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アマンダの秘密

アマンダの秘密


試合の話が出てからは、周りの気配もかなり神妙になってしまうのだが、とりあえずマーシャがこの雰囲気を変えるべく一言。


「試合の話はこれぐらいで、皆さまお食事をいたしましょう」

「そ そうね…」

「は~い座ってくださーい」


メイドが椅子を引くとなぜかマーシャの目の前にアマンダが座り、一口ごとにマーシャをじっと見る。


「マーシャ、貴方聖女じゃないの?」

「ち 違いますわお姉さま、お姉さまこそ神の使徒なのでは?」

(聖女は嫌なのに、何故分かる!)

「わ 私はそんなものからは程遠いですわよ」

(何故使徒だと…ばれたのかしら)


アマンダは転生者である、但しマーシャとは違い天使や神から仕事などを頼まれていたりしてはいない。

彼女が転生者としての自覚を持ったのは今から5年前10歳の時だ。

それまでは蝶よ花よと育てられ、ごく普通の王女として育ってきたが、アカデミーの中等部へと飛び級した時に一時高熱を出し寝込んだ事があった。

それまでは忘れていたと言うか、変な夢に悩まされていたぐらいで、王族の長女としての記憶からは特別変化は無かったのだが、高熱を出した後に何故か自分の記憶の中に35歳の女性として生きた記憶まで追加されていたのだ。

勿論彼女も転生時には数個のスキルを渡されているのは間違いがない。

マーシャよりはかなり少ないスキルの数だが、それでも最低5個以上はスキルをもらっている、その一つは偽装かもしくは隠ぺいのスキル。

そして2つ目は魅惑か美麗のスキル、さらに魔法力向上もしくは魔力増大などのスキルが有るのではないかと思われる。

アマンダの場合魔術に特化しているようで特にアカデミーではリリアナのような操作系魔術の研究を現在は受講している。

だがアマンダはリリアナのように練習試合をすることはあまり無いため、実力がどの程度なのかははっきりと分からないようだ。

たまに試合をするような事が有っても彼女は実力を全て出さないように試合を運んでいる節がある。

マーシャの鑑定眼スキルでは最低でもマーシャの半分以上の魔力量があるのではと言う分析結果が出ている。

勿論それはリリアナより上なので、実力を隠さず戦えばアカデミーでもトップクラスと言う事になる。


「姉上は15歳には見えませんよね」

「え そう?どのあたりが?」

「外見もそうですが、物腰全て余裕と言いますか、まるで母上のような感じに見えます」

「それは私が年老いていると言う意味にも取れますが?」

「いいえ申し訳ございません、そのような意味ではなく博識でしかも優雅だと言う意味です」

「それならば構いませんが…」

「そういえば姉上は今期も舞踏会にお出になられると聞きましたが」

「フォルダンとの約束が昨年の出来事で白紙に戻りましたから、形式上は婚約者がいないと言う事になります、不本意ですがその場合王族は舞踏会に出ない訳にはいかないのです」

「ですがお姉さまはフォルダン様との婚約を優先すると聞いておりますが?」

「魔族とのいざこざぐらいで揺らぐ愛情ならばたいしたことはないと思われるでしょう、それに彼を見ていると胸がキュンとなるのです」

「キュン?」

「間違いました心がときめくのです」

「そうですか…」

(やはりアマンダは転生者の可能性が高い)


数分後夕食が終わりそれぞれにメイドや下僕をひきつれ王族も自室へと戻って行く。


「それでは姫様これでお暇いたします、明日は朝7時に参ります」

「では我も宿舎に行くとしよう」

「有難う、後は頼んだぞ」

「ハイ」


ダーラとカユーラの2名は王族メイド館に常駐している、ダーラの事は同じ竜人系の血を持つフロウラに頼んであるためさほど問題はないが。

最初フロウラに会わせた時、フロウラはかなり驚いたのを覚えている。

なにせ5千年前に魔王国のダンジョンへと送られる前、数名の竜族は変身した竜人のまま魔族と交わり、子を成したりしている者もいたと言う。

つまりダーラとフロウラは遠い親戚だったりするのだ、もちろん今期の魔王様も同じこと。

ダーラ達竜族は現在の竜人系魔族のルーツと言っても過言ではない、纏う魔気を感じてすぐに分かったらしい。

(ご先祖様だ)と…

今の立場は先輩後輩だが、その立ち位置や位はダーラの方がかなり上なので、フロウラは最初かなり萎縮していた。

すぐにそれが解消することになったのは、ダーラの対話スキルの高さなのかもしれない。

彼女は話してみるとかなりフレンドリー、フロウラに対してもまるで自分の娘かはたまた隣のおばちゃんと言う感覚で話し相手になっている。


「それにしてもアマンダ様はいつ見てもお綺麗ですね」

「フランもそう思うか?」

「はい女性として成熟された感じがいたします」

「まあ妾はまだ子供じゃからな」

「マーシャ様はあまりあのような感じにならないような気がしますが」

「それはどういう意味じゃ?」

「憧れと言う形がお二方では違うと言いたいのですが、うまい言葉が見つかりません」

「確かに妾はまだ発展途上だと言うのは認めよう、姉上の様になるにはやはり経験以外に何か他の物が必要なのかもしれんな」

「そういえば今期はリカルド様も舞踏会にいらっしゃるのでしたよね」フラン

「そうじゃ」

「素敵ですよねリカルド様…」

「ほ~おぬし兄上狙いか?」

「ち 違いますよ~、私なんか男爵家の遠縁ですからとてもではないですが相手してもらおうなどとは考えてもおりません」

「一応、兄上は公爵家か又は侯爵になるのじゃから第2夫人や妾となることもできるのじゃがな」

「そんな滅相もないですよ、私はアカデミーのマスタークラスでもっと聖魔法を磨くんですから~」


食後の湯あみを済ませマーシャ謹製のネグリジェ、もしくはパジャマに着替え2名用の個室に添えつけられているベッドへ横たわる。

傍らにはサイドテーブルが置かれその上に魔法灯が淡い光を灯している。

マーシャから見れば7つも上の王族であるアマンダ、今日話した事により少し彼女の性格も分かってきたのだが。

アマンダがそう簡単に秘密を話すと言う事はないだろう、だが自分と同じ転生者なのは間違いがないと感じたマーシャだった。


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