シリウス・コロンバン・マーキュリス
シリウス・コロンバン・マーキュリス
神聖ロマール教会の枢機卿の一人カーマイン・コロンバン・マーキュリス(45)の一人息子であるシリウスは現在王国アカデミーである中等科の2年生、彼はその行動も行いもやや問題がある生徒だ。
父親は現王国の政策に反対する上級神父との親交がある為、マーシャにとってはやや頭の痛い存在だ。
彼はそういう教育をされていると言った方が良いだろう、今回も魔族が数人参加すると言う話を父親から聞いてその話の中で奴隷の印やその扱いを聞いていた。
そしてまさか舞踏会に奴隷階級の魔族が来ているとは思ってもみなかったのだが、その佇まいを見て即いじめてやろうと思い近づいた。
そしてなぜか今はどこかの小娘と強制的に踊らされている。
「なな なんだお前は!」
「私はシーランド伯爵の次弟の娘シロナ・シーランドと申します」
「伯爵家の所縁か、なるほど それでこれは?どういうことだ?」
「シリウス様ですよね」
「そうだが」
「魔族の方に何か恨みでも?」
「? 別に何も恨みはないが、下等な魔族がこの場所にいるのはおかしいと思っただけだ」
「では第三王女マーシャ様のお連れになる従者の皆様も下等でありふさわしくないと?」
「ま マーシャ様の従者は別だろう」
「今季の舞踏会、参加なさっている魔族の方々は全てマーシャ様とお知り合いだと聞いておりますが?」
「そ そうなのか?」
「あのまま魔族の方に危害を加えて居たらどうなったとお思いですか?」
「…!」
「多分マーシャ様にコテンパンにのされていたはずです」
「まさかそこまではあり得ないだろう!」
「何故そうお思いになるのです?」
「私の後ろ盾はカーマイン枢機卿だ、まさか新生ロマール教会を敵に回すわけはないだろう」
「あなたはご存じないのですねマーシャ様は神聖ロマール教会から聖女としての認定をされるのかもしれないのですよ」
「そんな、嘘だ第三王女は神童だとは言われているが聖女にはなっていないはず」
「それはマーシャ様が今の教会を良い物だと思っていないからです」
「反教論者か?」
「あなた!あほですか?」
「アホとは無礼な!」
「あれほど神に愛されている方が反教論者なわけがないでしょう!」
そこからシロナはとくとくとマーシャの事を語り出す、まるでマーシャが自分の神様だとでも言わんばかりに。
だが彼女の中にはマーシャこそが神の使いであり聖女ではと思っていたりする。
何故ならばシロナは転生者でありマーシャの事、いや晴乃香に生前助けられた一人だったから。
結局シロナ(祐野小路)は寿命で死んでしまったが、死因は癌でありその年齢は享年88歳。
病気だと言う事さえ除けば寿命と言える、だが生前15歳の時晴乃香に助けられ自殺を思いとどまったと言う経緯がある。
彼女はそれを100年近く経った今でも覚えているのだ、しかも転生して10年彼女の鑑定情報には女神の従者と言うデータが刻まれていたりする。
要はマーシャの味方として女神に使わされた人間だと言う事になる。
「…」
「あなたはマーシャ様の神がかり的な功績を知らないわけでは無いのでしょう?」
「そ それは聞いた事があるが、ほとんどが嘘や誇張だろう、あり得ない話だ!」
「私のおばさまはマーシャ様の教育係をしておりました、その中には私たちが信じられない話も沢山ありましたよ、おばさまが嘘をつくとは思えません、それにマーシャ様と戦った事はあるのですか?」
「いや王族と試合をするなと父上に言われている、いらぬ誤解を招くと言われているからな」
「マーシャ様は今まで負けなしです、そこはどう考えておられますか?」
「たまたまだろう?」
「これまでの試合回数は267回です、その全部を無敗ですよ、しかも上は先生クラスまで居るのです、それでもまぐれだと」
「王族が相手だ、手を抜いたのだろう」
「話になりませんね」
「なんだと!」
「いずれ分るとは思いますが、その他人の忠告を信じないと言う考え方、改めた方がよろしいかと思いますよ、それではごきげんよう」
一通り話が済むとお辞儀をしてシロナは次の相手を探して他の男の子と又踊り出す。
シリウスは先ほどの魔族の女子を探すが、すでに誰かと踊っており今更またいじめてやろうとまでは考えられなくなっていた。
父親からは王族には手を出さぬこと、そして魔族はできるだけ排除すること。
など一応枢機卿の息子として大事な事は教わってはいるが、まさかどこかの娘に自分の無知を説教されるとまでは思ってもみなかった。
だがこの舞踏会の後、彼も剣術の部で武術大会に出場することになる。
そこでマーシャの事を先輩たちから何度も聞かされるのだ、麗しき剣聖・錬剣鬼・魔神姫・等々と言う二つ名の数々を。




