王子の画策
王子の画策
何台もの馬車が次々と到着し4名からの貴族とそのお付きメイドや従者が下りて来る。
未婚貴族の場合、お付きの従者は学院に通っていなければ参加不可能。
但し特例がある、もちろん未婚でお相手がいないことが条件の一つなのだが。
マーシャの従者や他の王族の従者ならば学院に通っていなくても参加が認められていたりする。
但し参加と言っても護衛と言う名目なので本来ドレスを着たりすることはないのだが。
従者が着飾ってはいけないと言う規則は無い、そこを今回マーシャは利用することにしたのだが。
どうやら煌びやかに着飾ったご令嬢達を見たいがために早く到着しようと思っていたわけではなさそうだ。
「何故か男子が早く着いておるみたいだな」
「昨年はリカルド様最後に到着しましたよ」フラン
「なにやら策略を感じるな…」
そうそれは王族2名による、第2王子と第3王子が結託して、今期の舞踏会は自分たちが向かい入れようと画策していた。
勿論男子には全員そういうお触れが届いていた。
1週間前の出来事…
「おい本当かよ」カバネル
「本当みたいだぞ」ロッド
「どうやらリカルド様が中心になってトラム様が手を貸しているそうだ」ジョシュ
「何々?」
「この度、舞踏会に置いて通年ならば男子は後入場と言う形であったが、本年から女子を向かい入れると言う形に変更することになった。当日男子諸君は女子より最低10分以上早く入場し整列後麗しき姫たちを向かい入れるように、第2第3王子連名」
「なんじゃそりゃ」
「でもやんないと絶対何か言われるぜ」
「ところで今期は魔族も参加するんだよな?」
「ああ、男子が3人女子2人だって話だ」
「その人たちはいつ来るんだ?」
「2日前には来るって話だぞ」
なぜそういう風になったかと言うと第2王子と第3王子がマーシャの後に行くのはおかしいと口論まですることに由来する。
トラムはダンジョン攻略時にマーシャの力を直近で見て思った、マーシャは絶対に敵に回してはいけない。
普段のマーシャが、どれだけ猫をかぶっているのか、そして舞踏会もマーシャは立場を考えいつになく上品にふるまうだろう。
一方リカルドは最初にマーシャと踊るには最後に入った方が良いと考えた。
だがそれにはたくさんのご令嬢たちをマーシャが押しのけて一番にリカルドの手を取らなければならない。
王族と言う他の貴族達の頂点に君臨する状況は、かなり自分のわがままを優先できる立場にある。
彼はそれを覆せる状況を考えてはいなかった、マーシャは特別でありそしてリカルドの妹なのだ。
自分の事を優先に考えていたリカルドに、それは難しいぞとトラムが説明する。
マーシャは普段猫をかぶっているのだから他のご令嬢たちの手前身を引くだろうと。
そうなれば本来伴侶を見つける為参加する舞踏会に置いて、最初にマーシャと踊ることなど王族の第3王子と言う肩書で許されるはずもない。
それならば男子全員最初に到着し、待ち構えていた方がマーシャの手を取れる確率は上がるのではないかと。
まさかリカルドがそこまでのシスコンに変化しているとはトラムも思っていなかった。
(リカルドも一度マーシャとダンジョン攻略してみなければ分からないかもな…)
ソードマスターという肩書を手に入れ自信を付けたリカルドは、現在マーシャと同じ場所にいると少し勘違いしている。
それは学院でマーシャが猫をかぶっているからに他ならない。
美麗な姫様が鬼のような戦いをするなどと誰もが思わないし、共に戦った事のある者にしか本当の事など想像付くはずがない。
そして自分が手を差し出せば妹は絶対手を取るはずだと、そう信じているのだ…
世の中自分の思い通りになることなど本来これっぽっちもないのだと、先に考えられたら誰もが落胆することなどないだろう。
そして魔王国からの訪問者に第一皇子と第三皇子が来るとは、この時は誰も知らない事だった。




