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転生した王女はとんでもなかった(天使の過ちは丸投げです)  作者: 夢未太士
第2章 ダンジョン攻略・前編
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クアルー

クアルー


15人は洞窟ダンジョン26層へと進んで行く転移魔法陣から細い通路を抜けるとそこは薄暗い割には広い空間が広がっていた。


「あ~またここに来たな」カバネル

「前回は早々にやられたからな」ロッド

「一応魔法耐性を上げておくか」マーシャ

「かしこまりました、マジカルシェード・ターゲット・サークル」リリアナ


リリアナが言葉を発すると全員の体が淡く発光する、魔法耐性を上げる魔法を全員に適応させた。

一応この攻略に来る前に敵からの魔法に抵抗するための魔法具は全員が装着済みではあるが、それで完ぺきとはならないのが魔法の面白いところ。

マーシャや上級魔法師を目指すリリアナクラスになれば敵の魔法攻撃に耐性を得る為魔法具以外のスキルのようなものまで持っているが、それを防げるのは相手の使う魔法の種類にもよるので、全て完全に防げると言う事ではない。

それに幻惑魔法のような、精神依存の魔法はこのように団体に使う方が効果がある。

魔法耐性の弱い味方に幻惑魔法が使われた場合、一人でも敵の術中に嵌ればそこを突破口に内側から守りを崩されてしまうからだ。

特に戦士タイプの男子が3人いるのが一番のマイナス要因、前回もそれで足を引っ張られたのだから。

まあ彼らには前回の教訓を元にマーシャ謹製の魔法具が下賜されていたりするのでそれほど心配することもない。

魔法具は精神魔法に対する耐性を上げる事だけではなく自分が使う魔法の威力も上げてくれる。

マジックブレスレット、戦士の腕輪Rレア:精神魔法を含む魔法耐性+10・各種魔法アシスト効果+5・リジェネ分/+10、幅1センチ大きさは直径7センチ程度の10金製(50%)の腕輪であり白魔石が一つと黒魔石が一つ埋め込まれている。

魔石を2個使うのには訳がある、白魔石にはアシスト魔法を黒魔石には耐性魔法と個人情報を記憶させるためだ、通常ならば黒魔石だけで良いのだが、壊れてしまうのを防ぐため戦士の場合腕輪には強度アップの魔法を掛けてある。

特に金製のジュエリーは金属の特性からいくら強度を上げるために他の金属を混ぜてもその強度には限りがある。

黒魔石によって強度アップの魔法を込めることによって腕輪自体の耐性を上げておくことができ、さらに本人しか効果が無いように魔法を込めて置けば個人専用の腕輪にできる。

材料の殆どは彼らが自分で持って来た物で、マーシャは制作費用などのお金は取っていないのだが、それでも3つ以上のアシスト魔法が込められた腕輪は戦士にとってかなり美味しい効果が込められている。

買えば金貨20枚は下らない品物だ、もちろんマーシャ謹製のため裏には天使のマークが刻まれている。

戦士タイプの4人が先頭を歩き、26層ダンジョンを進んで行く。

途中でインプが現れるが、さすがに今回は以前とは違い敵を見つけたとたんカバネルとロッドが敵に走り寄りあっという間に倒してしまった。


「は 早い」トラム

「私たちも負けていられないですわね」リンダ


26層は岩こそ少ないが、全体に暗くそしてじめじめしている、インプの発生するエリアを抜けると今度はクアルーの出没するエリア。

クアルーは5頭前後の群れで暮らしている、ダンジョン魔物なのでそういう設定だが、彼らもインプと同じような幻惑魔法でエサにしようとするので要注意。


「出たな」

「今回は食われないぞ!」


先にロッドとカバネルが走り出しその後をリンダが追う、やや遅れてトラムがその重い腰を上げるが。

こちらに気付いたクアルーは少し多めの8頭、一斉に音魔法を使うためやや上を向くと超音波を浴びせてくる。

1頭ならばさほど難しくない魔物だが、この数はやはり注意しなければ退治するのは難しい。


「言わんこっちゃない」カユーラ


カバネルとロッドは何故かクアルーの群れの手前で立ち止まった。


「かわいい~」ロッド

「ねこちゃん」カバネル


腕輪の効果も1・2頭ならばなんとかなるが8頭の群れが出す音魔法による洗脳は掛け算式に倍増される。

案の定2人は今にも食われる寸前だ。


「させない!」リンダ


先に走っていた2人を見て真後ろから駆け寄るリンダにはクアルーの音魔法が届かなかった。

2人が立ち止まり術中に陥ったのを見てクアルーは鳴き声を止めた。

その隙を見計らいリンダが2人に近寄るクアルーにまずはお近づきの印に正拳を叩き込む。


キャウ~

「まだまだ」


そこへようやくトラムが駆けつけ残りのクアルーを槍でつつくがなかなか当たらない。


「王子!盾で体当たりするのよ!」チャッピー


後ろから様子を見ていた女子はたまらず声をかける、この時点でマーシャは何もしていないがこれには意味がある。

前回の時もそうだが、仲間が戦う意思を投げていないのならアシスト魔法ぐらいにとどめる事。

もし自分の考えで戦い方を手助けできるならそれを教えてあげる事など、自分たちで戦う事を思考させる。

いずれマーシャがいなくともそれぞれが先頭に立ち仲間を守りながら戦わなければいけない時が来る。

それには自分がいつも前に立つのではなく手を貸す言葉を貸す思考を貸す事も必要、これは手助けではあるが自分が勉強するうえでも必要な事だ、魔法専門でも戦士の戦いを知っておくのは大事だし、その逆も知っておくことで戦い方は無限に広がっていく。

何も自分の能力のみを鍛えるのが修行ではない、仲間を守るために必要な戦い方を覚えることも大事だからだ。


「そ そうか!」


槍は突くだけではないがその動きは割と直線的、ネコ科の動物には中々刺さらない。

だが槍を横に広げ刺すのではなく横に凪ぐその長さを利用する、後はジリジリと距離を詰めれば逃げ場所がなくなっていく。

そしてついに1匹がトラムに追い込まれ岩を背にして止まってしまう。

今度は槍をやや狭め、盾を使いトラムはクアルーにとびかかった。

逃げ場所を失い動きを止めたクアルーに覆いかぶさるように盾を叩き込むトラム、それほど体重は掛けていないが盾で頭を叩かれ意識がもうろうとしている間にトラムは槍を突き刺した。


キャウ~

「やった!」

「お見事です」獣人フランカ


その後ろではあとからやって来たミミーとロジーがカバネルたちの目を覚ますため、往復ビンタを2人に浴びせる。


「あんたたち目を覚ましなさい!」ミミー

バシバシバシン!

「ン?」

「全く、もう少し頭を使いなさいよ!」

「ああ すまん」ロッド


その間にもリンダが3匹目に襲いかかっている、素早く動く彼女の脚力そして懐に入るとその拳と蹴りがクアルーの頭や胴体に叩き込まれる。


キャウー

「セイ!」

「しね!」

「フン!」


約10分で8匹のクアルーが魔核とドロップ品を残して霧散した。

26層は何度かのインプとクアルーを退治しながらお宝が有る場所を捜索し1時間もしないで27階層への入口へとたどり着いた。


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