月光世界(影) 1
「……………」
月光世界ア・ヌール。
太陽が無く、六時間毎に月が現れる。
月は四つ存在し、一巡することで二十四時間、丸一日になる。
ここは、そんな世界。
アタシが、ベルゼブブからの命で世界の初期化を任されていたけど、わざわざ今あるものを消さなくても良いのになぁ〜…って思ってたら、どこからか現れた自称神のアルハさんと、そのアルハさんの力を借りたこの世界の管理神ルイさんによって呆気なく敗北……。
どうして一度はあんな簡単に勝てたんだろうと思ったりもしたけど、まあ、過去の事だし、今はその二人とも仲良くやらせてもらってるから良いんですけど……。
って、いうか………。
「………」
なんか、声に誘われて空間の歪みから、この変な月光世界に来ちゃいましたけど……。
ここ、絶対に本当の月光世界じゃないですよね!?
月が地上に向けて放っているのは優しい光ではなく影。 それで、その月の影に当たってる人の影?は光ってるし…?
「っ………」
「うふふふふっ」
目の前では凄く可愛い女の子が笑顔でこっちを見ていますし。
と、とりあえず……この人に聞いてみたほうが良いですよね? なんか、RPGにおける序盤に説明をしてくれるキャラっぽいし……。
「あ、あのー……」
「なぁに?」
「え、えっとぉ…この世界って……なんなんでしょうか?」
「…………なんなんでしょうか? と、言われてもなぁ…」
しまったァァァ!!
ちょっとアタシ!!!なんなんでしょうか?って、なんですか!?
こういう時は順を追って、アタシは別の世界から迷い込んだ者なんですけど、ここは月光世界ですか?って聞かないとなのにィィィ!(泣)
「えええええええっとぉ…!そょのぉ……」
「ここは、影の世界だよ」
影の世界。
目の前にいる彼女は慌てふためくアタシをよそに答えた。
「影の世界って……」
「この世界は、月光世界の神様が、悪者を閉じ込めるためにつくった裏側の世界なんだって」
「悪者を閉じ込める裏側の世界…」
「うん! だから、光と影が反転しているらしいよ。
そうしないと表側の世界との均衡が崩れちゃうんだって」
要はもう一つの月光世界という認識ですかね…。
「なるほど、この世界の仕組みはざっくりですけど理解しました。
でも、悪者を閉じ込める世界…という事は、失礼かもしれないですけど、アナタも悪者さんなんですか?」
「っ……」
……え、ちょっと待って下さい。
何でここで口籠るんです? なんか、軽い気持ちで訊いただけなのに、どうしてちょっと不穏な空気になっちゃってるんです!?
「あ…あ、いや!あのー……言えないこともありますよね!あはは……」
「……もしかして、私が喋らなくなったから疑っちゃった?」
「ッ!!」バレてる……。
「い、いえ!そんなことは……」
「いいよ、疑っても。 この世界にいて疑われない方がおかしいもんっ!」
こちらの考えを分かっていながらも、こう答えるってことは……。
この人、悪い人じゃない…のかな?
「そんなことよりもさ……」
「は、はいっ!」
「アレ、どうする?」
「? あれ…とは?」
レヴィさんが周囲に視線を向ける。
「……ッ! これって……」
石造りの建物の死角から聞こえてくる獣の唸り声と赤く光る目。 犬や猫といった見た目だけど、どれも体長二メートル超えだし、瞳の色からして魔獣なんだと思う。
アタシ達は、いつの間にか魔獣に囲まれていた。
あ、詰んだ。 詰みましたね、これ。
魔剣使徒編、これにて完! お疲れ様でしたー。
「あんまり大きい声を出したり、必要以上に警戒すると、自分達に気付いたと察して襲ってきちゃうよ?」
「っ! むぐっ!」
唇に人差し指を重ね、静かにするように促され、口を手で覆う。
「き、気づいていないんですかね?」
「囲まれてはいるけど、体が大きい分、五感が鈍いからまだ気づかれてはいないと思うよ。 自然体でいればすぐには襲われない。
逃げる事もできないけどねっ☆」
「じゃ、じゃあどうすれば……」
「ふふ……」
手招きをされ、レヴィさんの元へとそーっと寄っていく、、、
「しゃがんで私の事をしっかり掴んでてね?」
「あ、あの……それは、どういう…?」
「っ………」
レヴィさんは息を吸い込むと、、、
「きゃああああああああ!!!!! まものにかこまれちゃったぁぁぁぁあ!!!!」
「っ!?」
大声で悲鳴を上げた。




