40階層
40階層
「それより40階層音が止んだみたいじゃな」
「皆様用意はよろしいですか?」フロウラ
「ああいけるぜ」カバネル
「行きます」チャッピー
「姫様のご命令とあらば」ラランカ
「よし 進もう」
40階層のボス部屋、出現するのはベヒーモス。
その姿は地龍ともいえる姿だが、体は赤紫色をしており多くの魔気を纏う魔獣の一種。
顔は牛の様だが牙と大きな角を持つ、最大の特徴はその大きさだ。
全長20メートル体重20トン、象より巨大で吐く息は毒を帯びている。
そしてこの部屋ではおまけにジャイアントモスキート(大黒魔毒蚊)が数10匹ついてくる。
「マスク着用、防御魔法展開、無理はするな怪我をしたら下がって妾に任せよ」
「了解!」
そこは部屋と言うより荒野であり川のせせらぎさえ聞こえてくる、ボス部屋とは名ばかりの荒れたグラウンド。
確かに全長20メートルの巨大な魔獣が部屋と言う大きさに収まるわけがない、しかも血を吸い毒を持つ蚊まで同時に現れるのだ。
「来たぞ!」
プ~~ン
20センチ以上はある真っ黒い大きな蚊、それが真上からこちらに飛びかかって来る。
まるでカラスの急降下攻撃、気を付けなければいけないのはこの巨大な蚊はこちらの攻撃をさらりとよける事だ。
その姿は真っ黒、闇夜に溶け込み目を凝らさなければよく見えない、必然的に全員が視覚アシストを使用する。
「サーチアイ リスニングアシスト」
ついでに聴覚も強化する、蚊が出す音にも反応しやすくするためだ。
「エンチャントブレイブソード タイプフィンガーニードル」マーシャ
「なんですかそれ?」チャッピー
指の先に細い魔力で作った剣が現れしかも蚊と同じような音を出している、面白いことに大きな蚊はその音に向かって近寄って来る。
「ブシュッブシュブシュ…」
「妾から少し離れておれ」
数十匹の蚊がマーシャに群がるが、いつの間にか指先を延長させた小さなブレードだけでそれらの蚊を次々に堕として行く。
マーシャがかを屠っているうちに今度は地響きが近寄って来る。
「来たぞ!」
「戦闘用意!」
「ドズンドズンドズン」
「パワーアシスト ガードアップ フィジカルアップ シェル プロテクション」
「オートリペアミドル マインドアップ ポイズンガード」
魔法職が前衛に対しバフを掛けていく、その数は全部で50を超える。
一人10種近いバフを掛けてもらい巨大なベヒーモス相手に攻撃を慣行する。
「取り囲め!」
6人の前衛と中盤の魔法職がベヒーモスを取り囲みタイミングを見計らって一斉に攻撃を仕掛ける。
ベヒーモスはHPを1000削られるごとにポイズンブレスを吐きだす。
ベヒーモス・40階層BOSS 全長20メートル高さ5メートル体重20トン、巨大な牙と角を持ち皮膚は固く濃い紫色をしている。
吐く息は毒を持ち、HPは10万MPも1万、クリティカルで1万以上のHPを一気に失うと土魔法のアースクエイク(地震)を広範囲に放出する。
アースクエイクを受けると30%の割合でコンフェ(錯乱)やアノマリー(異常)のデバフを受けてしまう。
これを防ぐには空中へ逃げるかもしくはバーサクやアノマリーダスト(異常廃棄)のような魔法で相殺するしかないが、その代わり今度は防御魔法がキャンセルされうまくやらないと仲間を傷つけてしまう。
【ブフォ~~、ドズンドズン】
「くらえ!バシュッ!」カバネル
「ふん!ジュバッ!」ロッド
「ハイ!セイ! バスンガスン!」リンダ
「大空の冷気よかの者に凍てつく力を与えたまえ、フリージングワールド!」クロイス
「ホーリーバレット!」リリアナ
「それ!ズシュ!」トラム
各自の攻撃はクリティカルまではいかないが数百ポイントのHPを削って行く、さらにクロイスの氷雪魔法で動きが鈍くなりチームマーシャに取り囲まれたベヒーモスはどんどん窮地に陥っていく。
「ポイズンプレスくるわよ!」
【ブフォ~】
ポイズンブレスは前方90度にわたって吐き出されるのでタイミングを見て避けてしまえばなんということは無い。
前方から仕掛けていた2名がベヒーモスの口を見てその範囲内から離脱する。
黒い霧のようなものがベヒーモスの口から放たれ、目の前が煙で包まれる。
その間も後方から仲間の攻撃が絶え間なくベヒーモスに突き刺さる。
そのタイミングが良かったのかトラムの槍がベヒーモスの後ろ脚関節を深く突き刺した。
【ギャフ~~】
その瞬間ベヒーモスは前足を上げ悲鳴を上げる。
「アースクエイクが来るわ」ミミー
「離れて!」チャッピー
トラムの槍によってクリティカルが発生し、ベヒーモスは魔法を広範囲に発生させる。
「ゴゴゴゴゴ」
魔法職は全員がレビテト(浮遊)魔法を唱えて地面から離れるが、前衛の4人がやや出遅れてしまい足を取られる。
「くそ!」
「思ったより範囲が広いわ」チャッピー
そこへベヒーモスが突進しようとするが、後ろ脚を痛めたベヒーモスはやや動きが鈍い。
「くそ!立てない」
カバネルがアノマリー(麻痺)を発生し、たたらを踏む。
「グラビティプレス」マーシャ
「グラビティプレス」リリアナ
とっさにマーシャとリリアナから重力魔法が飛んでくる、まずは敵の動きを封じる。
「大丈夫か?」トラム
「こちらへ」リンダ
トラムとリンダがカバネルの腕を取り数メートル下がる。
「あ ありがとう」
「どういたしまして」リンダ
「ここで少し休んでいると良い」トラム
「はい」
動けなくなったカバネルを下がらせると重力魔法で動きを制限されたベヒーモスに対し追撃を続行する。
そこには先ほどまで魔法で攻撃していたグロシュが再生した家宝を手にして、その切れ味を確かめるべく細剣をさやから抜く。
鈍色に光る細剣がまるで鈴を鳴らしたかのような音を発した。
「シャルン シャシャウン」
ベヒーモスの横腹へ仕込み杖から抜いた細剣が数回突き入れられる、そのたびにベヒーモスは悲鳴を上げる。
細剣の為攻撃範囲が大きくないのかクリティカルまではいかないが、それでも数回の攻撃で数千のHPを削り取り、ベヒーモスは口から紫色の血を吐血する。
【ゲフッゲフッブオー】
ここまででいつの間にか半分までHPを削り取ることに成功した、約20分経ちそしてさらに全員で追撃する。
「ズシュザシュ」
「くたばれザシュ」ロッド
「これでもか!バコンドコン」リンダ
「アイスニードル」クロイス
「ホーリーバレット」リリアナ
「聖なる矢よ敵をつらぬけ、ホーリーアロー」フラン
【ブフォ~~】
「あと少しよ!」チャッピー
ポイズンブレスを躱しながらも絶え間ない攻撃によってベヒーモスは最後の悲鳴を上げる。
「これでどうだ!ズシュ!」トラム
【ブハウ~~~】
約30分後巨大な体が霧となり空気中に溶けていく、最初の20分で敵の攻撃パターンを見切ることができたのが幸いした。
勿論個人の力だけでは倒せない相手だったのは確かだがそれ以上に大きな成果をもたらしたのは確かだった。
「ラストアタックはトラム王子ですね」チャッピー
「やられたわ」リンダ
40階層ボスのベヒーモスは、中々のレアドロップ品を落としていった。
まずは剣、しかも種別は大剣の部類に入る。
大地の剣・DEF+30、土魔法耐性+20、自動修復毎分1%
魔法補助+10土魔法補助+25。
長さ1メートル50センチ幅20センチ重量20k。
「お~」
そしてネックレス。
守りの首飾り・DEF+100、魔法補助+10魔法防御+10
他にはスクロールが4つとポーションが2つさらにでかい魔核が地面に残されていた。
「剣はトラム様の所有権となります、首飾りは・・・グロシュ様ですね」チャッピー
多分ラストアタックボーナスと貢献者割合が別になっているのだろう。
レアドロップが2つ残された場合の設定なのかもしれない。
「おれか?」グロシュ
試し切りのついでに手に入れてしまったが、チームマーシャでは所有権が付いたものはそのまま所有権者の手に入るようにしているので他の者から文句は出ない。
「良いのですか?」
「チームマーシャでは全員で分ける事はせぬぞ、それをすると全部売らなければならぬからな」
「確かに」
「他の者も同様ラストアタックや貢献者割合で所有権がついて居ればそれを優先する、その後で譲るのか買い取るのかは当人同士の交渉じゃ、だがレアドロップ品が自分一人で勝ち取ったのではないことを覚えておくのじゃぞ」マーシャ
まあそれを聞いたところで第二王子を羨ましいと思う者はいない、全員がすでにいくつものお宝をマーシャから下賜されているのだから。
「それと今までのドロップ品も所有権別に回収しておる、攻略が終わったらそれぞれに渡すので、それまでは自分のお宝を手にするのは辛抱するのじゃ」
「はい!」
40階層のボスを倒し何もいなくなった荒野を進むと41階層への扉が現れる。




