29階層
29階層
28階層を危なげない戦闘でキマイラを3匹コカトリスを7匹ほど屠ると次は29階層の入口となる。
29階層はワーウルフとケルピーが登場する、頭は狼体は人に近いが群れで行動する彼らは武器も使用できるので侮るとかなりやっかいだ。
そしてケルピーは水属性のカバに近い魔物、ケルピーは魔物と言うより分類は妖精種と言う話を聞いたことが有るが、前回来た時ワーウルフは獣人の従者であるラランカとクローネが蹴散らして圧勝、ケルピーはフロウラの魔法で難なく撃退することができた。
「あれ?今回獣人コンビは?」
「サポートに回ります」
「同じく」
多分31階層まではこの布陣に変更はなさそうだ、確かに一度訪れた場所でありどこにどんな魔物がいるのが分かっているので、事前のバフ掛けも即対応できている。
マーシャは全員が進む後を後ろから見ているだけのように見えるがそうでは無かったりする。
「マーシャ様よろしいのですか?」リリアナ
「どうした暇すぎるか?」
「はい」
「29階層までは彼らに任せておかないと訓練にならぬ、それにおぬしには30階層で否応なく参加してもらうからここは我慢しておくのじゃ」
「そうですよね」
「私は楽でよいです」フラン
「それならフランは来なくても良かったのだぞ」
「え~マーシャ様いじわるです」
もしマーシャに付いてダンジョン攻略に来なければ彼女はクレアに付いてメイドの訓練を強要されているところだ。
マーシャのご学友兼メイドとして割と楽な立ち位置で暮らしてきたフランだが、最近はそれほどマーシャのメイドとしての仕事をこなしているわけでは無い。
それに彼女はマーシャのメイドからあと数年で卒業しなければならない、と言う事は他の王族のメイドとして上級メイドとしてさらなる訓練をしなければいけなくなる、彼女に残された道は2つ、メイドを続けるかマスタークラスを取得して上級講師の仲間入りをするかだ。
その理由は今年マーシャの妹かもしくは弟が生まれると言う話があるからだ。
昨年第2王妃がご懐妊したことはマーシャの鑑定眼でも知ることとなった、あの時が妊娠2か月だったので現在は妊娠8か月を過ぎ第2王妃は現在安定期に入る頃。
すでにマーシャはどちらか知っているが誰にも話してはおらず、王さまも2人の王妃もどちらが生まれるかについてはまだ知らない事だ。
そうなるとメイドの件についてもいつ変更になるかわからない、それに最近はマーシャにメイドは必要ないのではという話も出てきている。
確かにメイドではないが従者が3人いて彼らは王都のメイド専用館で暮らしている。
勿論その時に着ているのはメイド服であり対応も同じだ、下僕とした魔族3人だが最近は慣れてきたことも有り、ダンジョン攻略でもなければずっとメイド服を着ていたりする。
仕事もほとんどメイドと同じなのでもしかするとフランはご学友と言う肩書だけではその地位を剥奪されかねない所なのだ。
但しそれは彼女の学力も参考になるのですぐ配置変えになると言う事ではないのだが。
どちらにせよずっと同じと言うわけには行かないと言う事になる。
29階層の攻略は順調に進んだ、ワーウルフは群れで襲ってくるが強化した前衛5人に補助魔法をしこたまかけて進めば何のことはない。
男子2名は2回目なので力技で進むならば彼らの真骨頂を発揮できる、その2名を横目に第二王子トラムも徐々に戦い方に慣れてきて、いつの間にかスイッチまで使うようになっていた。
※スイッチ=交代で戦うために他の戦士と攻守を入れ替える事、タイミングを見計らい合図をする。
特にリンダ嬢は拳法家のため剣より接近して戦うことになる、そこへ複数の相手が攻撃を仕掛けた場合、すぐに対処するには少々不向きだ。
そんな時トラムが間に入り一度態勢を立て直すようにパリィ(躱す)する。
あれだけ実戦を避けて来たトラムだったが一度経験してみればなんてことは無い、特に婚約者の前であればなおさらだ。
「サンキュ」リンダ
バシン!ドスン!
「これぐらいはね!」
ダン!ザシュ!
ワーウルフの集団を4回そしてケルピーを5匹、危なげなく蹴散らしていく。




