなくとも黙ってはおれんじゃろう」

「そうか使徒と教会はそういうつながりか…」リカルド

「今更ですか王子」

「いやあまり私にはその意味が分かってはいない、神がいるとしても命は平等だと言う事しかわからぬ、但し生まれには上下が付いてしまう、そこは仕方が無いように思うが…」

「そうですね生まれてくる場所までは選べないですものね…」

「じゃから自分の立場が他者より優位におるものは虐げられておる者達を助けなければならぬと、王族規範にも書かれておる」

「そういえばそんな書物が有ったな…」

「王制基準書の第1章23条でしたわね」アマンダ

「エッ!」

「あら皆さんごきげんよう」


いつの間にか第一王女のアマンダがマーシャ達のいる場所へと来ていた。


「その雰囲気は、来てはいけなかったのかしら…」

「いいえお姉さま構いません」

「マーシャがここにいっぱいお友達とお話ししているのに、それを見て参加しないとか、ありえませんもの」

「それに魔族の方たちにもご挨拶しませんと、私第一王女アマンダ・シュバリオール・アルフレアと申します、これからも良しなに」


まさか舞踏会の最中にアマンダがマーシャの元へとやって来るとは思わなかった。

第一王女のアマンダに対して魔族の皇子達はそれぞれに挨拶をすると教会についての話がさらに続く。


「そうでしたかロマール教会も少し見直しが必要なのですね」

「アマンダ様は何かご存じですか?」チャッピー

「今季で任期が終わる教皇様の後釜を決める為に選挙をすると言う事は聞いております、今のところ融和政策反対派が躍進していますわね」

「それはどういうことです?」クロイス

「そのまま放っておくと又争いの火種が増えるかもと言う事です」

「俺の聞いた話じゃ、融和政策を進めている現在の教皇がこの秋に引退すれば又魔族排除を推進する排除強硬派勢力が力を増してくるってことだよな」

「教皇は48人いる各地の教主達が集まる選挙で決まる、それが11月の終わりの日で即位が12月の24日」

「聖なる日になぞらえて執り行われると言う話ですね」

「せっかくこうして親睦を深めているのに、横から出てきて水を差すなど許されぬ行為ですわね」

「ですが国境付近で暮らす者達の気持ちは無視できないだろう」

「そのための親睦です、戦いは不幸しか生みません」

「その通りよ、そうしないと私達も安心して家庭を持ち、子育てするなどと言う事はできません」

「うんうん」チャッピー

「皆様ここにおいででしたか、そろそろ午後の部が始まりますので、ご入場ください」司会進行

「おおすまぬ」

「あらもう終わり、それではまた後でねマーシャ」

「はい姉上」


どうやらアマンダは何かマーシャと話がしたいのか、いつもならこういう場には顔を出すことが無い彼女、もしかしたら何か頼み事でもあるやも知れない。


「さあ皆、戻って続きを踊りましょう」

「はーい」

「さー相手見つけるぞ~」

「あんた、懲りないわねー」

「ははは…」


会場へ戻るとすでに午後の部は始まっており、壁の近くには新人令嬢たちが次の相手を待っていたりする。

先ほど話した通りマーシャは魔族の皇子とそしてリカルドやテンマルたちはロキシーそしてカチュアの手を取った。


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