250階層 最終クエスト
250階層 最終クエスト
女神アテナが去り一人取り残されたマーシャ、ここから帰るには帰還石かもしくは転移石が必要となる。
だがその興味からか一応周りを見回すと、先ほどの白い空間ではなくごつごつした岩だらけの空間へと変化していた。
「ここが本来の最終ボスがいる場所か…」
「何じゃお主どうやってここまで来た!」
いつの間にか目の前には250階層に本来いるであろう、この階層のボスキャラ暗黒竜ダーラスが目の前に現れた。
向こう側から言うとマーシャが突然現れたと言う事らしい。
「それはこっちのセリフだ」
「トラップを踏んだのじゃな」
「ん~そんな感じなのか?」
「まあ良い、後はおぬし次第じゃ」
「そうなのか?あんたラスボスだよな話せるんだ…」
「何じゃ質問か?話せるぞ、この階層は話だけでも戦っても良い、自分の好きにできるぞ、但し負ければ最初からやり直しじゃ」
「勝ったら?」
「それは無理じゃと思うがな」
「やって見なけりゃわからねーんじゃねーの?」
「ではやってみるか?」
「その前にこの場所は不壊の魔法がかけられているのか?」
「もともとダンジョンと言うのは壊せないようにできておる、もし壊れたとしても数分から数時間で元通りになるはずじゃ」
「う~ん、極大魔法でも良いが、それじゃ面白くなさそうだな」
「小さき者よ、おぬしの力では我を倒すことなど出来ぬと思うがな」
「そう思うか?」
「生意気な小娘じゃ、まあ良い用意が出来たら何時でも良いぞ!」
「ゴアー!」
その大きな口で暗黒竜は威嚇の雄たけびを上げる。
マーシャはそれにも動じず、代わりにストレージから★5(S×5)ランクUR階級の防具を取り出す。
聖甲ラングドシャ―メタリア:手甲に付けられた楔状の突起の形からつけられた名称。
その手甲は古の古龍から取れたとされている皮と精霊樹の木から取れた樹液で染め上げ。
虹色鋼と冥界石を融合させた金属で作られている。
ATとDFは5倍、さらに他の全ての能力が3倍になる、マーシャが作成したために聖属性が付き、暗黒系の魔物の場合追加ダメージが2倍加わる。
「もう一つ使うか…」
そう言うと今度はストレージから双剣を取り出す、長さ30センチほどの少し湾曲した剣。
神双剣ダブルオーキッド:紫魔水晶を前面にコーティングし魔頑鉄で作った★4(S×4)SRランクの剣。
勿論、切れ味は10倍、さらにHPドロップと麻痺属性の追加デバフを与えAGIとSPに5倍のアシストが付く。
やや小ぶりな剣だがマーシャの体格ならばこの大きさの方がジャストフィットと言って良い。
大剣が使えないわけでは無いのだがマーシャが本気で戦うのならばこの大きさが一番能力を発揮できるのだ。
「行くぞ!」
「タンッ!」
「シュシュシュシュシュシュシュ…」
それは一瞬の出来事、マーシャはその速さからまるで消えたようにいなくなり、そして暗黒竜はマーシャの姿を見失った。
周囲にはマーシャが動き回る足音だけがせわしなく木霊する。
そして数秒後、暗黒竜はいつの間にかその大きな体を地に伏していた。
剣の能力であるデバフで千×百のHPが毎秒削られて行く、しかも麻痺のデバフまで帯びているのだ。
「な 何をした‼」
「千回攻撃したんだがまだ生きてるとか不死身か?」
「体が動かん…」
「あ~そういう効果がある攻撃だからな」
「おぬし人なのか?」
「神の使徒らしいぞ」
「もしかして来たのか?」
「?」
「たまにこの階層に神が来るときがある、ここのダンジョン製作者は使徒だったからな」
「それは初耳だ」
「そうかならば勝てぬのも仕方ない、止めを刺すが良い」
「いや、そいつは辞めとくよ、降参した奴をいたぶる趣味はないからな」
暗黒竜は驚いた顔をする。
「フフフ ははは これはやられたのう、神もどうやらただ見ているのが退屈になったのやも知れぬな」
「何かおかしかったのか?」
「いや そうか神の使徒か われの負けを認めよう、そして最初で最後のプレゼントを受け取るが良い」
そう言うと目の前に武具一式が現れた。
そして自らの魔法で自分自身にキュアとヒールの魔法を掛ける。
「なんだ自分で直せるんだ」
「もちろんじゃ、そうでなければラスボスはつとまらん」
「それにしてもこんなにもらって良いのか?」
「かまわぬ、負けたのじゃからな」
「そうか、では遠慮なく頂いておくよ」
鑑定すると全てSSの武具、大剣ダークローズ、暗黒鎧デスガード、闇の指輪マジューラ、ブラックスーツ女性用、魔法のアイガード、黒装ダークブーツ。
闇の女王のティアラ、そして宝石の数々。
「さすがラスボスの討伐記念と言うとこか…」
「本来ならば2つまでじゃが、今回は手も足も出なかったのでな、大サービスじゃぞ」
「なんかわりーな」
「じゃがどうやってここまで来た、その様子じゃと…やはり神か?」
「ああその通り女神アテナだって言っていたぞ」
「何じゃそれならば早く言ってくれてもよかったのじゃが」
「もしかして会いたかったのか?」
「ここは退屈じゃ、昔頼まれてここを任されては見たが、初めの数百年は何度か攻略しに来た者もいたがここ千年はさっぱりじゃ」
「じゃあお前は天然ものなのか?」
「元はランデス島と言う島で暮らしておった、闇の瘴気が強い島でな、人が住めない土地じゃ、いつの間にかそこに飛ばされた、元はこの世界とは別の世界にいたのじゃがな」
「と言う事は召喚者か?」
「そのようじゃな、おぬしもか?」
「ああ私は転生者だ」
「フムフム、何やら神の策略を感じるのう」
「あんたはここでずっと暮らすのか?」
「契約でな、出るわけには行かんらしい」
「契約か…それならどうにかなるかもしれないな」
「本当か?」
「多分神との契約と言うのは人で言う奴隷契約と同じなんじゃねーか?」
「多分全く同じでは無いじゃろうが、あまり違いはないかもしれんな」
「やってみるか…」
要するに契約解除の魔法が使えればそれで何とかなる、マーシャは神から色んなスキルを渡されており、先ほどもアテナからプレゼントを渡されたばかり。
神になれると言う指輪…
だがその代わり問題が一つある、確かダンジョンは最下層のボスを攻略すると消えてなくなると言う話。
「その前に質問だ、あんたがいなくなるとこのダンジョンは消滅するのか?」
「それなんじゃが、ここを作成した使徒が言うにはなんでも魔力が足りないと言う話じゃ」
「あんたの魔力が足されてようやくダンジョンが形を成していると言う事か…」
「そのようじゃぞ」
「分かったそれなら!何とかなるぞ」
「ホントか?」
「ああ」
マーシャはストレージの中に沢山魔石をしまい込んでいる、多分この国にある魔石の10%を超えているのではないだろうか。
その魔石を目の前に出すと、錬金魔法を使用して極大の魔核を製作する。
「これでどうだ!」
「これをどうするのじゃ?」
「あんたがこいつに魔力を移すのさ、そこにあたいの魔力を足して分身を製作する」
「そんな事可能なのか?」
「まあみてな」
FA値1000を超え学問の神から授かった指輪で神と等しくなったマーシャ。
それならば契約も解除できるし分身を作りそこに魔力を注いでダンジョンをなくすことなく暗黒竜を連れ出すこともできる。
「ん~~これでどうじゃ」
「約半分と言う所か、何とかなりそうだ、そんじゃいくぜ!」
「…わが身の魔力を使いこの地に竜の姿を顕現せよパーフェクトコピー!」
約100キロほどの黒い魔石を生成して作られた魔核、その姿が光に覆われると徐々に変化していく、まずは大きく広がり、そしてマーシャの情報を取り込んだ巨大魔核が暗黒竜ダーラスの大きさと同じになって行く。
さらに変化は進みまるで双子のような竜の姿が現れた。
「こんな姿だったか?白くないか?」
そうマーシャは聖属性、作成する物はほぼ聖属性になってしまう。
「文句言うなよ、あんたにゃできない事なんだからこのぐらいはしかたないだろ!」
「そんじゃ命令するぜ、お前の名は神聖竜キヨルカ、これからこの地を見守り統べる最下層のボスとなれ」
「かしこまりました主、後はお任せください」
「さて後はあんたの契約解除だ!」
「汝の契約を我が力を持って解除する、キャンセル ア コントラクト」
暗黒竜の周りに網状の魔法が浮き上がり、マーシャの契約解除魔法が暗黒竜の足元から過去の契約を消し去って行く。
「どうだ!」
「お~こんな日が来るとは…」
「だがこのままでは地上へは出られねーな…」
「地上に我と同じ種族はおらんのか?」
「今のところ見たことはねーな、だから人型に変身したりは出来ねーか?」
「それならば可能じゃ!」
暗黒竜ダーラス実は性別が女だったりする、竜の姿だとオスかメスかはよくわからない。
契約は無事解除できたが、その姿で地上に出ればどうなるのかはすぐにわかる。
暗黒竜は魔法を唱えると、徐々に小さく人型に変化していくと中々立派なボディを持った女性が姿を現した。
「変身 めたもるふぉう!」
「♀だったのかよ!」
「わるいか?」
「だがそのまんまじゃまずいな」
暗黒竜ダーラスもとい竜人ダーラ、一応暗黒竜だったと言う事は隠さないと地上で暮らすのはまずいので、名前も変えておくことにした。
その外見は身長180センチ以上はあり、フロウラとどっこいどっこい、そういえばフロウラに着せて見ようと作成した下着とドレス一式が、ストレージにいくつかあったのを思い出した。
「これを着てみな」
「綺麗じゃな」
「ふむふむ、下着は少しきつそうだな、エクストラフィッティング!」
「おお~これは良い」
「ブラも直して置こう」
身長182センチそしてB98W63H96体重65、頭には黒い角が2つ髪の毛は黒いが肌は白い。
あの外見から見たら肌は黒いものとばかり思っていたが、どうやら先ほど作成した身代わりの姿が彼女の変身に影響したのかもしれない。
下着にそしてドレス、フロウラに着せるつもりだったドレスの色は何色かあるが、竜人に変身したダーラスには黒いドレスを着せてみた。
「これは…」
「中々似合うな」
「そうか?」
「これで見てみればいい」
マーシャは1メートルほどの姿見をストレージから出すとそれをダーラの前に置く。
「これが我が姿か?」
「人型にはなった事あるんだろ?」
「あるにはあるが昔はこんな姿だとは思ってもみなかったのじゃ」
「さーて、そいじゃ地上へ出てみるか、この時間だと皆もう1層に行っている頃か…」
「行ってらっしゃいませ」キヨルカ
「じゃ後は頼んだぞ」
「お任せください」
「転移1階層!」
午後7時久々に見る地上には晴れた夜空に星が瞬いていた。




