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魔王も策士

魔王も策士


魔王が宰相や王妃それに魔公爵の悪巧みを見て見ぬ振りをしていたのは、上手く行けば人族が彼らを粛清してくれると思っていたからに他ならない。

そうすれば自分の地位を脅かす魔族は減り、同時に人族も痛手を被るわけだ。

自分が出陣するのはその後でもかまわない、果報は寝て待てと言う事。

王妃も加担はしているが、王妃が前線に出ることなどほぼありえないので、結果として魔将軍や魔王の座を狙う公爵が2人戦死して終るだろう、魔王にとってはそれが一番好ましい、競争相手が減るのだから。

そのために第二皇子と第一皇女が犠牲になったのは残念だが、魔族の跡目争いは昔から熾烈で最終的には全員犠牲になった事さえある。

その中で強いもの、運の良いものが最後に残る、それを何千年と奨励してきたのだから。


無事だった魔王国の第一皇子と第二皇女はこの後魔王国に帰り、一から勉強をしなおす事になるだろう、特に武術はアルフレア王国と比べると、比べ物にならないぐらい遅れている。

そして一番の問題となった二人の魔族、宰相と王妃はと言うとそれぞれ別々の場所へ幽閉されることになった。

幽閉といっても普通に地元の屋敷へ帰り政治とは離れ余生を過ごすと言うこと。

そう胸の烙印はつけたまま、魔王は2人の子どもを失ったが現王妃に責任をとらせようとはしなかった、それは何故か。

魔王は愛していたからだ、いくら前王妃の子や兄弟それに従兄弟達を失いはしても、愛する王妃を失う事はできなかった。

魔王が王妃の贖罪をここまでとしたため、同様に宰相の罪もこれ以上科すことができなくなった、まあ宰相は自分の年のこともあるが今回の事で魔王を自分の親族から出す事を諦めたわけではなく、そう正攻法で魔王になる親族を育てようと方向を変える事にした。

その原因の一つがマーシャだった、マーシャほどの能力を持つまで育てなければ血族の子を魔王になどと言うこと自体笑い種でしかない、それは王妃も同じ事だった。


今回の出来事で一段落はしたが魔王の座を狙い魔王国は少し内政が揺らぐ事になるだろう。

将軍の一人は降格となったが公爵家は取り潰されるところまでは行かなかった、公爵家であるコーバス家を取り潰すとなれば他の魔族を制御する事が難しくなり内乱になる事も視野に入れなければならない。

そうなれば魔王も唯ではすまなくなる、それよりも罪を認めさせ、罰を与えて力を少し弱めるぐらいがちょうど良いとの判断だった。

現にダンジョンの一つはコーバス家の管轄だったのだから、そこを保障として当てる事で話が付いたからだ。

全ては、現王妃に始めから魔王国の魔王になる資質や条件を話していればこうはならなかったのかもしれない。

それに魔族側がもっと己の力を磨き勉強をしていればすぐにわかったはず、ちゃんと色んな事を知っていれば、努力や経験をつみ戦わずに魔王となる方法もあるのだから。

魔王は世襲制ではない強いものがなるのだ、だから魔王国の魔法学院にあるチャペルにはいまだに聖剣伝説があるのだから。


【悠久の時を刻み過去が現在いまになりうるときの地より神の使いが舞い降りる、強者よ剣を取れその身を預けたる契約の王となり覇道を歩め、さすれば大地には大いなる平穏が訪れるであろう】


この言葉が4千年前、人族の聖女と名乗る人物から残された、彼女がこの大地に平和をもたらし、次の世代に残したのがこの魔剣(聖剣)だった。

何故魔王国に聖剣伝説があるのかは不明だが、聖女は初め国を治めるために魔王の椅子を作ったという言い伝えもある。

ともすれば嫌われ者の魔族を束ねる事が当時の政治には必要だったのかもしれない。

その後、魔王国の国民はこの剣を抜いたものが魔王になるといまだに信じているし、実際この剣に認められれば即魔王に就任できるという噂があるぐらい、聖剣に認められる事になりさえすればその時点で能力はずば抜けているはずなのだから。


無盟の剣、持ち主によって姿を変えるこの剣、台座から抜くにはMPが1万・ATも1万以上が必要。

この話を聞きマーシャが魔王国の魔法学園を訪れるのは少し先になるが、それはまた今度お話しするとしよう。


ひとまず魔族との戦闘はこれで終了、次章は別の理由で転生したもう一人のお話をしようと思う。



第一章完


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