閑話 暗黒竜ダーラス
閑話 暗黒竜ダーラス
ランデス島とは王国の東にある2百k四方の島であり活火山の島だ。
現在はその島に生物などいないと言う研究者たちの話ではあるが、その昔には恐竜がいたと言う。
なんでも毒のガスが常に漂っていると言う事で、海岸線ぐらいならばなんとか立ち入ることができるが、そこから先 島の中央へとは進むことができないと言う。
「それで誰に召喚されたのかは分かんねーのか?」
「ああ分からぬ、気が付いたら島にいたのだ」
「フーン」
「おぬしはどうやって転生したのじゃ?」
「ああその事だが、地上に戻ってもこの話はしないでくれ」
「まずい話か?」
「まずアタイは聖女では無いと言っている、もしそんなレッテルはられると今後の行動に制限がかかってしまう」
「そういう事か、神もなにやら画策するのが好きなようじゃな」
「今回の事だってアテナが手を回して250階層に送り込んだみたいだからな」
「我にとっては天の助けだったがな」フフフ
「そうかもな…」
「ところでおぬしその様子だと、どこかの王族と言う設定か?」
「ああ今は第三王女と言う肩書だ」
「なかなか面白い筋書きじゃな」
「面白いって…普通に暮らしていたら事故であの世行きだぜ、冗談じゃねー」
「長く生きておると、何かこうハプニングとか想定外とかいう物にあこがれるものじゃ」
「そういえばダーラ、今の歳は幾つだ?」
「聞きたいか?」
「いやなら言わなくてもいいが…」
「フンフン、いいじゃろう、聞いて驚け1万2千3百23歳じゃ」
「へ~」
「驚かぬのか?つまらぬ反応じゃのう」
「それよかこの星に召喚される前は?」
「今から5千年前じゃな、わしの住んでいた星は寿命じゃった」
ドラゴン星座群の中にある2番目に大きい惑星ドレグーン。
太古の恐竜がいまだに住むと言われていたその星は、竜族と人族が仲良く暮らしていた。
竜族は変身魔法を使い人族たちと同じ容姿をすることで、彼らから敬意と畏怖の眼差しを受けていた。
その力は人族を優に超え、寿命は数千年とも言われていた彼らは、人族から見れば神のような存在として崇め奉られていたのだが…
そんな生活に転機が訪れる、その星に大きさは半分ぐらいだが他の惑星が衝突したのだ。
神はこの星の生き物に手を貸した、人族は他の世界や星々に転生や転移、もしくは召喚と言う形で命を助けることにしたのだ。
ただ、竜族の力は普通の世界ではあまりにも大きすぎる、一つの星にそれほど多くは移動させることができず。
この星には10頭ほどの竜族を召喚と言う形で滅びゆく星から助け出すことにした。
但し、移動した先で彼らの扱いがどうなるのかぐらいはすぐに分かる、今まで居なかった竜種が突然現れるとその星の民は恐れ恐怖する。
神は最初そこまで考えが及ばなかったが、すぐに対策を講じることにした。
この星に他の世界から特殊なスキルを持つ人族を転生や召喚と言う形で連れて来ることにした。
それがダンジョンクリエイターと言うスキルを持つ者達。
彼らを使い魔王国周辺にダンジョンを作らせ、その最下層にダンジョンコアとして竜族を使う事を思いついた。
「んで、この星に連れて来られたのか…」
「そうじゃ」
「道理でアタイの外見を見てもさほど驚かねーわけだ」
「一応このダンジョンを作った者達にも色々教えてもらったからのう」
「それにしてもダーラは長生きしすぎだろ」
「ああその事じゃが、ダンジョンにいれば歳を取らぬらしい、挑戦者がいない間はずっと眠っていたからな」
最下層のダンジョンコアになるも竜種が寿命でいなくなればダンジョンも無くなってしまう。
それを防ぐにはダンジョンコアとなった竜種には死なないように魔法を掛けなければならない。
その代わりこの場所からは出られなくなるのだが…
「それじゃアタイと一緒に外に出ると年取っちゃうんじゃねーの?」
「確かにそうなるが今更じゃろう、それにこの星で地上にいたのは数十年じゃ、しかも他の生き物が住めぬ場所じゃったからのう…」
1万2千3百23歳、5千年ダンジョンコアとして暮らしてきたのだから、実年齢は7千3百23歳と言う所だが、竜種の寿命と言うのが一体何歳なのかは分からない。
「と言う事はダーラも神と契約していたって事か?」
「正解じゃ、だから何時お役御免となるか待っておったのじゃ」
何千年と洞窟の奥に押しやられ神から「もう外に出してやるぞ」と言われる日を待ちわびていたと言うわけだ。
今回その代わりをマーシャが果たしたと言う事になる。
「神も色々してんだな…」
「そうじゃ今の地上は面白そうか?」
「どうだろう?アタイの立場からは普通としか思えねーけど死ぬ前の世界から見ればなかなか面白いと思うぞ」
「あ~外に出られるのは良いのだが、そこからの暮らしは何をしたらよい?」
「そうだな…」
「出られるのならばおぬしの下僕でも構わぬぞ、一度負けておるからのう」
「いいのか?」
「その方が面白いような気がするのじゃが?」
そう言って流し目でマーシャを見る。
確かにマーシャには天使から頼まれた仕事がある、今では些細な仕事になってしまったが。
現在はそれ以上の仕事を丸投げされていたりする、神の使徒として敵対する神の使徒との戦いと言う新たな仕事まで増やされてしまった。
そこにこの地でダンジョンコアとして暮らしてきた暗黒竜が興味を待ってしまうのは仕方のない話だ。
「わくわくするの~主様」
まさかダンジョンコアの暗黒竜まで下僕にしてしまうとは思わなかったが、竜種の過去がわかったことでもう一つ仕事が増えてしまったとは、中々神も曲者だと言うしかない。
10か所あるダンジョン全て最下層にいる竜がコアから解き放たれるのを待っていると言う事を知ってしまえば、それらを放っておけるはずなどない。
10か所あるダンジョンの完全攻略を目指して進めマーシャ!




