60階層 神降臨
60階層 神降臨
マーシャの重力魔法でさらに重くなった大剣ゴッドブレイカー。
勿論その剣技もさることながら、1トン近くになった剣の威力に対抗できる魔物はめったにいない。
それこそ竜種でもない限り耐えることなど難しいだろう。
「これでどうじゃ!」
「ズシャ!ズバンッ!」
『フハハハハ、さらばじゃ!』
60階層ボスの攻略はマーシャのチートスキルと聖剣によりなんとか攻略を完了した。
だが土埃が晴れると、そこには今までと違う景色が現れる。
それは予期していたことだ、天使が話していた神が会いに来ると。
真っ白な世界、そこはちゃんとした空間であり壁も床も存在している。
そしてマーシャが前を見るとその生き物いや生き物なのだろうか?それは存在していた。
「龍?」
【よく来たな】
その姿は竜の様だ、マーシャと比べるとその差はとんでもなくでかいのが分かる。
だが伝説の竜だとしてもあり得ない、金色の竜など。
「これは神のいたずらか?」
【さすがじゃ神の御子、ここは250階層最後の敵となるドラゴンの間】
「なぜ妾が250階層にいる?最後は竜と戦うのか?」
【そのようじゃな】
「おかしい、転移魔法か?だがそんな仕掛けは無かったはずじゃ!」
マーシャは当然のことながら鑑定魔法を放ち金色の竜の情報を得ようとする、そこにはラスボスのステータスデータなど一つもなかった。
「おまえ…神か?」
【うふふ、ばれちゃったか~】
鑑定魔法で見た情報そこには仮の姿とあり、神の擬態と書かれていた。
勿論スペックなどは∞(無限)の印が付き、戦ったとしても勝つ見込みのないデータが記されている。
【この姿だと話しにくいかしらね~】
「これでどうかしら」
そう言うと目の前には神々しいほど美しい女神の姿が現れた、今度は光があふれるように輝いている。
「きれいに見えているかしら~、一応あなたの記憶の中にある女神の姿を使っているのですけど…」
「いやそんなことはどうでもいいんだが」
「え~やっぱりかっこよく美しく見えた方がよくないですか~」
「話聞いてっと残念なお姉さんにしか見えねーんだが」
「あ~らごめんなさ~い、貴方の生前いた世界の言葉使いをまねて見たのよ~」
「残念ゴットと呼ばれたいならそのまんまで良いけどさ~、で 何の用?」
「まあセッカチなんだから~」
「話があんだろ?」
「え~と今ね、天界で少し派閥争いって言うのが流行ってしまったのね~」
「はやり?」
「神様も数人いると退屈してきたときにゲームを始めたりするのよね、特に男神はそういう傾向が強いわ」
「へ~それで?」
「あなたが天使に頼まれたのもその神の仕業なのね」
「ぶっちゃけどの神?シバキに行きたいんだけど」
「あ~え~と戦いの神 戦神のトールちゃんかな…」
「そいつだけ?」
「ハルチャン鋭いわ~もう一人は学問の神ね ヘラスちゃんていうの」
「まだいるんでしょ」
「す すごいわそこまで分かるの?神様よりすごいかも…」
「もう一人は呪いの神 ダークちゃんこの子が実行犯ね」
女神はアテナちゃんと言うらしい、よくある話だ。
そして転生を司っているのはゼウスちゃんで、最初戦いの神と学問の神で言い争いが起き。
ゲームをすることになったわけだが。
その勝負とは神が選んだ人族をお互いに戦わせようと言う話。
そしてそこへ呪いの神が計画に参加し、下界の人族を選定しダークがもう一人の転生者を嵌めて、私が通る場所へと移動させ突き落としたと言う話。
しかも私は学問の神様のお気に入りだったらしく、呪いの神はいつか邪魔してやろうと狙っていたのだと言う話だった。
神のお遊びに付き合わされて人生を台無しにされたのだ冗談ではない。
「それで?それを私に伝えるだけじゃないよね」
「すごーい、やっぱりヘラスちゃんがほれ込むのも仕方ないわね~」
「いい加減本題に入りたいんだけど」
「あ~そうそう、貴方の仕事の話ね、請け負ったのはスキルの回収なんだけど、それはどうでも良くなったと言うのが一つ」
「それはアホ天使からも聞いた」
「代わりにやってもらいたい仕事の一つは、もう一人の転生者と戦って勝つことよ」
「その話こちらのメリットは?」
「え~とナイショ」
「ざけんなよコラ!」
「バチン!」
「グッ離さねえぞコラ!」
「いたい~ 痛いから離して~」
「ふざけてっと神でもゆるさねえゾ」
「待って もうちゃんと話させて~」
何かのバリアが張られているのか女神の首を掴んだところガード魔法で弾かれたはずだが、マーシャの手はそのまま掴み続ける。
「あ~ん私部外者なのに~暴力反対~このままじゃお話しできないよ~え~ん」
「わ 分かったから泣くな!だがここじゃなんだ茶でも飲みながら話すか?」
「えっ!ホント?そうしましょ!」
この女神の話し方だと後1時間はかかりそうだ、先ほどまで魔法を使い60階層のボスとやり合っていたため能力は最大にしてあるが、気分的な疲れはそのまま残っていたりする。
長話になるのなら立ったままと言うのも落ち着かない、時たま女神から少しふざけたような話し声を聞くとムカッと来てしまうのだから、どこかで座って話した方が良いと思うのは当然だろう。
マーシャはストレージから小型の別荘を取り出すと250階層のグラウンドに設置した。
「すごーい、貴方も神になったらいいのに~」
「面倒くさい事増やされるんだろ」
「たまにはね~」
「入って」
「おじゃましま~す」
「ギイ バタン」
小型の別荘と言っても普通の一戸建てよりは広い、2階建ての1階部分はキッチンとリビング、そしてダイニングが有り約50坪はある。
2階は4部屋あり、もちろんベッドも付属している。
「そこに腰掛けて」
「は~い」
マーシャはキッチンに入ると戸棚からこの世界で一番おいしかった紅茶の茶葉を取り出し。
魔法でお湯を沸かすとポットへと移す。
数秒で良い香りがキッチンからリビングへと漂ってくる。
「いい香りね~」
「神様でも分かんだ?」
「分かるわよ、たまに貢物なんかは手にはいるから、でも常に手にはいるわけじゃないのよね~」
「へ~そうなんだ」
ストレージからさらに特製のお菓子を取り出す。
「どうぞ」
「ズズz…」
「ぱくっ!」
「おいし~なにこれ?」
「フローズンしたレーズンにクッキーをクラッシュした粉を振りかけて魔法で固めたんだよ」
要するに甘納豆の原理を大きめのレーズンで行い、魔法を使って小麦粉の粉をまぶしたものと考えて良い。
甘く少し酸っぱい果実のお菓子、女神の手は止まらなかった。
「美味しかった~」
「まさか全部食べてしまうとは…」
「ご ごめんなさい久しぶりで~」
「まあ まだあるからいいけど」
「まだある?」
「今日はここまでだ、もう出さね~よ」
「え~けち~」
「その前に言いたいことが有んだろ」
そう言うとようやく我に返ったのか、ここまでのいきさつを詳しく語りだした。




