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罪に願いを 新世界の先駆者  作者: 綾司木あや寧
三章 森奏世界編
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忘れ物と贈り物 1

「赤陽世界とうちゃ〜く!

 フッ……流石、俺! 持ってるな……」


 キマってもいないキメ顔で木に寄りかかりながらカッコつける銀髪碧眼の青年、アルハ・アドザム。


「その持っているというのが世界転移云々なら、赤陽世界に戻ってこれたのは、未代さんの境界路を使ったからですからね?」


 呆れながらも地の文以上に前回からの事の顛末を説明する藍色を帯びた黒髪サイドテールの少女、マノ・ランブルグ。


「ああ……。 未代との出会いも、持っている俺だったから出来たことだ…!」

「ア、ソウデスカ、スゴイスゴイ、よちよちいいこでちゅね〜」

「ッ…! 赤ちゃん言葉…だと!?」


 格好つけるアルハは赤ちゃん言葉で茶化された事で衝撃が走る。


「ブヒィィィィィィィィィ!!!!!マンマァ……」

「ちょっ……事ある毎に胸触ろうとするのやめてください!」


 結果、アルハは自らを赤ちゃんとして認識し、またもやセクハラを行う。

 後日、彼はその件を話した後に、"素晴らしい提案をしよう。 お前も赤ちゃんにならないか?"と旧友の神を誘っていた。


「それで、本当にギイムにあるんですか? アルハさんのお財布」

「あるッ! 上着脱いだのはこの世界だけだし、その世界での忘れ物や落とし物はステラが預かって、返す時は持ち主のとこに転移させてるんだよ」

「転移魔法、羨ましいなぁ……。 アタシ、パンデモニウムでベルゼブブから転移魔法を教わってたんですけど、全部自分の頭の上に転移しちゃうんですよねぇ…」

「あ、どおりで!」

「はい?」

「いや、ホラ。 マノたん、頭悪いじゃん?

 頭に物ぶつけまくったからだったんだな〜うんうん!」

「悪くないですよっ!! むしろ頭は良い方です!」

「イヤ〜頭良いとか自分で言ってる人って頭良いだけのクズか頭どうでもいい人かの二択だからな〜」

「じゃあ、アタシは頭良くて人当たり最高な三番目の選択肢に該当しますね!」

「そんなドヤ顔で新しい答え出されても……。

 やっぱ…バカなんだなぁ(笑)」

「バカじゃないです!!!」


 バカか否かの争いは、アマテラスのいる天照城が見えてくるまでしばらく続き、、、


(仲良いな…この二人…)

(仲良いな、この二人)


 由利と志遠は、そんな二人の口論を少し後ろで静観していた。




「ここが、アマテラスハウスね!」

「あたかも初めて来ました的な発言ですけどアルハさん知ってますよね。 あと、そのキャラはなんです?」

「アラ、ワテクシが誰か…ですって?

 ワテクシは…」

「アドザム、ふざけてないで早くアマテラスとかいう神を呼んでくれないか? 流石に疲れた……」

「アドザム! なんかその呼ばれ方は新鮮だなぁ!」

「じゃあ、アタシもこれからそう呼びますね」

「えっ!? 長い付き合いになってから苗字呼びは悲しい…傷付く……」

「知り合ってから一ヶ月も経ってないですけど」

「一週間以上は経ってるからもう親友だよぉ!

 それにさ、なんかさ、小学校では名前で呼んでたのに、中学校入ってから気恥ずかしいからって苗字で呼ばれるぐらい悲しいからやめてよぉ…」

「マノ、俺が呼びやすいからそう呼んでるだけだから、君まで無理して呼び方を変える必要は無いんじゃないか?」

「未代さん……。

 そうですね……確かにそうかもしれないです」

「うーわっ! 出たよメス顔!

 何だよなんだよナンナンダヨ!? 同じ顔でもそんなに口数少ない金髪が好きなのかよっ!」

「はい。 未代さんとアルハさんでは、天と地ほどの差があります」

「辛辣ゥ! しおんきゅ〜ん!(泣)」

「っ……」


 嫌そうな顔をする志遠に顔や体をぴったりとくっつけ、スリスリと全身を擦りつけるアルハ。


「ホントなにやってるんです…」

「フフン! 自分の所有物として匂いを付けているのさ…!」

「お前は猫か……。 そんな事してないで早くアマテラスとかいう神を呼べ」

「応よ! アルハしゃんが来たぞぉぉぉぉ!!」


(これで来るのか……?)


 はぁ…と、ため息を吐こうとした時。


「はぁ〜い」


 建物の中……というより、建物から発せられているように女性の声が周囲に行き渡る。


 それから一分と経たずに入口の大扉が開く。


「さ、行こうぜぇ……。 ぐへへ…お宝盗み放題だァ…!」

「小物感全開ですね」

「社会の窓も全開だぜ!」

「それはしっかり閉じてください」


 マノに指摘され、鼻歌混じりに歩く道中でチャックを閉める。


「いつもこんな調子なのか?」

「はい……。 この人と一緒に旅をしたくない理由の半分はこれです……」

「半分? …あ、そうか。 もう半分はセクハラか」

「はい……」


 アルハに聞こえないよう耳打ちで会話をしている二人とは別に、先頭を進むアルハの元へと急ぎ足で近付く由利。


「……っ」


 由利はアルハの胴から下をまじまじと見て少し落ち込んだ。


「? 由利、どした?」

「えっ! あ、ううん!なんでも……ない…よ……です……」(ど、どうしよう……意味もなく来たと思われて、変な奴だって思われちゃう……)

「ふーん……そっか。 手、繋ぐか?」

「あ……えっと……で、でも……」(私みたいな汚れた人間がアルハさんと手なんか握っちゃ……)

「……。

 汚いなんて思わないから繋ごうぜ!」

「っ! じゃ…じゃあ……」


 アルハに諭され、嬉しさと恥ずかしさと申し訳無さが入り混じりながらも手を繋ぐ、、、はずだったのだが。


「あのー……由利さん…?」

「ひゃっ、ひゃい!?」

「どうして俺たちは手を繋ぐのではなく、合わせているんでしょうか?」

「えっと…それは……あの……。

 わ、私なんかが、アルハさんみたいな聖人君子レベルの良い人と手を繋ぐなんて失礼かなと思っちゃいまして……その………。

 ……ごめんなさい」


 催眠がかけられているとしか思えない程にアルハを称賛する言葉を送る由利。

 いまだかつて、アルハ・アドザムを聖人君子と呼ぶものがいただろうか?


(やかましいわ、地の文)

「由利、手を繋ぎたいのは俺の我儘なんだ。

 だから、ちゃんと繋ぎたいなぁ…って思うんだけど……」

「………。

 ほ、ほんとうに…良いんですか…?」

「うん。 てか、繋いでくれないと嫌われてるようで泣いちゃう…ぴえん…!」

「きききき嫌ってなんかないです…!

 っ…!」


 目を閉じながら、重ねていた手を開き、自分よりも一回り大きい手に絡める。


「え……えっと…その……。

 これで……良いですか…?」

「おう!サンキュ!スッゲー嬉しい!」

「っ…………」(顔が熱い……絶対赤くなってるよね………。

 落ち着けぇ……別の事、考えて落ち着けぇ……)


 真っ赤になった顔を隠すようにうつむいた由利は、冷静さを取り戻すために昔の事を思い出す。



「っ………うん。だいじょうぶ……」

「? なんか言った?」

「あ……いえ……もう、いいですよ…」


 ぽつりと呟く由利の表情は、先程まで打って変わって、とても冷ややかに見えた。


「……そっか。

 不安に思ってる事とかあるなら、このアルハさんにドーン!とぶちまけていいからな」

「……はい」


 そして、天照城内を奥へ上へと進み、、、


「そんなこんなで客間だZE!」

「……誰に言ってるんです?」

「テレビの前のみんなだZE!」

「本当に何を言ってるんです?」

「というわけで、ステラ!財布ある?」

「無視した……」

「うふふ……はい、これですよね?」


 アルハたちのやり取りに笑みを浮かべつつ、狸が描かれたガマ口の財布手にとって見せるステラ。


「うおおぅぉ! それそれぇ!」

「はい、どーぞ。 次からは無くさないようにしてくださいね?」

「あ゛り゛が゛と゛ぉ゛!!!!!

「ふふ…どういたしまして。 ところで……」


 ステラが両脇にいる由利と志遠に目線を向ける。


「これはこれは……また、変わった方々を連れてきましたね……」

「ステラさん、見ただけで分かっちゃうんですか?」

「うふふ……はい♪ これでも私、最古参の神の娘ですからね〜」

「つーわけで紹介するゾ。

 この俺に似た顔の金髪が未代志遠。 境界の守護者って言われてた奴な。

 で、こっちの黒髪天パの女の子が黒井由利だ」

「く、黒井…由利……です……よろしくおねがいします………」

「ふふ…。 はぁ〜い、よろしくおねがいします」


 緊張しながらも小さな声でぺこりとお辞儀をする由利。


「…………」(彼女が、アマテラス……か…)


 敵対心が抱いているわけではないにしても、志遠は思うところがあるのか、険しい表情でステラを見ていた。


「?? どうかしましたか〜?」

「っ! いや、何でもない」

「そうですか? なら、いいんですけど……。 あ!

 そんなことよりもマノちゃん、実はオーちゃんから預かっている物があるんですけど……」

「預かっている物…?」

「はいっ、マノちゃんの立場上、とても役立つ物だと思うんで今すぐ! お渡ししたいな〜って思うんですけど……。

 時間、平気ですか?」

「はい、もちろんです!」

「じゃあ、持ってくるので、それまでの間くつろいでてくださいね〜」


 ステラが言う預かり物を待つ間に、四人はそれが何なのかを考察していた。


「マノに渡すもの……って言ったらみたらし団子か?」

「人を食べる事しか頭のないマスコットキャラ枠にするのやめてもらえます?」

「事実、みたらし団子食ってるとこしか見たことないからな〜」

「髪留め…や、ヘアゴム……じゃないかな?

 マ…マノさん……は…髪……長いし……」

「あー! なるほど!」

「無い無い無い!! だってあのオーディンだぞ?血の気はあっても色気なんて欠片も無いだろ!」

「……いくら知り合いだからって失礼すぎません?」

「本人が聞いたら、迷わずグングニルを飛ばしてくるだろうな。 くわばらくわばら」

「だったら、短剣や軽装の鎧とかじゃないか? マノは重い武器や鎧だと負担にしかならないだろうし、戦の神とも言われるオーディンなら、そういった部分も踏まえて……」

「多分、短剣や軽装の鎧とかじゃないか? マノは重い武器や鎧だと負担にしかならないだろうし、戦の神とも言われるオーディンなら、そういった部分も踏まえているに違いない(今世紀最高のイケボ)(竹野○豊)(福ym潤)(ジャン○ケ斉藤)(とりあえず何か書いとけ)」

「なんでわざわざ未代さんの台詞をカッコつけて後から言ったんです?」

「カッコいいだろ?」

「いえ、別に」

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