45階層の前に
45階層の前に
44階層から45階層へ進む扉を開けるとそこには何故かロマール教会の騎士兵が5人ほど転移魔法陣の横に座り込んでいるのが見えた。
「おぬしら何故ここにいる?」
「あ!姫様!」
「どうした?」
「実は……」
彼らは17階層まではうまく行っていたらしい、だが18階層の迷路の間でレアな転移空間部屋を引き当ててしまったらしい。
攻略地図には18階層は※しか書いておらず、その場所には?マークしか書かれていない。
そしてその部屋には宝箱が有ったと言う、しかも金色に輝く宝箱が。
通常お宝が採れる宝箱は赤箱や青箱で、低層階では中身は宝石やスクロールなどのドロップ品が多い。
30階層を超えれば魔物からも入手できるものだが、金色の宝箱はまだマーシャも見たことが無かった。
「それで開けたのか?」
「全員が部屋に入ると勝手に扉が閉まって、その後宝箱が勝手に開いたのです」
「完全なトラップ部屋ですね」
「その後は?」
「43階層のど真ん中に飛ばされて隊長と仲間5人がやられてしまいました」
「それは不運じゃな」
「転移トラップか…」カバネル
「看破魔法を使用しなかったのでしょうか?」リリアナ
「どうやら高位の魔法使いは同行していなかったようじゃな」
「私の部隊は中級の神聖魔法までしか使える魔法師は居ません」
「もしかして転移石、リザインストーンは?」
「隊長が持っていたのですが…」
「仕方ないな、妾の所持しているリザインストーン(帰還石)を持っていくが良い」
「よろしいのですか?」
「かまわぬ、まだ30個ほどあるからな」
魔法陣は次回1層から来るときは宣言するだけで転移できるが、1階層に戻る時には帰還石もしくは1層への帰還魔法書を各階層の転移魔法陣内で使用しなければならない。
マーシャの手元にはここまでの道程で手持ちの物を合わせると30個以上帰還石を手に入れていた、特にアストラル系の魔物を倒したときには高い確率で手に入れる事ができる。
慌てると拾い忘れることも多い帰還石、マーシャの収容魔法で片っ端からピックアップしてしまうので拾い漏れが全く無い。
帰還石は一つで一人1層へ戻ることができるので必ず1個は持っておきたい。
ダンジョン手前の売店でも売ってるのだが、全員分の帰還石を隊長が全部預かっていると言う事なのだろう。
「5人か、これで足りるな」
教会の騎士に帰還石を5個渡すと、礼を言って全員が1層へと転移していった。
「神に仕える者が欲を出してはいかんな」
「そういえばマーシャ様には欲が無いように見受けられますが?」ミミー
「そんなことは無いぞ、妾にもやりたいことはある、じゃがそのためにはまだまだしておかなければいけないことがあると言うだけじゃ」
「そうでしたか…」
「でも教会の騎士は帰してしまっても宜しかったのですか?」
「連れて行くには面倒すぎる、後で妾の事を話すじゃろう」
「そうですね」
「妾が最強じゃと知られれば、必ず協会に顔を出せとせがまれるじゃろう、まあいずれそうなるかもしれぬが、妾の計画に教会は邪魔にしかならぬからな」
「そういえばロマール教会はこの秋に教皇の選挙があるらしいな」トラム
「聞いたことが有ります、なんでも聖女を探すのが目的になるとか」チャッピー
「王国ではそのようなことも有るのか、魔王国でも聖女は神聖視されている」クロイス
「え?魔王国は真逆の立場では無いのですか?」リンダ
「いいや聖女は神の使い、魔王は魔法の王様と言う位であり別に神に敵対しているわけでは無く、確かに一部のバンパイア(吸血族)は敵視していたりもしますが、すべての魔族がそうではないですよ」クロイス
「へ~」数人
「そういえば魔法学院にある協会には聖女伝説がありましたね」ドルチェ
「何故聖女伝説が魔王国の魔法学院に?」チャッピー
「確か王国では聖女が国を政定し争いを収めるために教会を作り平和に導くでしたっけ?」フラン
「詳しくは聖女にはそのような力は無かったと聞くが、同時に勇者が数人付き従っていたと言われているな」トラム
「王国ではそういう言い伝えなのですね、魔王国ではさらに聖剣伝説も有りますよ」クロイス
「なにそれ?」リンダ
「魔法学院の教会には石の台座に突き立った剣が置かれています、それを抜くことができた者はその場で魔王の称号を得られると言われています」
「その話は妾も初めて聞くぞ!」
「勇者の剣とも魔王の剣とも言われていますが、その剣を抜くにはHP・MPが共に1万無いと抜けないと言われています」
「興味深いですね」ロッド
「よし この攻略が終わったら魔王国の魔法学院に行って剣を抜いてみよう」マーシャ
「マーシャ様、それをやらるのは構いませんが、もし抜いてしまったら魔王決定ですよ!」リリアナ
「ん?そ それは少々まずいな…」
「抜いてすぐもとに戻して置いたらいいんじゃない?」フラン
全員がフランの方を見て(なるほど)と言う顔をする。
「いや確か抜いた者の意思により剣は姿をかえる、そうなると台座には戻せないと思います」グロシュ
「形が変わり台座に刺さらなくなると言うわけじゃな、なるほど…」
「まさか姫様!」
「できなくは無いじゃろう」
マーシャは微笑む、何やら対応策を考え付いた模様だが、この話はずっと先にならなければ分からない話であり。
魔王国の魔法学園にマーシャが訪れるのはまだ先の話だ。
それに魔王国も今は少し不安定な時期、公爵の力が弱まっている為各地の首領たちがこの時とばかりに悪さをたくらんでいると言う話も聞いている。
「剣がまだあればですけどね」ドルチェ
「ん?そのような強者がまだ居るのか?」
「いるかもしれません」クロイス
「確かに本当の強者はおいそれと姿を現さぬのが通例じゃ」
一応魔王国では魔王が一番強いとされている、だがそれならばなぜ魔法学園にある教会に置いて伝説の剣を抜かないでいるのか?それらを含めて一度魔王と話さなければならないとマーシャはこの時思った。
「まあ、あまり急くことも無いじゃろう、誰かに抜かれればそれはそれ、運命と言う物じゃ」
「それでは師匠、一段落したところで45階層へと参りましょうか」リンダ
「そうじゃな、では行くか!」
45階層そこには何が待っているのか、そしてその先には…




