シロナ・シーランド
シロナ・シーランド
シーランド伯爵家の次弟の長女として生まれたシロナ、彼女は転生者だった。
但し魔法での鑑定では《女神の従者》としか書かれておらず、転生者であることは誰も知らない。
この世界にはこういった転生者や転移者が少なからずいたりする。
それは魂が再利用される過程で、一つの世界の中で再利用するのではなく、いくつかの世界をまたいで再利用されるから。
その理由は同じ世界ですぐに再利用されるといくつかの魂は生きる気力をなくしてしまうと言う事例が有ったからに他ならない。
もし同じ世界ですぐに転生して猫や魚に転生したらその魂はどうするだろう?
多分、中には残念だと思う魂もいるはずだ、それは今生を一生懸命生きる事に対してマイナスに働くのではないだろうか。
このことは過去に天界会議でも一度議題に上った事だ。
その結果同じ世界に直ぐ転生させるのは止め、何回か別な世界において魂を再利用した後にならば元の世界に転生しても良いのではと言う話になったからに他ならない。
と言う事は元の世界からこの世界にならば同じように転生して来る者がいてもおかしくはないと言う事になる。
シロナはそんな過去の記憶を持ち、しかも晴乃香の事を知る一人でもある。
そして女神から第三王女マーシャが自分を助けてくれた人物だと教えられ、手助けするように言われていたりする。
但し女神から自分の事を話すのは口止めされている、直接自分が転生者であるとは言えないのがもどかしいのだが、マーシャは多分それを知らずとも今後シロナに接近していくだろう。
(さて、これでお休み時間ね)
年上の男子数人と踊り、やや疲れてはいるが今年で3回目と言う事もあり、踊るのもかなり慣れて来た。
だがせっかくお相手を探すために来ていたのだがシリウスのおかげでその計画の半分は残念ながらつぶされてしまったと言わざるを得ない。
基本的には彼女もカッコイイ旦那を見つけて結婚を夢見る少女の一人に他ならない。
「シロナちゃん疲れたね~」ロウィナ・コートウィル男爵令嬢
「あ!ロウィちゃん」
「どうだった~今回は?」
「あまり良い人いないかな~」
「2番目に踊ってた騎士装の人は?」
「あ~あの人少しぎこちなかったかな~」
まさかやばい人だとも、いじめっ子だとも言えないから言葉を濁したが。
どう考えてもその服装で聖騎士団所属かもしくは聖教会の人間であるとすぐにわかる。
本来ならば自分が従属している女神の下僕であるはずなのだが、考え方はまるで逆なのだから間違った教育と言うのは真面目に信じている者から見るとはた迷惑だとしか思えない。
「そうなんだ後で私も踊ってもらおうかな~」
「あらあなたたち、もうお休み?」
「あ タバサ先輩」
シロナとロウィナは今季中等科2年へと進学している、そこへ先輩であるタバサ・マッケンジー侯爵令嬢が話しかける。
「お相手が決まったら後で教えなさいね、まあ今回は難しいと思いますけど、私の邪魔はしないようにね」
15歳になりまだお相手(婚約)が決まっていない1学年先輩のタバサ、できれば高等科へ進学する前に婚約をしておきたいところなのだが、高学歴いや高爵位のイケメン優男などすでにいなくなっており。
残るは売れ残りと初心者ばかり、侯爵家の長女と言う立場からは同じ侯爵家の長男か、もしくは公爵家の次男以上でないと婚約するのも難しい。
そして年齢のことも有る、今季デビューした8歳から10歳の男子ではまだ相手にもならない。
狙いは王家の3男リカルド王子と行きたいところだが、噂ではすでにシスコンであると調査票が届いていたりする。
「ではごめんあそばせ」
「はい」
軽く会釈をするとタバサは同年代の令嬢の輪の中へと入って行く。
「少しお外へ行かない?」
「そうね」
2人は会場の端を歩き開け放たれた扉から外へと出ると、新鮮な空気が花の香りを纏い吹き抜ける。
「いい香り~」
「この時期だとコスモスかな?」
「優しい香りだね~」
「あ マーシャ様だわ」
花壇から見渡すと石作りの建屋が見える、そこに魔族とみられる参加者とチームマーシャの常連組が数人、そして第三王子のリカルドまでがいた。




