51階層
51階層
食事が終わりマーシャの指導の元全員で魔法の訓練を始める、すでに日課になっている魔力枯渇訓練法。
それが終わると今度は武術の訓練、あまり時間を取ると返って疲れてしまうのでこの日はほどほどにそれらを行う。
食後の訓練を終え午後10時になり、各自持って来た毛布を床に敷いて眠りにつく。
先ほどまで談笑していたが数人が眠くなると、つられて他の者達もようやく寝る準備を始める。
ダンジョンの安全地帯、円形の帰還魔法陣があるこの場所だが。
広さは思ったより確保できている、この人数の為壁を背にすると隙間はそれほど無い状態になってしまうのは仕方がない。
もしかしたら1パーティー20人が攻略人数の限界なのかもしれない。
「姫様ここからは攻略地図にも載っていない場所になりますね」リリアナ
「そのようだな」
「どうなさいますか?」フロウラ
右にリリアナが寝転がり、左にフロウラが腰を下ろしている。
トラム王子とリンダ嬢がペアで少し離れた場所に寝ており魔族の3人も反対側に固まって寝ている。
最初に組んだチーム別にそれぞれが今日の疲れを癒すべく、明日に備え固まって寝るようになった。
確かに51階層以降の情報は無い、魔族側も50階層のボスは攻略できなかった。
50階層ボス部屋で戦ってみたが、死に戻ったと言う事になっている。
だがその昔200層まで踏破した魔族がいるとも聞いている。
ではその記録が何故ないのかと言うと、その魔族は隠匿スキルと俊敏スキルに優れ。
200層までほぼ無戦闘で走り抜けたと言う、ではどうやってボス部屋をスルー出来たのかと言う事になるが。
全部のボス部屋を踏破したのではなく、即死のスクロールや復活魔法などを駆使し。
最後は罠のある転移部屋を引き当て200層までたどり着いたと言う話だ。
確かにそれならば200層へたどり着いたと言うのもあながち嘘とは言えない。
すでに一度マーシャは即死スクロールを手に入れたことがあるし、一度使っても見た。
その効果がどのレベルの魔獣まで使えるのかは不明だが、手に入れられればかなり下の階層まで攻略を進める事ができるだろう。
この後はリリアナ、そしてフロウラと話し、前回と同じ攻略方法を採用することになる。
いわゆるマーシャの殺戮作戦。
先頭をマーシャが進み後ろから魔法でガードしつつ攻略していくと言う方法。
どんな魔物が出たとしても、マーシャが一人で戦闘するならばチームメイトにかける心配は極力少なくて済む。
途中、マーシャの鑑定眼を使い仲間が倒せるレベルならばその都度教えると言うことで話が付いた。
「そういう作戦で行く方が安全じゃな…」
「もう少し私たちが強くなればマーシャ様の手を煩わせなくても良いのですが…」リリアナ
「それは最初から分かっていたことじゃ、敵の強さが分かれば今後は自分たちの力量でできる階層から始めればよい」
「では明朝、皆へ伝えますね」リリアナ
今現在マーシャ以外で5人程度のチームを組んで攻略できる階層は45階層までがギリギリと言う所だろう。
その前に40階層のベヒーモスを倒せるかと言う事もあるが、攻略方法さえわかれば後は回数を重ねれば何とかなる場合がある。
特に32階層の死神から取れた即死のスクロール、これがボス部屋でも通用するのなら。
32階層で死神を倒しまくってレアドロップを沢山入手すると言う方法がある。
そうできれば攻略はかなり下層まで進める事ができる。
「もう11時か、そろそろ我らも寝るとするか」マーシャ
「はい姫様」リリアナ
「お休みなさいませ」フロウラ
明朝、6時になり昨夜の疲れをほぼ癒したチームマーシャは、手分けして朝食の支度を始める。
朝は基本的に紅茶とスープ、そしてサラダとサンドイッチ。
サンドイッチはかなりの量、作り置きを持ってきたので2日間までの攻略ならば少し余るくらいだ。
食事が終わるとテーブルや入れ物をかた付け、最後に手や顔を魔法で洗い装備を点検する。
「問題ありません」リリアナ
「こちらもすぐいけます」チャッピー
「点検完了です」ロッド
「行けます」グロシュ
「忘れ物もございません」フロウラ
「姫様号令を」ラランカ
「では妾が先頭で敵をかく乱する、倒せるような魔物ならば皆に任せる、魔物のランクによっては妾が蹂躙する、妾が全てすることになっても油断はするな」
「はい!」
「出発!」
51階層転移魔法陣の広間から細い回廊を進んで行くとそこは石積の回廊。
つまりは迷路のような場所だった。
49階層までがほぼ自然ともとれる場所が多かったので、目の前が閉鎖された空間は久しぶりと言う感じだ。
砦や王城の地下通路に似ている。
だがその広さは縦横1kにも及ぶ巨大迷路だった。
「所々に部屋のような場所があるな」マーシャ
「ルームサーチ」リリアナ
通路にいる魔物の存在をマーシャが広域索敵で確認、部屋の中はリリアナがサーチ魔法で魔物の存在を確かめていく。
どうやら部屋の中はグールの群れかもしくはレイスの群れ。
グールは戦闘職に任せ、レイスは魔法職が交互に攻略していく。
どの部屋も基本的には今まで出たことのある魔物ばかりだが、その数が数倍と言う数。
とてもではないが部屋の戸を開けて中に入るのはやや難しかった。
魔物達はこちらを感知するとすぐに部屋の出口へとひしめき合い進んでくる。
そして一番面倒なのが、たまに部屋の奥に階段が現れる事だ。
階段の下には何があるか分からないため基本的には放置するしかなかった。
一人ずつしか通れそうもない下へと降りる階段、もしトラップだった場合、偵察に行く仲間は即・1階層へ死に戻りになる可能性がある。
「部屋の中に階段が有っても今回はスルーする、そこに下がり階段があると言う確認だけにしておくのじゃ、罠にかかって全滅でもしたらここまで来たかいが無いじゃろうからな」
「はい」
先頭を行くマーシャの検索魔法によりほぼすべての通路は明らかにされ、部屋の中にある階段やトラップがある場所は全て特定できた。
そして出口近くの部屋には最後のトラップ、聖騎士隊からも聞いていた黄金の宝箱がその部屋にあり。
鑑定魔法で調べると、その宝箱には転移魔法が仕込まれていることが分った。
勿論その部屋は後回しにしておく、もし欲を出して触れようとすればどこに飛ばされるかもわからない。
ほどなくして一行は52階層へと向かう扉まで到達する、結果としてお宝部屋で下心さえ出さなければ51階層は楽に攻略できると言う事になった。
但し、下り階段部屋が2か所と最後の黄金宝箱部屋の計3か所が※印記載の場所と言う形で地図に記された。
「攻略地図に記載事項が増えたな」カバネル
「あ ほんとだ」チャッピー
「この地図は自動で新たな階層の情報を埋めてくれるようじゃな」マーシャ
52階層から先の攻略は下心さえ出さなければかなり楽に進むことが分った。
それから先の階層はほぼ草原や墓場そして岩だらけの洞窟が交互に現れ。
出現する魔物は数こそ多くなってきたが、今まで出現していたことのある魔物が出て来るだけだった。




