クラールダンジョン
クラールダンジョン
次の土日、予定していた通りクラールダンジョンの攻略の日がやってきた、当初はマーシャのグループだけで攻略する予定だったがそこに第二王子とその許嫁が加わり、攻略速度は彼らに合わせることになった。
マーシャ達だけならば二日間で80階層ぐらいまで行けるぐらいの実力があるが、第二王子とその許嫁を連れての攻略となればせいぜい50階層が良いところだろう。
まあ彼らの能力次第という所だが、許嫁のリンダ・タム・ローランはかなりの体術使いだと言う事は聞いている。
生前アニメで見たなんとか波と言うやつの使い手という話で、強化した体術に魔法を乗せて気弾として放つと言う。
勿論ローラン家の免許皆伝であり彼女は正当なローラン流拳法の後継者でもある、そんな人が何故あまのじゃくな第二王子と婚約したのかはわからないが、この旅でそのなれそめなどは語られることだろう、その前に彼がめげてしまわなければ良いのだが。
「マーシャ様用意完了しました」
「おお、間に合ったすまんな」
「お兄様遅刻ですよ」
「すまん持っていくものを精査していたら遅れてしまった」
その姿はどう見ても洞窟探険の学者といういで立ち、彼は魔物と戦うと言う事を考えていないらしい。
学園での対人戦では学友との勝負もしっかりこなすのに、いざ魔物との戦いや戦争となると彼は尻込みするらしい。
「その姿は…」
「これではだめか?」
「まず着るもの以外は全部いりません」
「なんでだ?」
「まず私の部隊、クランでは戦う事以外の攻略はしません、従いまして男性は軽鎧もしくは魔術師専用のローブが標準装備です、そして武器は剣又は槍 魔法使いならば杖が標準装備です」
「なんだ、ランプもスコップもカバンもいらぬのか?」
「は~…」
「フロウラ・ジル・カユーラ彼を兵士にしてあげて」
「かしこまりました」
「兄上 お洋服その他もろもろはお預かりいたします」マーシャ
「お おい や うそだろ…」
そう言うとマーシャはストレージ魔法を使って懐から男女兼用の戦闘用上衣と防具そして武器を取り出す。
その間に3人のマーシャ専属メイド(使徒)はあっという間に第二王子の服を脱がせてしまう。
「うわっ、なんだ何をするっやめろ!許さんぞ!」
「かまわぬこの防具を着せてくれ、武器はそうだな槍の方が良さそうだな」
王子の言葉に従者3人は少しひるむが、王様から好きなように扱って良いとのお達しを得ており王子の意向などマーシャは聞く耳を持たず無視をする。
そして槍と言えば盾が必要と言う事でマーシャ謹製の盾をストレージから取り出すとフロウラに手渡した。
「マーシャ様これでいかがです?」
「うぬ、中々良さそうだ」
「な 何をする!」
「お兄様ここからは私の命令に従っていただきます、そうでなければ目的も果たせませぬので」
そこに少し遅れて第二王子の婚約者であるリンダ嬢がやってきた、もともと第二王子には少し早く来る様に告げてある。
「時間は間に合いましたでしょうか?皆様初めましてリンダ・ローランです」
「リンダ嬢ようこそチームマーシャへ」
「もう敬語はいらないですから師匠、今日もバシバシ鍛えてくださいね」
「なんだもう顔見世は終わっているのか?」トラム
「もちろん一緒にダンジョン攻略するのにその強さを確かめない訳に行かないでしょう兄上」
「確かにそうだが…それにし 師匠?」
「マーシャ様は体術と拳法もマスタークラスです」リリアナ
「そうですよトラム、それに引き換えあなたはまだ何のマスタークラスも取得していないではないですか!」リンダ
「俺は対人戦以外は必要ないと思っているぞ」
「お兄様である第一王子様さえ戦場に身を置いて国の政に参加しているのに私の夫となるはずのあなたがこの体たらくでは父になんと言えば良いのですか?」
「それは…」
「婚約したと言ってもあなたにはしっかりしていただかないと、父から婚約破棄されてしまいますわよ」
「…」
「それに今回の攻略で私にプレゼントしてくださるのでしょう」
どうやら第二王子トラムは魔族からクラールダンジョンのお宝情報を手に入れているらしい。
「そ そうだけど…」
「50階層で手に入る戦女神の証が目当てですか兄上」
戦女神の証:ブレスレット、腕にはめた者に様々な幸運をもたらす、通常は各能力に+10補正、そしてリジェネ分/+10、DEF+30、LUK+20。
一つ身に付けることで様々な+補正を与えてくれるため、愛する女性への贈り物としては申し分がない品物だが。
それを手に入れたとしてマーシャが第二王子にその権利を譲るかというと、それははっきりと断言できない所。
「それならば余計に強くなれるよう修行しなければいけませんね」
「いや俺は殿をだな」
「それでは強くなれませんよ兄上、まあ私の部隊ではそんな腑抜けは早々に死んでもらうかさらし者になるかですが」
そう言ってにんまりと微笑むマーシャ、昨日の試合場では見られなかったマーシャの裏の顔。
第二王子は今まで学園でしかマーシャに会っておらず当然だがマーシャは猫をかぶっており言葉使いも王族相手ではお嬢様そのもので彼らに合わせていることを知らない。
だが事が戦や訓練となればその言葉使いも経験豊富な老兵のように変化していく。
「お 俺は…」
「トラム様 腹をくくった方がよろしいですよ」フロウラ
「まあそのうちわかりますよ」カユーラ
「チームマーシャのすばらしさ、そして恐ろしさをね」ジル
「よし、それではトワイ村へ転移する、みなここへ集まってくれ」
マーシャのおかげでもあるが、従者である女性達は全員空間魔法を使えるようになり、大きさの大小はあるが皆ストレージを使えるのでほぼ手ぶらでの移動だ。
身に纏っているのは全て魔道具であり、半分以上はマーシャ謹製だったりする。
この頃マーシャは指輪や腕輪、ネックレスはもちろんの事、頼まれれば武器や盾などの武具まで手掛けるようになっていた。




