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舞踏会

舞踏会


すでに男子は舞踏会場に置いて整列していた、昨年まではまるで逆だったのだが今回はまるでマーシャを出迎える為にわざわざそうしたのが見え見えだった。

そしてその先頭にリカルドがいたりする、これが王国の男尊女卑から脱するきっかけになったとは、後々に語り継がれるマーシャの武勇伝の一つになって行く。


「第三王女マーシャ様のおなーりー」

「わ~」


まるでその人にだけ捧げられたような歓声が上がり、続々と入場する令嬢達をややモヤッとさせるのだが。

周りの誰もが文句を言える立場にはないのは重々承知している。

ただの王女ならばそれほど気にはしない事だが、ここまで有名になってしまうと出る杭どころか出過ぎてしまって、目の上のたんこぶどころの騒ぎではない。

学院の誰もが試合においてだけでなく学問もマーシャに勝つことなど出来なくなってしまったのだから。


「マーシャ!」

「失礼!マーシャ様お手をどうぞ!」


リカルドがその手を取ろうと差し出してきたが、それを横からかっさらってしまったのは、なんと魔王国の王位継承権第一位マリオスだった。

身長190センチ以上、頭には黒い角が2本耳の上から伸びて居る。


「お久しぶりですマイハニー」

「いつからそんな優男になったのですか?」

「これは手厳しい、これでも少しは男らしくなったと思うのですが…」

「おい、おまえ失敬だな!」

「あっとすまない、私が何か?」

「私は第三王子のリカルド・オースティン・アルフレアだが、君は?」

「これは申し遅れました、私は魔王国第一皇子マリオス・タイロス・ウェザラートと申します」

「!魔王国の第一皇子だと!」


双方がその場でにらみ合うが、さらにそこへもう一人。


「マーシャ様、ご機嫌麗しゅうございます」クロイス

「今度はだれだ!」

「初めまして、魔王国王位継承権第二位、クロイス・コーパス・ウェザラードと申します、皆様よしなに」

「あ~!マーシャ様!」


そこへさらにもう一人がやって来る、今度は女の子。


「魔王国の第二皇女、ロキシー・タイロス・ウェザラードと申します皆様 初めまして」

「お~」


魔王国の皇女ロキシーは昨年の事件の時、第一皇子クロイスに同行していた皇族の一人。

魔王国は王制ではなく絶対強者制を敷いており王様以下は皇族と言う形になる。

一応王になる権利はあるが、戦いに敗れれば王位を明け渡さなければならない。

但し皇族として国のまつりごとをするための役職を担う一員としての地位は守られている。


「お話は後で、ここで留まってしまうと後続のご令嬢方の迷惑になります」


後ろを見ると、きらびやかなドレスを纏ったご令嬢達がすでに列をなしており。

ややあきれ顔で前の人間が進むのを待っている。


「お~それは申し訳ないそれでは先へ進みましょう、お手をどうぞ」マリオス

「…クッ」

(横からさらわれるとは、くそ~)


だがそれを見て今度はロキシーがリカルドの手を取る。


「私と参りましょう」

「あ!いや…マーシャが…」

「私ではおいやですか?」


いつの間にかあの引っ込み思案なロキシーが空気を読んでリカルドに微笑みかける。

何をどうしたら魔族の2名がここまで変わったのかは不明だが、あれからすでに1年近く経つ、もちろん彼らも相当勉強をしてきたのだろう、その身のこなし方も流れるような挨拶の作法も。

見違えてしまうような王族3名、彼らの所作はこの時点で王国の貴族より上を行っていた。

壁際に並んでいた男子の手を次々に令嬢たちが取って行くと、会場の奥で待ち構えていた宮廷音楽隊がようやく雅な曲を奏で出す。

最初の曲は決まっているようだ、まずはワルツそして一応全員がペアになり踊り出す。

マーシャの使徒だけは入口に入った後すぐに左右に分かれ少しの間頭を下げて待つ。

もしペアにあぶれた男子がいたならば彼女らが手を取って穴を埋めるように指導されている。

他のメイド達も同じように並ぶと頭をやや下げて待つ。


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