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4人の使徒

4人の使徒


まさか暗黒竜ダーラが頭を下げて待つとは誰が予想できただろうか?確かに舞踏会の規則や参加する侍従達の作法など、フランや他のメイド達から聞き及んではいたが。

フロウラから見れば神に等しいダーラが自分と同じ立場でマーシャの下僕として従っているのだ。

その姿はフロウラの眼に神々しく映っていた。


「ダーラ様、申し分けございません」

「何がじゃ?」

「まさかこのような立場に…」

「それは前にも申した通りじゃ、マーシャ様の下僕、そして妾も神の使徒、その地位はおぬしらと同じじゃと」

「め 滅相もございません」

「姉上!」

「あ!あなたも来ていたの?」

「はいクロイス様の従者として参りましたが…」

「見ての通りよ 今回私はマーシャ様の従者として参加しています、貴方は他の従者達と踊りなさい」

「それは良いのですが…」


グロシュ・ゾーヴィルはフロウラの弟であり第三皇子の従者でもある。

どうやら魔王国から来た参加者はあともう一人と言った所だが、その人物は誰も知らないと言う。


「そういえば魔王国からは全部で5人の参加でしたよね」カユーラ

「はい、ですが私も5人目が誰かは知らされておりません」グロシュ

「だれかはわかりそう?」

「多分あの子では?」ジル


そこにいたのは真っ赤なドレスを身に纏い真っ赤なバラのコサージュを付けた少女が一人。

どう考えても魔族な女性、だがその容姿はまだ幼い子供にしか見えない。


「親族?」フロウラ

「はい多分…」


身長は1メートル50センチほど、その肌は白く背中には羽が生えており、どう考えても魔族にしか見えない。

だがジルと同じく羽は有れど角は無い、と言う事は吸血族と言うのが妥当なところ。

それに、ジルも同族だと言う感じがしているが。

ジルは蝙蝠族と吸血族のハーフの為、その人物も50%、もしくは25%の吸血族だと思われる。


「うむ、吸血族とハーピー族のハーフ、いやクゥオーターじゃな」ダーラ


すでにご令嬢達や爵位持ちの男子はペアになり最初の曲が終盤に差し掛かっているのだが。

相手が見つからず壁際に佇んでいる吸血族の女の子。

ダーラが鑑定魔法を使用してその情報を探ってみた、そこには意外な情報が…


「それと奴隷?」


どうやらその少女には複雑な家庭事情が見て取れる。

魔族の最初の始まりはダークエルフだとも言われている、そしてハーピー族は彼らの使い魔として従属しており。

いわゆる奴隷階級と言った所、そこに吸血族の血が混じっているところをみるとジルとは別系統のハンクル魔公爵の血筋と言うのが妥当だと言う。

ダークエルフの一族の中で不死を研究していたのがハンクル・ヴェノム・ジョーバリンの祖先であるド・ラキュア・ヴェノム・ホルブス公爵。

数万年前から続くダークエルフの家系、そして吸血族の始祖でもある。

ダークエルフの家系は数万年前2つに分かれ一つの一族は表舞台へ出て竜族や人狼族と交わり通常の魔族としてその数を増やしていったが。

もう片方のダークエルフは禁忌を開発し不死を手に入れ日陰者へと追いやられて行く。

だがハンクルの祖父辺りから不死だけではなく表舞台へと地位向上を目指すため他の種族との交配を進めて行った結果がジルであり、壁際で佇む女の子である。

ちなみにハンクル・ヴェノム・ジョーバリンは昼間の行動はできない体でもある。

よく見るとジルとは違う羽を背中に持っている、ジルの羽は薄い膜のようなものだがその女の子の羽は黒くそして沢山の羽根で覆われている。


「おい、お前その首輪はなんだ?」

「私に何か御用でしょうか?」


壁際に佇む少女に声を掛けたのは枢機卿の一人息子で、聖騎士団に今年所属したばかりの団員。

まだ12歳のシリウス・コロンバン・マーキュリス、現在4人いる枢機卿の一人であるカーマイン・コロンバン・マーキュリスの息子だ。

何処からか奴隷の印を聞き、いたずらを仕掛けようと壁際までやってきていた。

そこには取り巻きの男子が数人。


「お前奴隷だよな、なんでここいる?」

「私は魔王国から皇女様の従者として参りました、奴隷階級であっても従者の付き添いは認められていると言われております」


第三皇子の従者はグロシュだが、彼女は第2皇女であるロキシーの従者として参加しているようだ。


「へ~それで?」

「ニヤニヤ」

「それじゃ~俺と踊っていいわけだよな」

「は はい?」

「ほら手を取れよ!」


そう言いながら強引に少女の手を引くと、片手を彼女の後ろに回しその羽を鷲掴む。


「グッ!」

「痛い!」

「魔族はそのぐらい平気だろ!」

「魔族だとしても、痛さは感じるのです」

「ほら周りが不思議がるだろ、黙って踊れよ ちゃんと覚えて来たんだろ!」

「乱暴しないで…」


すでに音楽に合わせて踊り始めてから20分以上が経ち、マーシャの相手も4人目へと移っていた、もちろん二人目は兄のリカルド。

現在の相手はどこかの伯爵位の息子であり、そのニヤついた顔がかなりイタイ。

(こやつなんの香水か、臭すぎる)

まさか王国開催の社交場である舞踏会に置いて、バカな事をするような輩はいないと思っていたのだが。

今年は魔王国からの参加者がいると言う事で、一応マーシャもよからぬ事をするものがいたりしないか目を光らせていたりする。

だがしかし…会場は広くその異変に気付いた時にはかなり遠くの場所で踊っていた。


「し しつれい!」

「あっ!カネヅルが…」

(金づるかよ!)


マーシャは伯爵の子息をようやく振り切ると、不穏な空気が漂う現場へと魔法を纏い急行した。


「ちょっと失礼!」

「あっ!」


マーシャが駆けつけたのと同時に、他の令嬢が魔族の少女を抱き寄せていた。


「オッ…」

「次は私よ!」


その姿はややぽっちゃり・いやナイスバディな少女、と言っても背はマーシャより高く胸は同年代の少女より膨らんでいる。

そしてその頭にはどこかで見たような櫛が見えていた。


「あっマーシャ様!」

「おっととと」


何故かその少女がシリウスの手を取ったおかげでマーシャの手にはいつの間にか魔族の少女の手が収まっていた。

仕方がないので付かず離れず2組のカップルが踊り出す。


「そなたは?」

「お初にお目にかかります 私シーランド伯爵家の次男の娘でシロナ・シーランドと申します」

「そ それは分かったのじゃが?」

「あ~私姫様のおかげでここにいますのでおっしゃりたい事は分かっているつもりでございます」

「君らは何を勝手に話している!」シリウス

「あ!っと足が」

「グッ!」

「ごめんあそばせ、それでは姫様また後程…」


そう言うとシロナはシリウスの手を取りくるくると回りながらその場所から移動して行った。


「あ あの~」

「ああ、済まぬ成り行きで…」

「よろしいのですか?」

「何がじゃ?」

「私魔族ですが?」

「かまわぬ、わが従者には魔族が3人いる、おぬしも従者じゃろ」

「はい今回第二皇女のロキシー様に同行してまいりました」

「おお ロキシーの従者かなるほど…」

「知っておられるのですか?」

「知っておるも何もロキシーは友人の一人じゃ」

「そうなのですか?」

「何じゃ聞いておらぬのか?」

「今回の参加は急に決まりましたので、ロキシー様ともあまりお話をしておりません」

「もしかして魔王からの命令か?」

「いいえ公爵様からです」

「ジョーバリン公爵か?」

「はい よくご存じで」

「フムフム なんとなく見えて来たが、そなたの首輪は少し頂けないな」

「はいでも仕方がないのです」

「ハーピー族が昔からの奴隷一族だからか?」

「何故それを?」

「それを聞きたいか?」

「いいえ、私にはそれを聞く権利はございません」

「そうか?ならばその方にはチャンスを与えよう、それを使うかどうかはおぬし次第じゃ」


そう言うとマーシャ謹製のコサージュをストレージから取り出しそっと髪に取り付ける。


「これをおぬしに預けておく、何かあったらこれを握りしめ願うが良い」

「あ 姫様!」


勿論マーシャ謹製の装飾品は各種の魔法が込められている物だ、何故それを渡したのかは後で分かるが。

なにやら公爵の策略も知っておかないと今後の計画に支障をきたす可能性が出て来た。

それに先ほどの令嬢も気になる、よからぬ考えを持った男子は命拾いをしたようだが。

その後は何事もなく時間が過ぎ、舞踏会は中休みの時間になった。


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