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舞踏会の当日(準備)

舞踏会の当日(準備)


その日は薄曇りではあるが、気温は24度と言う割と暖かい陽気に恵まれた。

朝7時になり学院の寮内はいつになく騒がしい雰囲気に包まれていた。


「早く早く!」

「どこにしまったのです?すぐに探しなさい」


あちらこちらの部屋ではお付きのメイドが主人を着飾るために孤軍奮闘しており。

騒がしく廊下を行き来していたりする。


「ドタドタドタ」

「急がなきゃ!」


しかもその人数が一人二人ではなく10人規模なのだからどうしようもない。


「騒がしいな」

「仕方ないですよ、マーシャ様みたいにメイドが複数いるわけではございませんし」

「でも宜しかったのですか、私までご一緒して…」リリアナ


リリアナ・シュローダーは、ビルシュタイン・シュローダー公爵の次女であり今年15歳になった才女だ。

昨年7回目の舞踏会に出た所、その物言いからアイスドール(氷の人形)と言う二つ名まで貰う事になり、男子はほとんど寄り付かない状況になっていた。

外見は美麗なのだが、いかんせん線が細いのと、つっけんどんな話し方に男子が全員ノーを突き付けた形。

要するに魔法の事以外全くと言って話さないと言う。

そして終いには魔法で自分に勝てるぐらいの男子でなければ、全てゴミだと言い切ってしまうのだからどうしようもない。


「試作したドレスが沢山あるのです、姫様だけが着るのではもったいないとのことです」フロウラ

「いまさらじゃろ、新作のドレスもいくつか試すのじゃ、うまく行けばブティック・マルシャールに置く事になるそのための布石も兼ねておるのじゃ」

「それにしてもうまく行きましたね」


そう、ひと月前マーシャは自己資金を利用して城下町の目抜き通りに小さな店を出店した。

その通りには洋服店が軒を連ねており、かねてからチームマーシャによる魔道具や防具のお店を出す計画をそのお店で始めることにした。

特に防具と言っても女性用の服を多く置くようにする、ほとんどがオートクチュールになるが。

それまではドレスの魔法防具などと言う物は誰も考え付かなかったのだが、マーシャはそこに目を付けた。

これまでは戦闘するのに美しさなど必要無かった、だが王族の姫君が戦うともなれば、そこに気品などと言う物を考えないわけには行かない。

常識を覆すには強さだけでなく外見を変えることも必要だ。

様々な生地や糸、それらを魔法で紡ぎ美しさを失わずに戦闘時にも崩れず破けないドレスの開発。

今では日に10着ほどの注文が入るぐらい忙しくなっている。

すでにお針子として10人近くを雇い入れ、フロウラやジル、そしてリリアナも手伝う人気のブティックになりつつある。


「あまり忙しくなるのもまずいのじゃが、せっかく作ったドレスをお蔵入りさせておくだけではもったいないからな」

「まさか主が洋服屋までプロデュースしておるとは思わなんだぞ」ダーラ


フロウラと一緒に今ではダーラもお手伝いをしている、実はダーラは結構計算が得意で。

在庫管理や人の配置そして経営のノウハウを持っていたりする。


「まさかダーラ様にまで運営を任せることになろうとは…」

「どうせ暇じゃから構わぬぞ、何千年と経っても計算は変わらぬからな」

「このブローチは?」

「ああ皆にドレスを着せる手前、妾の使徒メイドだと分からなければ混乱を招くと思ってな」


マーシャは舞踏会に下僕であるフロウラ達4人にも新作のドレスを着せてお供することを思いついた。

勿論彼女らは舞踏には参加しないのだが、ドレスを宣伝する手前彼女らをモデルとして同行させ店の宣伝をしようと思いついたのだ。


「良い思い付きじゃろう」

「ですが男性からのお誘いが、大変なことになるのでは?」リリアナ

「その時はその時じゃ」

「踊っても構わぬよな」ダーラ

「舞踏会は踊る場じゃ、誘われたなら踊る、断るかどうかは任せるぞ」


身長180センチを超える大柄な女性2名が魅惑的なドレスを身に付け舞踏会に出たならばどうなるのかは想像しても分かることでは無い。

それに2名共に魔王国出身だと言う肩書がある。

胸に付けた天使のマークをあしらったブローチが、マーシャのお付きメイドの証を証明するので不埒な輩は出てこないとは思うのだが。

カバネルやロッドの話だと、魔族の女性に手を出そうとするようなもの好きはいないはずという。

だが今期は魔王国からの招待客もいると言う話なので、そちらの方までは細かい情報が行き渡っていないと思われる。


「そういえば魔王国からも数人参加するのですよね」フラン

「ああ 聞いた話だと5人ぐらい参加すると言う話じゃ」


すでにドレスは全員が身に付け、後は髪型をセットしていく。

ちなみに縦ロールや、ユルフワセットは魔法により簡単にできてしまうのだから便利だ。


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