学友
学友
勿論他の学友たちもマーシャの厳しい訓練を経験し卒業後は王家近衛兵ぐらいならば楽に試験が受かるぐらい剣術も魔法も上達している、一人はカバネル・ジンジャー16歳、そしてもう一人はロッド・アダムス16歳、彼は空撃隊所属の父からの推薦で入学してきた。
昨年の夏マーシャと出会い2人共に大人顔負けの剣技と魔法を身に付けている。
それにカバネルはジンジャー子爵領の長男であり魔族の侵略で被害を被った領主の子息と言う事で。
戦後補償で譲り受けたダンジョンの管理も任されているが、今のところそれは便宜上らしい。
ダンジョンの管理と言っても何をどうすればいいのか、ダンジョンと言う物がどういう物なのかを学ぶところから始めている。
「カバネル今度のダンジョン遠征は聞いてるか?」
「ああ転移ポータルまでは行けたからな、姫様たちは25階層から始めることになっているらしい」
「ん?そうすると姫様と一緒じゃないのか?」
「最初は違うぞ、俺たちは19階層から始める」
魔王国のダンジョンには多少の違いがあるが、内部に階層ごとの脱出ポータルが存在する。
クラールダンジョンDランクは暗闇系のダンジョンではあるが、完全な暗黒系ではないらしい。
出てくる魔物は最初はごく普通の闇系魔物だが、40階層からは土系の魔物と神獣系の魔物が多くなって行く。
そして5階層ごとにポータルが有り10階層ごとにボスが存在する、ちなみに30階までのボス攻略はマーシャの一撃で終わっている、普通なら5人以上のグループで攻略する相手なのだが。
「俺たちは姫様が攻略を開始する25階層に直接はいかない、その前日に20階層入りして経験値とお宝を稼いでおくんだ」
「そういう事か」
「前に同行した時、俺たちはお宝をいただく暇もなく前衛でこき使われただろう」
「そうだな、地獄だったな」
「疲れれば快癒魔法で又戦場へ送られ戦わせられる兵士の思いが良く分かったよ」
「ああ、あれはあれでいい教訓になったが、姫様と初日から一緒では自由が無さすぎる」
「確かに」
「そこでだ、19階層から始めれば俺達だけでもかなり経験値を稼げるし、ボス部屋でドロップ品も手にはいるだろう」
「そうか、確かに20階層のお宝は宝石だったよな」
「ああ、あの後姫様に聞いたら金貨30枚相当だと言っていたぞ」
「金貨30!」
金貨30枚、金貨1枚が4万円相当なので120万円の宝石と言う事、辺境子爵の長男としてはその金額は無視できない。
勿論現在彼にはダンジョン運営という役割もあり徐々に収入として増えているので、そこまでお金を稼がなくても良いのだが。
一応クラールダンジョンは1回一人金貨1枚という入場料をいただいている、これが高いと感じるか安いと感じるかは置いといて、そこからジンジャー子爵には50%の管理料が支払われる。
そしてカバネルにも10%程度の収入があるのだが、10%とはいえ現在ダンジョン攻略しているグループはマーシャも入れて10グループ前後、通常の冒険者グループは5人から10人編成、中には3人や2人と言ったグループもいる。
総勢40人から50人と言った所、それに一回潜ると彼らは何日もダンジョンに入りっぱなしになるため、追加の収入は彼らが帰還後又攻略するまで入らない。
だが自分で入るならば入場料も懐に入る一部になるし稼ぎ放題となる、ちなみに領主であるカバネルの父も週一でダンジョンに挑戦しており現在は10層ボス攻略で足踏み状態なのだとか。
まあそれでも一回潜ると一人金貨10枚近くのお宝を手に入れられるので収支は必ず黒字になると言う話、管理だけの利益ではすぐにお金を得られない。
魔族の侵略でジンジャー領はかなりの痛手を負ったのだから、そのぐらいの見返りがなければ死んだ者達も浮かばれないだろう。
勿論、コバルトジンジャー子爵は得たお金を村や町の発展に使う事も忘れてはいない、もともと収益の50%は辺境自治発展のために使う資金になっている。
「もちろんお前と俺とで山分けだ」
「ん?と言う事は2人だけで攻略するのか?」
「人数増えれば分け前も少なくなるだろう」
「ああたしかに」
「それに俺たちの技量で攻略できるのは25階層までなのはわかるだろう」
「ああ26階層に出てくるインプやクアルーにはどうしてもやられてしまうだろうな」
「ああ25階層から姫様たちと合流すれば安全に攻略できるし」
「懐も温かくなる」
「そういうことだ」
インプ:闇妖精、姿は小悪魔と言ういで立ちで魅了魔法や残虐性を増長させる魔法を使用する。
魔法耐性のないものは仲間同士で殺し合う。
クアルー:猫系の魔物、姿は豹の様だがこちらも相手を魅了する、魅了されると生きながら餌とされる。
前回マーシャと攻略した時、彼ら2名は早々に術中に嵌り仲間内で切り合ったり、体の一部を食べられたりと悲惨な目にあった。
勿論マーシャやリリアナ達の再生魔法により傷一つ残らなかったが、心の中には相当なダメージを負うことになった。
なにせ言う事を聞かない体が勝手に同僚と戦わせられたり、生きたまま猛獣に体を食われ内臓まで腹から飛び出ると言う、もちろんその痛さは半端ない。
要するにその階層からは神聖魔法の使い手が同行していなければ無事に攻略できないと言う事だ。




