45階層
45階層
そこは見渡す限りの草原、そして地面は丘のようになっており高低差は5メートル前後。
登って行くと今度は下り、まるで砂丘のような草原だが2回ばかり丘を登るとその向こう側にはユニコーンの群れが牧草を食んでいた。
「いました」
「全員戦闘態勢」
「ディフェンスアップ、アタック、フィジカルアップ」
そこには30頭ほどのユニコーンと群れのボスであるユニコーンロードがいた。
こちらの姿を確認するとロードが大きく前足を上げ鳴き声を上げる。
「ブヒヒヒーン」
「ヒヒーン」
「ヒヒー」
「ヒヒヒーン」
ユニコン全体がこちらを向くと一斉に走って来る、丘の坂だと言うのにその速さはまるで衰えない。
まっすぐにマーシャ達の方へと向かってくる。
「まずは一撃喰らわせてやろう」マーシャ
「サンダーアロー!」
ひときわ大きいユニコーンロードめがけて雷の矢が走り抜ける。
「バリバリバリ!」
「ヒヒヒーン」
「バシン!」
「雷を嚙みつけおった!」
マーシャの放った雷の矢をユニコーンロードはその口で噛みつき受け止めてしまった。
「マジか?」カバネル
「次は私が!」リリアナ
「マッドウォール!」
ユニコーンたちの目の前に土の壁が立ちはだかるが、彼らの勢いは衰えず。
土壁を粉砕して突き進み、とうとう目の前10メートルまで迫って来た。
「バリア!」
「ディフェンスアップ」
「エクストラガード」クロイス
それぞれが防御魔法を掛けるとユニコーンを受け流す。
彼らが突進してくるのをもろに受け止めれば通常の防御などひとたまりもない。
だが受け流すならば半分以下のダメージで済む。
地形も利用してマーシャ達は丘の上から少し下がった所で待ち受けていたしかも固まるのではなく横並びに受け流す。
案の情ユニコーンたちはマーシャ達を吹き飛ばすところまではいかず丘の下へとジャンプした形となる。
「今じゃ後ろから追撃」
「ホーリーアロー」
「ウィンドカッター」
「アイアンバレッド」
「チェンジグラウンド、タイプマーシュ!」リリアナ
後ろからの攻撃と地面のぬかるみにより30頭いるユニコーンの半分が足を取られ。
ずぶずぶと土の中へとはまり込む。
「行くぞ」カバネル
「おう!」
カバネルとロッドは残りのユニコーンへ向けて攻撃を仕掛ける。
半数を魔法で作られた沼に取られるが、それでもまだ戦う意思を捨てずに向かってくる。
「バキン!」
「キン」
「ズシュ!ザシュ!」
沼に足を取られた仲間を見捨てられないのか仲間のユニコーンはその場で円陣を組むようにしてこちらの攻撃に備えだすが。
スピードを失ったユニコーンにはもうなすすべは無かった。
但し1頭だけはその力を失わずにマーシャ達の攻撃をことごとくパリィ(躱す)する。
「なんだこいつ、全部避けやがる!」
胴体は馬の3倍はある大きな黒いユニコーン、もし攻撃が失敗するとその前足の餌食になるのは必至。
全長5メートル高さ3メートル以上はある黒いユニコーン、よく見るとたてがみと角は白かった。
「ヒヒヒーン」
「ズシンズシン」
その大きな体でこちらの攻撃を受け流し、角でこちらを攻撃して来る。
そのたびに盾を使い受け流す、後ろからの攻撃は、大きな尻を上下に揺らし後ろ脚を突き出す事で中々こちらの攻撃もロードの体には通らない。
「マジカルウィップ」リリアナ
「パシン!」
「ヒヒーン」
何処から取り出したのか、リリアナはその手に大きめの鞭を持っていた。
その鞭を使いユニコーンロードに攻撃を仕掛けるが。
この時を見計らっていたのか、地面から一斉にソウルイーターが湧き上がった。
「出たな」
「ホーリーウィンド」フラン
「ホーリーアロー」チャッピー
数十匹のソウルイーターだが、魔法職の聖魔法を浴びてその影はどんどん減らされて行く。
その間、前衛のユニコーンロードへの攻撃は佳境を迎えていた。
だが、チャッピーのひらめきで手に入れたスクロールを使用してみることにした。
うまく行けば一瞬でユニコーンロードを屠ることができる。
「パシン!パシン!」
「ヒヒヒーン」
「姫様あのスクロール使えますよ」チャッピー
「即死のスクロールか?」
「はい」
「試してみよう、汝の敵に安らかな死を デス!」
「ヒヒーン」
リリアナの鞭を嫌がり少し後ずさるユニコーンロードに対し、果たして魔法のスクロールは効果があるのか?
マーシャは死神を退治した時に手に入れた即死の魔法書をストレージから取り出すと書いてある文面通りに読み上げる。
するとあれほど暴れていたユニコーンロ―ドはその動きを止め一瞬光に包まれ、その姿をチリへと変えていく。
その後にはレアドロップとみられるお宝が数点残されていた。
「従属の魔法書か」
「それと白い獣角」
従属の書は、魔獣を従わせることができる魔法書、使用者のMPにより付き従わせることができる魔獣の強さに限界があるが、マーシャが使うなら竜でも出ない限りどんな魔獣でもテイミングできそうだ。
「後は、これもかな?」
それはオカリナ、こちらも魔獣をテイミングできる魔法のオカリナだ。
但しテイミングできる魔獣は限られているようだ。
「今回のレアドロップは、変わっているな」マーシャ
「そうですか?」
オカリナは鑑定するとテイミングできるのは一定の時間までの様だ、従属魔法と言うよりチャーム(魅了)の魔法に近い。
白い獣角は、薬に使用したり装飾品の一部として使えるらしい。
「珍しい物の様です、鑑定しても?マークが出ますから」リリアナ
「まあ何かの時には使えるじゃろう」
45階層はユニコーンロードを退治すると普通のユニコーン達は戦闘を辞めて元の居場所へと移動して行った。
「これで終わりか?」トラン
「そのようです」フロウラ
「この階層で出没するのはユニコーンとソウルイーターだけのようなので、次の階層へ進みましょう」リリアナ
「うむ そうしよう」
通常のユニコーンは倒すとポーションぐらいしか落としていない、ロードを倒さないとかなり大変なのに。
この階層はユニコーンを倒してポーションを飲みまくり、ロードの攻撃を耐えまくる事を前提に作成されたのだろうか?ダンジョン製作者の意図は冒険者の根性を試すように作られているらしい。




