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初めての舞踏会

初めての舞踏会


8歳から参加することになる秋の舞踏会、昔は収穫祭としてお祭りや宴会を行っていたことから始まる王国あげての行事。

王城の大広間を使い生の音楽家による演奏で踊る煌びやかな宴。

同時期に各町や村でも同じようなお祭りが行われる。


「ここでターン、そして腰の手を戻してお辞儀をします」フラン

「こ こうか?」

「ハイ もう少し顎を上げて 胸を張って」


8歳になったマーシャ今年10歳になったフランといつの間にか同じ身長にまで伸びて居た。

身長150センチ、王族は結構身長が高いのでこのまま行くとマーシャも170を超えると思われる。

徐々に可愛らしさから美麗へとその佇まいさえも気品が出てきているのだが。

中身は未だにスケバンの名残があるため、動作の細かい部分は少しガサツだったりする。

だがフランの教え方はかなり上手であり、マーシャにも分かり易い物だと言えるのではないだろうか。

最初は足を踏みまくっていたマーシャもフランの手を取り前に後ろにと踊りを重ねるうちにその動きもぎこちなさが無くなって行った。


「ここで足を引くのじゃな…」

「そうですそうです」

「おお 主殿 様になって来ましたな」

「あまり茶化さないでもらいたいのだが…ですが」

(言葉も直さないとか無理じゃろ)


ダンジョンコアだった竜人ダーラ、いつの間にかマーシャのメイドとしてフロウラ等と共に王族の所有する屋敷に常駐するようになっている。

本日は講義の予定も終わり、来週の土日に行われる秋の舞踏会に向けて踊りのレッスンと言う。


「それにしてもあれだけ武術に長けておるのに、踊りはだめだったとは主殿にも可愛らしい部分があるのじゃな~」

「クッ!そんな事知らん、そ そういうダーラは踊れるのか?」

「確かこうじゃろう」


そう言うとその指をまるでタコのように動かしそして腰をゆっくりと動かしながらエキゾチックな踊りを踊り出す。


「へ~うまいもんだね」カユーラ

「そうじゃろう」


まさかダーラがここまで踊れるとは思わなかった。


「その昔 神事の時に我の踊りは欠かせなかったのでな」

「なんすか 神事って」

「ああ昔の事じゃ、一応巫女のような位に居った時もあるのでな」

「フーン」


どこかの星にいた時は人族から神としてあがめられていた竜族、人の姿に変身したとしてもそのまま日々何もせず暮らしていたわけでは無い。

特に女形の竜人は神事に置いて巫女としての役割が課されていたことが多かった。

そのため儀式の踊りや祝詞などの司会や進行を任せられることが多く。

代々その型を受け継いでいたのだが、今となってはその踊りを受け継ぐものさえいなくなっている。


「それでは今日はここまでにしましょう、お疲れさまでした」

「有難うご座いました」


踊りを覚えるに当たって所作だけでなく言葉使いまで直すように言われてしまったのはマーシャにとって苦痛以外の何物でもない、だが大人になるにつれ覚えておかなければいけない言葉使いもある。

王族なので割とそこは上から目線でも構わないのではと思うが、なにせこの世界は男尊女卑が色濃く残っているので、相手の男性を怒らせるといくら王女であってもマナーがなっていないと噂されてしまう。

そうなれば教育がなっていないとか、王族のくせにとか、せっかく今まで培ったイメージが崩れ去ってしまう。

本来ならばマーシャが一番苦手な部分だったりするのだが、この際彼女は舞踏会を通じて一つ上のマナーを身に付けてやろうと言う気でいたりする。


「それではお食事に参りましょう」


すでに夜の7時となり寮に併設された食堂へと4人は移動する。

本日、ジルとフロウラは冒険者としてクエスト消化に赴いている。

寮の食堂は50人が一度に食事を摂れるのだが、基本年功序列のような時間割が適応されていたりする。

ちなみに王族はマーシャの場合7時半に食堂へと来ると申請しており。

そこから30分、8時までの間はチームマーシャ以外の爵位持ち以外は遠慮する形になっている。


「第三王女マーシャ様が到着いたしました」寮母のミシェル

「ワラワラ」


子爵位や男爵の子女そして一般からの学生らが急いで食事の片付けを始める。


「マーシャ様こちらへどうぞ」

「有難うクラレット」


クラレット・アンドルトン(17歳)は侯爵家の長女であり50年前の魔族との戦いにおいて功を成した10傑の一人マーク・アンドルトンの孫にあたる。

現在高等科の2年に通う学生、どうやら彼女はマーシャの噂を聞き取り入ろうとしているようだ。


「あらマーシャも来ていたの?」アマンダ

「ハイお姉さま」

「こちらの方は?」

「ああ 初めてでしたね、新しくメイドになったダーラです」

「初めましてアマンダ様 ダーラと申しますお見知りおきをですじゃ、です」

「ずいぶん大きな方ね」

「ええ 竜族の血が混じっておりますので」

「又魔族の?」

「はい」

「そういえば、今度のトラムとフォルダンの定期試合マーシャは何か特別な事をするみたいな噂がありますが?」

「あーその事ですが先日ダンジョン攻略の時に手に入れたお宝を勝者にお譲りする形で試合するのはいかがかなと思いまして」

「それはどのような宝なのです?」

「これですが…」


そう言うとマーシャはストレージから50階層のボスから取れたレアドロップの婚約指輪を目の前に出す。


「お~~」


その大きさは直径2センチ以上は有ろうかと思われるダイヤにルビーやエメラルド、サファイヤなどをあしらった指輪。

台座には白金を贅沢に使用した高価な品だった。


「鑑定」


ダイヤの指輪:婚約指輪、ダイヤの宝石20カラット以上、ルビー・サファイヤ・エメラルドをあしらった推定大金貨100枚はくだらないと言う品物。


「ダイヤ20カラット!」


この世界ではまだ立て爪などと言う宝石の固定方法はないので少しファッション性に欠けるのだが、それでも台座の白金は2センチのダイヤを4隅で留めるべく、かなり贅沢に使われている。


「こ これを?」

「はい 私にはまだ早い品物なので、それでしたらこれから婚姻を結ぶお姉さまにどうかなと思いまして…」

「その見返りは?」

「もちろん対価は1年間の下僕です、但し今回は勝者の下僕ではなく賭けの商品として提供するのは私の私物になりますので、私の下僕となりますが…」

「…それはフォルダンが負けた場合私とフォルダン両方がマーシャの下僕となるのですか?」

「はい、そうでなければ男性だけに責を負わせてしまう形になります、それでは婚約の意味もありませんので」

「考えさせてもらえるかしら…」

「はい構いません、どこかに売る予定もありませんので」


食事に来たのがいつの間にか試合の相談になってしまった。

一応二女であるアリシアも許嫁がいるので数年後には婚姻するのだが、一応順番があるらしいので、第一王女であるアマンダの指に収まるのが一番と言う形になる。


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