練習試合
練習試合
マーシャとフランは午前中は剣術の講義に出て、その後昼食を摂り午後1時から薬草学の講義を受けたので現在時刻はすでに4時近くになる。
そして4時からの講義は無く、本来マーシャ達は帰宅するはずなのだが…
そうまだ中等科から続く学生同士の武練勝負は続いていたりする。
但し、あまりにも戦闘能力がかけ離れているマーシャの相手となる学生は現在17歳以上でなければ危険とみなされかなり減らされている、現在は1週間に2試合あるかないかという具合だ。
そういった理由から、マーシャよりも学友の試合の方が最近は増えている。
そして本日試合するのはリリアナとフランだ、共に魔法の試合となっている。
「リリアナ様が先の試合ですね」
「フランも今回はリベンジマッチね」
どうやら午後4時からの試合には間に合いそうだ、講義が長引くと間に合わない場合もある。
その場合は不戦勝になってしまうので、今回は2名共に実力を出せそうだが、それは相手にも言える事。
だが速足で闘技場へ向かうとすでに観客席を含め闘技場の中は熱気に包まれていた。
そこには第二王子であるトラム・シュバリオール・アルフレア19歳の姿が、そしてその対戦相手フォルダン・マルソーはどうやら北西の国境近くに領を持つ候爵の長男らしい。
その姿は第二王子より一回り大きいが髪は長くそしてどう見ても優男。
彼の父コザット・マルソーは先の魔王国とのいざこざの時、魔族の片棒を担いだと言う事で領地縮小及び罰金刑となっている。
まあ罰金で済んだのは魔族に協力はしたものの、それは脅されたからという話であの騒ぎの時も彼の領からは300人の私兵が応援に来ていたこともあり処罰は軽微で済んでいる。
「あらマーシャも来たの?」アマンダ
「はいこの後友人の試合がございますので」
「あら、そうなのね、頑張ってね」
「はい!有難うございます」
第一王女アマンダ・シュバリオール・アルフレア15歳、マーシャと同じく飛び級で進学しており現在は19歳クラスへと進学している、順当にいけばあと1年で卒業となるが、彼女はどうやらマイスタークラスへと進学するつもりらしい。
「お兄様の試合を生で見るのは久しぶりですわ」マーシャ
「そのようですわね、いつもは第2武錬場での試合が多いと伺っているものね」アマンダ
「はい兄上との試合と重なることが多いもので、ところで兄上のお相手は?」
「相手のフォルダンは元私の婚約者ですわ」
昨年の暮れに各領主である貴族へお達しがあった、それは魔族に組した者に対する処罰。
候爵の息子であるフォルダンは現在19歳、もちろん第二王子の学友でもある、そして7年前王侯貴族お披露目パーティーにおいて第一王女アマンダに一目ぼれし恋文を送ってOKをもらったのだが。
昨年の魔族との戦いのおり、敵に協力したとして父のコザット候爵が処罰の対象となり、婚約の話も白紙に戻ってしまった。
「わ~なんか複雑ですね」フラン
「兄に戦いを挑んだと言うより、勝ってお姉さまとよりを戻したいと言った所ですか?」
「うふふ、そうならいいのですけど」
アマンダはかなり頭の回る女性だ、だがそれは悪い方にではなく自分の良い方にと言った所だ。
外見も美しいだけでなくなまめかしい、まだ15歳だと言うのに身長は170センチ以上あり。
その胸にははっきりと柔らかそうな双丘が存在を誇示している。
確か7年前の舞踏会でもその美しさは際立っていた、だが彼女は現在進学する意向を示している。
要するに結婚は二の次という考え方なのだ、なのにフォルダンからの申し入れを受け入れている。
その顔を見ると口角が少し吊り上がり、何かをたくらんでいそうな気がしてならない。
「楽しそうですねお姉さま」
「そうよ私を取り返そうと必死にあがく殿方を見るとゾクゾクしますでしょ」
そう言われてもマーシャ達は首を横に振る。
それはあなただけですよと言いたい。
そして試合の行方は…
『試合終了!この試合時間切れのため引き分けとなります』
中等科の試合と同じように解説付きの試合だが、試合の制限時間が30分と言う事もあり最後の魔法を放った所で勝敗は時間切れのため引き分けになってしまった。
試合を終えてトラム第二王子とフォルダンは握手をしてからこちらへと歩いてくる。
「やあマーシャも来ていたのかい?」
「はいお兄様」
「マーシャが来てるなら勝っておいた方が良かったかな」
「おいおい、分かってるんだぞあれでポイント切れだってな」フォルダン
「あらお兄様には奥の手もありましてよ」アマンダ
「マジかよそれじゃ次は俺も用意しておくか」
どうやら賭け事というより賭けて楽しんでいると言う様相だ。
「お兄様何か賭けていると言うお話ですが?」
「ああ負けたら又アマンダとの婚約を認めてもらうよう父王に掛け合う約束だ」
「ああ~そういう事ですか」リリアナ
「フォルダン様が負けた場合は?」
「マーシャそれを聞くのかい?」
「もしかしてメイド権?」
「マーシャが流行らせたんだろう」
そうマーシャが最初にメイド権(下僕)を掛けて初等科で試合を行いその形式を中等科まで持っていったため高等科でもその形式が流行ってしまった。
しかも負けても次に勝てば逆転すると言う形式まで同じだと言う。
それまではお金や物を掛けることが多かったが、お金欲しさに無理な賭けまでする試合が横行した為、練習試合に賭けをすること自体が禁止になっていた時もあった。
だが何もかけずに試合をしても緊張感に欠けると言う事で、マーシャが入学する前までは食事などを掛けるのが通例だったのだ。
「そういえば引き分けのルールは少し違いますね」リリアナ
「引き分けの場合は1週間以内にもう一度試合することになる、ちなみに今までの勝敗は189戦45勝44負け100分けだ」
「違うぞ俺の45勝だ」フォルダン
「もしかして次は剣術での試合ですか?」リリアナ
「その通り、どちらでも優れていることを証明しないとね」トラム
「ちなみに剣術でも勝敗は同じ数だ」フォルダン
どうやら侯爵家の事はそれほど重荷になっていないようだ、そのぐらい良い友人なのだろう。
アマンダも2名を見て嬉しそうにしている、仲の良いのは良いことだ。
『本日の第4試合を始めます』
「私の番です、ではこれで私は失礼します」リリアナ
「がんばれよ」トラム
「応援してますわよ」アマンダ
「しっかりな!」フォルダン
そして兄であるトラム王子だけが残り、アマンダとフォルダンは闘技場を後にする。
「お兄様は付いて行かないのですか?」
「あの二人の邪魔をしても仕方ないだろう」
「確かに…」
「それより聞いたぞ、来週ダンジョン攻略に行くんだって?」
耳ざとい、確かにその予定ではあるがそれは父王にしかまだ話をしていないはず。
どうやら城詰めのメイドから情報を得ているらしい。
「それを聞いてどうなさるのです?」マーシャ
「俺も参加できないか?」
「は~?」
その後のリリアナの試合は完勝、得意の土魔法が炸裂し相手は気を失う事で終了、なんと試合時間3分という速さ。
そしてフランの試合も危なげない戦い方で勝利した、フランの魔法は聖魔法での攻撃。
マーシャの聖魔法や光魔法にあこがれ練習した結果、今ではなかなかの使い手になっている。
マーシャ謹製各種魔道具は装着可なのでその恩恵もあっての事だ。




