50階層 ボス部屋
50階層 ボス部屋
やや疲れ気味の一行、49階層では魔法も物理攻撃も全部躱されるし蓮の花までは攻撃が届かないし。
殆ど防戦一方になってしまった。
「ギガフリーズでも行けたのでは?」ミミー
「いや、カエルは温度差に強いと言う話じゃ」
カエルは寒いと冬眠する、しかもマイナス30度ぐらいでは死なないと言う話も聞いたことがある。
花も同じく凍らせただけでは死にはしない、だからギガフリーズだけでなく爆裂魔法や風魔法のカマイタチなどで凍らせた魔物を砕く作業が必要。
そして水の中にいるカエルまではその魔法では殺せない。
「ああ確かに水の中は無理ですね」クロイス
「いやー疲れたな、前衛には手も足も出ない階層だったな」トラム
「やはり魔法は必要でしょ」チャッピー
「2学期からは魔法の受講多くしておく方がよさそうだな」ロッド
「仕方がないそうしよう」カバネル
王国アカデミーの高等科は選択授業を学期により変更可能だ、但し前期で取っている科目の半分以上の科目について論文を出さなければならない。
勉強しないものがあれもこれもと受講することができないようになっている。
ちゃんと段階を踏んでしっかり身に付けるようになっているのだが。
前衛職のロッドやカバネルは基本魔法関係の授業はアシスト魔法と治癒魔法の授業しか今は受けていない。
もしもそこに土魔法や水魔法の授業を加えるのならば、最低どちらかの授業に対してしっかりと論文を書いて出さなければいけないと言う事になる。
さらに武術の授業は現在4種受講している為そのうち2つの科目を試験で合格する必要がある。
武術の試験はテストと実戦で行われる。
現在彼らが受講している武術は、(槍術・剣術・体術・盾術)の4種、この4つのうち2つの科目で1段階合格の証明書を提出することになる。
「ダンジョンが終わったら忙しくなるな」ロッド
「だが方向性が決まれば集中できていいかもしれないぞ」カバネル
「あたしたちも次は武術も少し取った方が良いかもね」チャッピー
「私は弓術と体術取っているけど、魔法も必要みたいだわ」ロジー
「来期はそれぞれに足りないことを学ぶようじゃな」マーシャ
「マーシャ様はどうするのですか?」リリアナ
「やることはさほど変わらぬが…」
「舞踏術」フラン
「そ それは…」
「マーシャ様まだ舞踏術は習っておりませんよね」フラン
「妾がそれを学ぶと、おぬしの存在が無くなるとは思わぬのか?」
「え?そ そうでしょうか?」
「学友と言う立場は変わらぬが、おぬしに教えてもらえることの一つが舞踏術なのじゃがな」
確かに2年前8歳の時にフランは舞踏会に出る為他の先輩メイドから毎日しっかりと舞踏会で踊るための作法を覚え込まされていた。
マーシャが舞踏術を学院で学ぶと言う事は、フランが教えることも無くなると同時に。
フランの立ち位置は学友と言う部分しかなくなってしまう、そうなるとマーシャのメイドと言う立場から外される可能性が高くなって行く。
マーシャはその部分を少し強調してフランに話を振った。
「マーシャ様~捨てないでください~」
「では舞踏会についてはおぬしが妾に教えると言う事で良いな」
「はい~」泣き
「あまり余計な事を言う物ではないぞ、そうでなくてもやらなければならぬことが多いのじゃ」
「うふふ」フロウラ
剣術・槍術・体術・盾術はもちろん魔法や薬草学などを含めると10項目以上を学んだり教えたりしているマーシャ。
マイスターの称号も有るため、学園からたまに講義まで頼まれていたりする。
一つ学ぶための講義を増やすとその負担はかなり大きくなり、今回みたいなダンジョン攻略を行う暇など無くなってしまうのだ。
「そろそろ用意は良いか?」
「はい」
「50階層が終われば本日の攻略は終了じゃ、51階層の転移魔法陣に置いて野営をすることになる、では50階層のボス攻略を開始する!」
その扉は両開きの大きめの扉であり、今までの階層ボス部屋とは違っていた、攻略地図に書かれているボスの名は骸骨王。
その名の通りならばスケルトンキングと言うのだが、当然王と言うならば王冠を頂く高貴な感じになるのだが。
攻略地図には他に※印が幾つか書かれており、それが何を指すのかまでは分からなかった。
「骸骨王のほかにも出るみたいじゃ、初めに神聖魔法で攻撃、後は皆に任せる いくぞ!」
「おう!」
重厚な両開きの扉を開けると、久々にドーム状の石作りコロシアムが現れた、そしてその奥には同じような石作りの椅子が3つ、そこには真ん中に王冠をかぶり赤いローブを羽織った骸骨王が座り、その右側には少し小さめの冠をかぶった骸骨が。
そして左側にはきらびやかな杖を持った骸骨、合計3体の骸骨が石の椅子に座っていた。
「真ん中が骸骨王じゃな、左は妃で右が将軍かもしくは宰相と言った感じか」マーシャ
「周りにいる鎧の騎士は?」トラム
「あれも動き出しそうじゃな」
石作りのコロシアムその外周には等間隔で鎧を着た騎士が立っている。
どう考えても飾りと言う感じでは無く今にも動き出しそうだ、その数24体。
「全部で27体の敵か、しかも宰相は魔法を使うとみて良さそうじゃ」
「プロテクション、フィジカルアップ、リジェネレーション」リリアナ
「ホーリーガード、プロテクション、ガードアップ」フラン
「アタックアップ、ガードアップ、シェル」チャッピー
魔法職がバフを掛けていく、ちょうど入口から広いコロシアムの三分の1まで中央に向かい進むと骸骨王の眼が赤く光り動き出す。
「来るぞ!」トラム
「来い!ガシンッ!」リンダ
こちらも対抗する為扇状に散開する、中央に魔法職それを守るように前衛6人が広がると骸骨王より前に周りの鎧騎士たちが動き出した。
「ガシャンガシャン!」
「ガシャンガシャン!」
24体の鎧騎士がその手に槍や剣を持ちこちらへと迫って来る。
「ガシャンガシャン!」
「まず軽く挨拶をしてやろう、ホーリーランス!」マーシャ
「ビシュン!」
「カイン!」
「弾いた!」
「魔法耐性の鎧か!」
マーシャの放つホーリーランス、魔族のダンジョンオーガも纏めて3匹は屠る威力があるのだが鎧騎士には刺さるどころか鎧に弾かれてしまった。
「ならばこうじゃ ホーリーアップターンアンデッド」
浄化魔法に段階があるならばその位を上げるのは常識だが、聖魔法も初級中級上級とさらに上が有ったりする。
殆どが魔法使用時に必要なMPの使用量によるところだが。
マーシャの使える聖魔法は現在超最上級魔法までが使用できる。
皆の手前それを使用するのはできるだけ避けたいところだ、ならば上級魔法までで留めることにする方が良い。
魔法のアップグレードは縦にランクを上げるのと横に増やすと言うやり方がある。
威力はそれぞれに異なるが使い勝手によるところも大きい。
マーシャは浄化魔法を1段階上げる魔法で対処できるか確かめることにしたようだ。
「ウオ~」鎧騎士
「もう1発!ターンアンデッドダブル」
ちょうど3発のターンアンデッドを喰らって最初の鎧騎士がその動きを止め崩れ出した。
「ガシャガシャン!」
「やったか!」
「ギャリンキャイン!」
「こいつら鎧が硬くてだめだ」ロッド
「受け流して何とか耐えろ!」トラム
「分かった!」
鎧騎士を足止めしその間に魔法職が聖魔法や重力魔法で鎧騎士を無効化する。
「ターンアンデッドターンアンデッドターンアンデッド!」フラン
「ホーリーガード、ホーリー」リリアナ
「ターンアンデッド…」チャッピー
徐々に目の前にいる鎧騎士は数を減らしていくのだが、鎧騎士を半分やっつけた所で今まで椅子に座っていた骸骨宰相が魔法を使いだした、しかも召喚魔法。
「&‘%%$%#&%」
「ズズズズズ」
すると今度は骸骨兵士が床から5体現れる、しかもこちらが3体倒すごとに5体召喚されると言う。
「まずいな、これではこちらが疲れてしまうぞ」トラム
「キュキュキュ」小竜
(私にお任せください)
「何じゃと!」
今までマーシャの肩につかまりおとなしくしていた生まれたばかりの小竜が念話でマーシャに語り掛けた。
「分かったおぬしに魔力を注げばよいのじゃな…」
「姫もしかしてその子?」チャッピー
「皆少し頑張ってくれ、試してみる」
そう言うとマーシャは小竜に自分の魔力を注ぎ始めた。
すると、肩に乗っていた小竜が光り出す。
「キュキュ~~」
光があふれだすとその光が目の前へ移動し徐々に長細く形が変わって行く。
「シュウウン」
「剣になった!」カバネル
マーシャはその剣を手に取ると、今度は剣が念話で話しかけて来る。
(私の力をお使いください黄泉から召喚された魂は全て浄化することができます)
「本当か!」
「姫、もう持ちません!」ミミー
「く~きつい…」
マーシャは飛行魔法を使い鎧騎士と骸骨戦士の真上へと飛んだ。
「この位置からならいけるじゃろう、去れ!」
「ブシュン!」
水龍剣から放たれた浄化のパワーが真下にいる魔物に対し水の飛礫のように飛散すると、そのしぶきを浴びた骸骨戦士や鎧騎士がバタバタと崩れ出す。
しかもいっぺんに10体以上。
「ガシャガシャガシャン!」
「おお」クロイス
「いけそうじゃ」
マーシャは床に足を付けると向かってくる骸骨兵士を纏めて切り裂く。
切り裂くと言うか水龍剣のスキルと言って良いだろう、その刃先から聖水のようなものが噴出し相手に作用するらしい。
「行くぞ!ホーリーレイン」
「おお~」
「続け!」
骸骨戦士と鎧騎士を全部屠りさらに中央まで進むとようやく骸骨王達が椅子から立ち上がり。
同時にその3体が魔法の詠唱を始めた。
「ゴゴゴゴ…」
「今度はなんじゃ!」
現れたのはグールそしてガーゴイル、さらにおまけの骸骨兵士達。
だがマーシャが手に入れた剣の力はそれらを全て数回、水龍剣を振るだけで屠ってしまう。
「ビシュン!」
「バタバタバタ…」
「ビシュン!」
「バタバタバタ…」
「これでどうじゃ!」
そして敵の隙をついて骸骨王及び妃と宰相3体に向けて水龍剣を払う。
「ビシュ!」
「ビチャビチャ!」
「オオ~~」
「王様だけはびくともせんか?妾の力を見せてやる!」
さすがに骸骨王だけはその大きめなローブで水龍剣が放つ聖水を防いでしまった。
だがマーシャはさらに追撃する。
「ダンッ!」
床を蹴ると骸骨王の頭から一気に水龍剣を振りぬく。
「ガシュン!」
その剣筋を見て誰もが思った「真っ二つかよ!」
骸骨王はその冠と共に真っ二つに切られ左右に分かれながら霧へと変わって行く。
勿論マーシャだからできた事、他の剣士が魔法剣でやったとしても避けられるかもしくはガード魔法で切る事さえできなかっただろう。
「ウオ~~」
「やったか?」
骸骨王がやられたと同時に部下である骸骨兵も召喚されたグールもその姿を霧へと変えていく。
「ようやく終わったか…」トラム
「はい」ラランカ
静まり返る50階層ボス部屋、床にはおびただしい数のレアドロップの数々。
殆どマーシャにより倒された骸骨達。
そこには帰還石やポーションはもとより復活のスクロールや聖なる雫(聖水)なども残されていた。
そして3体のボスを倒して得られたレアドロップ品がこれだ。
闇魔獣召喚杖:宰相からのレアドロップ品、魔物を召喚できる、所持している者の魔力に依存する。
闇魔法+50聖魔法耐性マイナス10%各魔法出力+10、DrHP(HP毎分マイナス10)販売価格大金貨40枚
骸骨王の指輪:致死性攻撃を3回防ぐ、自身のDrMP(MP毎分マイナス10)DF+200、販売価格大金貨20枚
美魔女のコサージュ:パッシブ(常時)でチャームが発生する、魔法耐性+10魔法付加+10、販売価格大金貨10枚
骸骨王の大剣:骨で作られた大剣、闇属性を吸収し育つ、闇魔法+100聖魔法耐性マイナス10、一振りするたびに闇の兵士を3体召喚。販売価格大金貨50枚
婚約指輪:白金製、20ctダイヤ及び各種宝石、販売価格大金貨100枚(1600万円)
宰相の指輪:IT+100、DF+40、販売価格大金貨20枚
転移魔法のスクロール:行きたい階層へと転移できる、同時に20人まで。
賢者の石:通常魔石の20倍魔法を込められる、加工して杖に使用可能、販売価格大金貨50枚。
※Dr(ドロップ・毎秒MPもしくはHPが減って行く)
各種スクロールとポーションETC
「レアドロップはさすがに闇系統が多いようじゃな」
「その剣なんです?」チャッピー
「骸骨王の大剣と出ておるな、振る度に骸骨兵を召喚できるらしいぞ」
「…幻の剣じゃないですか?」グロシュ
「そうなのか?」
「まあこの剣は物騒じゃからお蔵入りじゃな」
「え~」
「もしこんな剣を悪い奴に持たせてみろ、魔物だらけにされてしまうじゃろう」
「確かに…」クロイス
手に入れたやばそうなお宝全部がマーシャに所有権があるため、マーシャが売らない限り闇に毒された人間が出る事はないだろう。
だがこんなお宝が他のダンジョンでもし出るのであれば、悪いことを考える奴が手に入れれば世の中は又魔物がはびこる世界になってしまう。
ちなみにボス部屋のレアドロップも最高ランクのお宝が出た場合その階層は2度と同じレアドロップは出ないようになっている。
ダンジョン攻略その1 完
50階層骸骨王とその臣下を屠り数々のお宝を手に入れたのだが、問題なのはこの先だ。
攻略地図には50階層までしか魔物の情報は書かれておらず。
51階層からはどんな魔物が登場するのかは分からない。
だが本来ここからが冒険であり、ここからがダンジョン攻略の醍醐味と言う所だろう。
但し50階層までの序盤は余裕だったのだが60階層のボス部屋でとんでもないことが起こる。
マーシャはアクシデントをどうやって防ぎ、そして仲間はどうなるのか?こうご期待。




